星と天界の音楽と(星のソムリエのブログ)

 ようこそ、ホルストの『惑星』のページへ。このページは、私が所有しているディスク(中には図書館で借りたディスクも含む)を紹介するページです。あまり役に立つとは思いませんが、適当にお付き合いください。

メールhome(一番星のなる木)

グスタフ・ホルスト指揮/ロンドン交響楽団(1923/24)
THE PLANETS; I. Mars (October 30, 1923)
THE PLANETS; II. Venus (August 23, 1923)
THE PLANETS; III. Mercury (August 23, 1923)
THE PLANETS; IV. Jupiter(September 15, 1922)
THE PLANETS; V. Saturn(February 14, 1924)
THE PLANETS; VI. Uranus (August 24, 1923)
THE PLANETS; VII. Neptune(June 11, 1923)
  作曲者本人の演奏。録音が古いがノイズの奥から聞こえてくる音は、宇宙空間を旅してきた星の光を感じさせるような感動さえ呼び起こします。最近の演奏からは得ることのできない軽さがまた時代を感じさせはするのですが、歴史的という意味で一聴の価値あり。最後の海王星で聞かれる女性コーラスは、当時の録音技術のためにフェードアウトせずに終わります。アルトのパートがよく聞こえるので異質なコーラス。

 現代の演奏では考えられないほどテンポもリズムも早く、それもそのはず、まだこの時代はハイフェッツが流行らせたというヴィブラートによる奏法も定着していなかったから、金星で聴かれる甘美なソロもありません。このあたりの時代背景を知っているのと知らないのとでは、印象が全く違って聞こえてきます(場合によっては「なんだこの演奏は!?」みたいな)。私なんかは、「(R.シュトラウスをはじめとする)作曲家というのは、なんて淡白な演奏をするのだ」と思っていたぐらいです。

 それにしても、このアコースティックレコーディングの素晴らしさはどうでしょう。今の私にとっては宝物のようなこの音源は、1923年から1926年にかけて録音されました。星の光も電波も同じものなので、宇宙空間を同じ速度で伝達します。カール・セーガンの『コンタクト』では、地球から発信されていた「ベルリン・オリンピック」という、あまりにも素材がセーガンらしい映像を、ヴェガにいる知的生命体が「見たよ」という意味で地球に送り返してきます。それはまさに映画の舞台となっている52年前の出来事。つまりヴェガまでの片道が26光年だということです。
 届いた映像も音声もノイズが乗っていますが、これを私はホルストの演奏する音源に置き換えて楽しんでいるのです。あるいは、この音源が遠い惑星に住む知的生命体がキャッチしたら、こんな音に聞こえるんじゃないの?と考えると、まさに星空のかなたから聞こえてくる「天球の音楽」であり、「天界の音楽」になるのではないでしょうか。




グスタフ・ホルスト指揮/ロンドン交響楽団(1926)
THE PLANETS; I. Mars(June 22,1926)
THE PLANETS; II. Venus(July 2,1926)
THE PLANETS; III. Mercury, the Winged Messenger(September 14,1926)
THE PLANETS; IV. Jupiter(October 22,1926)
THE PLANETS; V. Saturn(June 22,1926)
THE PLANETS; VI. Uranus(July 2,1926)
THE PLANETS; VII. Neptune(October 22,1926)
  最初のレコーディングから約3年後の二度目の録音。今回は多少のノイズが軽減されていて、チープなAMラジオのノイズの中に埋もれているような感じの音源ではありません。聴きやすくなったかと問われれば、決してそういう音ではなく、あくまでもこれは貴重な記録としての音源でしょう。時代ものの音源だけに、これは万人向けではないのは仕方ないし、オーディオファイルとしての存在は不動のものだから、そうした趣味をお持ちの方にはお勧めできるシロモノではありません。人によっては眉間にシワを寄せる人もいるでしょう。しかし、いくらピリオド奏法を研究し尽くした現代の演奏ですら、昔の演奏を超えることはできません。これは技術とか研究成果とか、そうした問題ではないのです。もしも、当時の演奏を超えることができるとしたら、それは「音質」とかの問題ではないでしょうか。

  ホルストの惑星が作曲された1913年前後、まだクラシック(この頃は後期ロマン派)が活動していましたが、シェーンベルグをはじめとする、現代音楽作曲家が登場し、特にホルストはシェーンベルグの「5つの管弦楽曲」やストラヴィンスキーの「春の祭典」の影響もあって、当時、新作発表としてこの曲を聴いた観客の反応はどうだったのでしょう。それまでとは違く楽器の使い方や、組み合わせetc. 土星の後半部分にやってくるクレッシェンド! 天王星の盛り上げ方(ホルストはこの曲のオーケストレーションを気に入っていました)、そして海王星のエンディングにどこからともなく聞こえてくる女声コーラスに戸惑ったかもしれません。今でこそ宇宙の構造を、地球の外にまで進出する時代ですから、あまり驚くこともなくなりましたが、当時はまだビッグバン理論や、宇宙の膨張も発見されていない時代です(その数年前のハレーすい星騒動やツングースの大爆発なども、宇宙や星空に脅威を感じる時代だったのではないでしょうか)。しかし、数学という新しい武器を使った、望遠鏡のみの眼視にとって代わり、惑星の動きも理解されるようになっていました。つまり、フェルネーゼの天井に描かれている「天球」の世界は、急速にすたれていったのです。そして当時の人々の神秘感を見事に描いてくれたのはホルストであり、これとは逆に物理の法則による宇宙の「音」を描いたのが、指揮者マーラーの「交響曲第8番」だったのです。
  さて、この(お世辞にも上手いとは言えない)演奏ですが、レコーディング技術の向上からか、オーケストラにかなり厚みが加わり、特に金管の音が前に出てくるように聴こえて、現代の演奏に近づいてきています。また、ホルスト自身の指揮も、前回と比べると慣れて来たのか、テンポよくまとめられた「カッコイイ」演奏に仕上がっています。

 

アルバート・コーツ指揮/ロンドン交響楽団(1926)
THE PLANETS; I. Mars(September 30,1926)
THE PLANETS; III. Mercury, the Winged Messenger(September 30,1926)
THE PLANETS; IV. Jupiter(September 30,1926)
THE PLANETS; VI. Uranus(September 30,1926)
 全曲公式初演(1920/11/15)者のアルバート・コーツ(1882-1953)のレコード。ただし、このレコーディングは全曲ではありません。ホルストの遺言をまっとうするなら、演奏会情報でも書いている通り、「全曲もの」を紹介しているので、このアルバムはどうか… とも思ったのですが、やはり歴史的貴重な記録と言う意味で取り上げました。収録されたのは1926年9月30日。火星、水星、木星、天王星の4曲です。

 

レオポルド・ストコフスキー指揮/NBC交響楽団(1943)
THE PLANETS(February 14,1943)
 ストコフスキーの1回目の録音(ライヴ)。現在手に入れることのできる盤のあまりにジャケットの見事な写真!(オリオン座の馬頭星雲)もうちょっとレトロ感があっても良いのに… まぁ惑星、宇宙ものといったら星空の写真で問題ないとは思いますが…

 

エードリアン・ボールト指揮/BBC交響楽団(1945)
非公式初演(1918/09/29)者、エードリアン・ボールトによる最初の録音。ホルストの演奏に比べるとずっしりと重く感じるのは、技術の進歩のおかげでしょう。ノイズもあまり気にならず、それがあった方がかえって楽しいと思えるほどです。音質を求める向きには、もっと最近の録音をお勧めしますが、歴史的、あるいは過去の音を星空に求める私のような人間には、このノイズさえ音楽の一部になるのです。
ボールトの惑星へ


エードリアン・ボールト指揮/フィルハーモニック・プロムナード・オーケストラ(1954)
10年前のレコーディングの音と比較すると、この録音の驚異的な音圧やダイナミックレンジの広さには耳を疑ってしまいます。すでに65歳に達していて円熟を増しているとはいえ、レコーディング技術の向上は目を見張るものがあります。当時の音録音もさることながら、現在私たちが手軽に聞くことのできるCDへのコンバート技術もしかり、です。  なお、楽団名は現在、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団と改名しています。
ボールトの惑星へ

 


レオポルド・ストコフスキー指揮/ロスアンジェルス管弦楽団(1957)


 ストコフスキーの2回目の録音。オケはロスアンジェルス管弦楽団で。クラシック・レコードがレコーディング技術を向上させたことは知られていますが、この時代の録音がこんなにもどっしりとした音で残っているのは驚き以外の何物でもありません。




エードリアン・ボールト指揮/ウィーン国立歌劇場管弦楽団(1959)
ウィーン国立歌劇場管弦楽団というのはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の別名。敢えてこの名称を使ったのには何か理由あるのでしょう。そして2年後(つまり下のカラヤン盤)には、「伝統のある」一流オーケストラによる現代音楽がレコーディングされることになります。この聴き比べも面白いはず。2003年にリマスター処理されてリ・イシューされました。
ボールトの惑星へ



ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1961)
『惑星』ブームの火付け役といわれるレコード。ウィーンフィル名義としては唯一の記録ですが、ここでもカラヤン色が濃厚。今までのレコードを考えるとブームの火付け役となったという肩書きがつくのも納得。ジョン・カルショウの録音も宇宙ブームの一役買っているのでしょう。ウィンナ・ワルツでも知られるウィリー・ボスコフスキーがコンサートマスターとして、金星のソロをとっているというのはなかなか想像できません。  2008年にはポリカーネイトに代わりSHM-CD化されて再リリースされ、2012年には、その透過性が高く評価されているという素材から、シングルレイヤーによるSACD化となりました。   個人的にはカラヤン盤はあまり聞くことはありませんが、このフォーマット「これだけの情報が詰まっていたのか!」と、実感したのには、我ながら驚いてしまいました。つまりは、それだけ名演・名録音だからでしょう。


エードリアン・ボールト指揮/ニュー・フィルハーモニー管弦楽団(1966)
なんたって自分のお小遣いで初めて買ったレコードでもあるので、思い入れは一番ある演奏です。この後に録音しているLPO(1978年)よりもずっとずっと名演であると思っています(クラシック音楽って、そういうところあります)。
 特に第4曲目の木星の演奏(第4主題に入る前の間が何ともいえない)はこれに勝るものはないといったぐらい。良い演奏には多く語る必要なし。1999年にEMIよりリマスター盤がリリースされました。 2012年12月、晴れてエソテリック社よりSACD化されます!
ボールトの惑星へ


ウィリアム・スタインバーグ指揮/ボストン交響楽団(1970)



 冒頭の火星で刻まれるリズムが、これほどまでに突進的な演奏は聴いたことがないかもしれません。全体を通じて印象的なのは火星。オケの編成自体を小じんまりとさせているのか、各楽器ソロが際だって聞こえてきます(ソロ奏者には嬉しいかもしれませんね)
 カップリングで収録されているリゲティは、映画『2001年宇宙の旅』のワンシーンで、モノリスが月面上で発見され、宇宙飛行士が調査しに行くシーンで使われていた神秘的な曲。海王星のあとにこういった曲を収録しているのは、冥王星を意識してのことなんでしょうか。ホルストはV.ウィリアムスとフォークソングといったトラディショナルなメロディを追い求めた作曲家ですから、こういったタイプの曲を作曲しないと思いますが、映画のこともありなかなか楽しめる一枚。このカップリングは映画の影響を多分に受けていると思います。


 

ベルナルド・ハイティンク指揮/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(1970)


 英国のロンドンフィルを振ったハイティンクの「惑星」。当時、同オケの首席指揮者だったので、同郷のよしみでこの曲をレコーディングしたのでしょう。どの曲にも聞かせる「場」がありますが、ハイティンクは奇をてらうことなく、オーソドックスな演奏を心掛けているようです。が、1曲目の「火星」の管にバランスが悪いところがあって、「なんだこの音」という個所がありました。実はそういった音はコンサートで座る場所によってはそんな風に聞こえることもありますが、ちょうしっぱずれな感じがしなくもないです(かえって新鮮でしたが)。火星でオルガンがバリバリ鳴りまくっていいるのはこのレコードが一番聞こえるかな。

女声コーラス;ジョン・オールディーズ女声合唱団



レナード・バーンスタイン指揮/ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団(1971)

 速い曲は速くメリハリをつけて、遅い曲はねっとりと表情をつける… いつものレニー。特に金星のテンポは遅すぎるほどで、宵の明星・金星のイメージにはちょっと遠いかもしれません。チェレスタとハープの掛け合いは美しい。他の楽章でもソロパートはかなり全面に出てきているので、いつもと違った表情を聴くことができます。木星の第4主題もかなりアクセントが強く感情がこもって力んで、レニーならではの表現ではないでしょうか。天王星のオルガンは誰の演奏よりもスペクタキュラー。

そんなこんなでSACD化されたことは大歓迎の一枚です。
レビュー

 

ズビン・メータ指揮/ロスアンジェルス管弦楽団(1971)

 金管楽器、特にトランペットの音が独特の音を出していておもしろく聞こえてきます。この曲のすべてのディスクの中で、もっとも野性的な演奏だと思います。また、この年のレコード大賞に選出されました。

 2012年にはSHM-SACD化 され、荒々しい演奏が一層際立つ体験ができるのではないでしょうか?



アンドレ・プレヴィン指揮/ロンドン交響楽団(1973)

 1980年に日本でも放送されたカール・セーガンの科学番組『コスモス』に使われた火星、金星、土星、海王星は、このプレヴィンのレコーディングです。1986年に再レコーディングしていますが、私的にはダメ。

  こちらのロンドンの方がアコースティック感があっていい感じです。オーケストラはホルストが振った同じオケだし。2012年にはシングルレイヤーのSACDがリリースされました。

レビュー



ユージン・オーマンディ指揮/フィラデルフィア管弦楽団(1976)



 輝かしいフィラデルフィアサウンド。カラヤン、バーンスタインに次ぐオーケストレーションをバリバリ鳴らす演奏として話題になった演奏。火星などは、この演奏を聴いて初めて「戦争」という情景を意識してしまいました。小太鼓がまるで機関銃のように聞こえます。土星の冒頭で聞かれるコントラバスの超低音も、フィラデルフィアサウンドならではでしょうか?まるでオルガンの超低音に聞こえます。
 ただし、ホールの鳴りがアップアップと言った感じで、私は籠もったような(いわゆるウォール・オブ・サウンド)は苦手で、まるでフィル・スペクターがプロデュースをしているかのよう。

 それからスタジオセッションなのに、「水星」のチェレスタが素人っぽかったり、「土星」のフルートがとちった(3分41秒付近)まま。名コンビ名だけに、ちょっともったいないレコード。私はお勧めしません。




BEYOND THE SUN / Parik Gleeson(1976)

BEYOND THE SUN
An Electronic Portrait Of Holst's THE PLANETS
Patrik Gleeson, EUu Poliphonic Synthesizer

レビュー

冨田勲(1977)

 電子音楽による演奏。冨田勲のレコードは他にもドビュッシーやストラヴィンスキー、ムソルグスキーがあって、これが4枚目のレコード。それまではクラシックをシンセサイザーに置き換えた(正確には演奏)というだけのアレンジだったのが、ここでは“トミタの惑星”になっています。特に天王星と海王星が交互にオーバーラップするアレンジに興奮してしまいました。冒頭の管制塔とロケットのやりとりなど、多くの部分で“パピプペおじさん”が活躍。
1990年にNasaが協力しドン・バレットが監督した映像版が公開されましたが、元々ストーリー性のあった演奏だけにラストシーンは衝撃的。
 またDVD-Audioによる音の次元をリミックスし直したアルバムがリリースされ、一部の間で話題となりましたが、現在ではフォーマットが流行らず後続がほとんど断たれてしまいました。SA-CDでのリリースを期待しています。(レビュー


ネヴィル・マリナー指揮/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(1977)

 バロックや映画『アマデウス』の音楽を担当していた、というイメージから、惑星のリストを見ていて一番意外に思ったマリナーの惑星。聞いてみると、コレが意外と良かったりします。まず、イメージとして抱いていたバロック的な表情はほとんど無く、「モダン・オーケストラの管弦楽作品」を見事に雄大に演奏してくれています。バロックというと「こぢんまり」というイメージを持っているので、なおさらでした。

レビュー


エードリアン・ボールト指揮/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(1978)

 1967年の録音が私にとってのNo.1。およそ10年ぶりの彼の新録音とあっては期待大だったのですが、残念ながらそれを越える演奏をしてくれませんでした。ただ録音が新しい分スケールが大きくなり、特に木星の第4主題の歌わせ方は、物静かなこの指揮者の性格を考えると後半部の盛り上がり方が信じられないほど興奮させられます。こういうのを作曲者直伝、初演者の強みの貫禄の演奏というのでしょう。自信と誇りと。
 ロンドン・フィルとは2度目の録音。2002年にEMIよりGREAT RECORDING OF THE CENTURYとしてリマスター盤がリリースされ、2012年にはSACD化となったのは当然と結果と言えましょう。さらに同年の暮れにはシングルレイヤー としてリリースされました。

女声コーラス;ジェフリー・ミッチェル合唱団

ボールトの惑星へ


リチャード・ロドニー・ベネット&スーザン・ブラッドショウ(1978)

 このレコードがリリースされるまで、『惑星』に作曲者自身のピアノ編曲版があるとは誰が想像したでしょうか? カラフルなオーケストレーションに負けないぐらい表情豊かな演奏は、大げさすぎる残響にも負うところが大きいようです。意外にも木星の第4主題の始まり方が短音で静かに始まり、徐々に盛り上がってゆくあたりは、楽譜に記されているのでしょうが、これはオーケストラよりも効果が大きいと思います。金星や海王星といったアダージョ楽章の曲が雰囲気がとても良いです。これでコーラスが入ったらと思うのは贅沢でしょうか?(ピアノ編曲の部屋へ


ゲオルグ・ショルティ指揮/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(1978)


 シカゴ響と演奏してくれたらどんなにかスカッとするでしょう(のちのレヴァインのレコーディングがシカゴ響初レコーディング)。
テンポが速いのはいつものショルティらしく、マーラーやワーグナーで見せた音の洪水になっていないのが残念。初演者ボールトの影響か、英国紳士的な演奏。 さすがは“サー”の称号を冠された指揮者。暴れることなく落ち着いています。

レビュー


小沢征爾指揮/ボストン交響楽団(1979)

 弦楽器が非常に美しく響いてきます。これがあのスタインバーグが振った同じオーケストラなのかと疑ってしまうぐらいに。 木星の主題もいい。天王星での木琴の活躍が楽しい。それと誰のか知らぬが大きな咳払いが入ってます。ライヴ録音でないはずなのに… 海王星の女声合唱がかなり前面に出てきていて主役という雰囲気。そしてエンディングは彼方へ消えてゆく演出がうまい。どこの図書館にでも置いてある一枚(笑)。

 

サイモン・ラトル指揮/フィルハーモニア管弦楽団(1980)

 解説書によると、英国出身の指揮者のデビューに欠かせない曲なんだそうです。名曲だし、金管楽器は鳴りまくるし、多少のミスも音でカヴァーできる、ということなんでしょか?
 この指揮者に関してはそんな心配は無用でしょう。名刺代わりの挨拶には良いが、そんな生半可な指揮者ではありません。


ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1981)

 “天王星”で奏でられるオルガンの音がもっとも大音量で聴くことのできる演奏だったのに、1993年にOIBPによってリミックスされ、オルガンの音が小さくなってしまい残念でなりません。
 ただ見せ場見せ場での表現の仕方は他の誰にでもマネできそうにないし、もっともスタンダードな演奏といえるのかもしれません。音楽評論家にはウケのいい一枚。

 

ロリン・マゼール指揮/フランス国立管弦楽団(1981)

 ドイツ物でベルリン・フィルやウィーン・フィルを振るときのマゼールと違ってサッパリとした演奏に拍子抜けしてしまいました。もうちょっとアクのある演奏を期待していたのですが(火星とか天王星で)。
  この曲をフランスのオケという、意表をついて来た(でも彼自身がフランス人だ)から、ちょっと期待していたところでの、この演奏。ドビュッシーやラヴェルなど、お国ものだったら納得していたかもしれません(笑)。

 ちなみにジャケットは、当時海外からも注目されていた日本人天体画家の岩崎加都彰氏の作品が使われました。

星のソムリエのブログ(星語り)でも紹介しています。


BEYOND THE PLANETS / Rick Wakeman(1985)

 A Contemporary Interpretation of Gustav Holsts The Planets.
featuring the music of Jeff Wayne, Rick Wakeman, Kevin Peek,
Narration by Patrick Allen.

レビュー

 

ジョン・ウィリアムズ指揮/ボストン・ポップス・オーケストラ(1986)

 ジョン・ウィリアムズといえばジョージ・ルーカスやステーヴン・スピルバーグのハリウッド映画の大家といったイメージですが、自作を主兵のBPOをドライブさせて思いっきりハリウッド仕立てにしています。結構爽快な一枚。確かに「惑星」はドラマチックだからこういう演奏も歓迎!

女声コーラス;タングルウッド祝祭合唱団


アンドレ・プレヴィン指揮/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団(1986)

 プレヴィンにとっては1973年のロンドン交響楽団以来二度目の録音で、今回も英国のオーケストラ。私は当時最新録音だったこのディスクを友達の誕生日にプレゼントした思い出のCD。もしかしらた、初めて買ったCDだったかもしれません(笑)。しかし、なんかすっきりしない感じは録音(テラークは残響が多い?)のためでしょうか。霧に包まれた感じの凹凸のない印象が強いです。

レビュー


シャルル・デュトワ指揮/モントリオール交響楽団(1986)

 弦の何という透明感! これが同じオーケストラの曲なんだろうか?金星の瑞々しい音といったら!

 当時日本のレコード会社が一番プッシュしていた(であろう)コンビによる演奏で、初回特典にジャケットと同じ写真がホログラムとしてついてきました。


アンドルー・デイビス指揮/トロント交響楽団(1986)

終曲“海王星”のコーラスに初めて児童合唱団を取り入れた演奏。

女声コーラス;トロント児童合唱団


リチャード・ヒッコス/ロンドン交響楽団(1987)


女声コーラス;ロンドン交響楽合唱団


リチャード・マーカム&デビット・ネトル(1984)

まだCDがそこそこの時代にレコードでレコーディングされていますが、およそ日本で紹介されることのない時代でした(笑)。ホルスト自身による2台のピアノ版です。
 現在はファミリーネームを入れ替えて「Nettle & Markham」の名義で活動しています。
ピアノ編曲の部屋へ

 

コリン・デイヴィス/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1988)

 カラヤンが在命中に、この楽団を別の指揮者が演奏するというのは、それだけでワクワクしてしまいます。一体どんな音が出るのかといった期待です。そしてカラヤンも「彼ら(ベルリン)はどんな音を出してんだろう?」と気にしていたのではないでしょうか?そしておそらくはカラヤンでさえ聞いたことのない音を耳にしていたと思います。海王星がとても印象に残りました。



エードリアン・リーパー指揮/チェコスロバキア放送交響楽団(1988)

 カップリングは同じくホルストの「バレエ組曲 Op.10」。もしかしたら初めて聴く曲かも知れません。

 

ジェームズ・レヴァイン指揮/シカゴ交響楽団(1989)

 なんと言っても私の最初のお勧め作品は、ホルストの「惑星」です。シカゴ交響楽団によるこの曲は、当時の音楽監督だったショルティさえレコーディングしておらず、グラモフォンがレヴァインにシカゴとの録音を委ねたのは、アメリカ人指揮者だったからなのかもしれません。

 それにしても金管の咆哮と言ったら、同郷のバーンスタインを遥かにしのぐもので、バリバリと金管を鳴らし、これでもかと音の洪水、トランペットが大活躍。ここまで馴らしてくれたら「快感」でしょう。とにかく容赦なくたたみかける演奏には脱帽。日曜の昼間にヴォリュームをいっぱいにして音に溺れましょう(笑)。オーディオファイル向きの一枚。私のはアートン仕様。





ズビン・メータ指揮/ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団(1989)

 1971年にロスフィルとレコーディングしたときと比べると野性味が交代し、落ちついた円熟味が味わえる演奏。大味にならないところは巨匠に達した証なのでしょうか? しかし、かつての演奏を耳にしていると、せっかくのニューヨーク・フィルを前にしてなんだか物足りない。と。


アンドルー・デイビス指揮/BBC交響楽団(1993)

 BBC交響楽団は、ホルストの国、英国のオーケストラですが、団員も同郷だからでしょうか、一曲目の火星から「血が湧き上がる」ような熱い演奏を繰り広げています。トロンボーンとトランペットの掛け合いも、トロンボーンが吹きずらそうに足早です。このアンドルーの二度目の「惑星」を聴いていると、木星を中心とした組曲の姿が浮かび上がってきます。解説書には珍しくオルガンパートもクレジットされていますが、それは指揮者であるアンドルー自身がオルガンを務めているからのようです。ただし、指揮をしながらオルガンは無理なことなので、ケンブリッジ大学所蔵のオルガンを別録しオーバーダビングしています。



ジョン・エリオット・ガーディナー指揮/フィルハーモニー管弦楽団(1994)

 この曲の初演を企画提供したホルストの友人、ヘンリー・バルフォア・ガーディナーの孫にあたるジョン・エリオットの演奏。満を持しての録音だったのでしょう。オーソドックスな正攻法でぐいぐい引っ張る。録音技術のせいなんだろう低音がすばらしく体に響いてきます。これがあのフィルハーモニー管弦楽団? 初期のSACDでもリリースされていて、図書館で借りて聴くことができました。

 それにしても、古楽オーケストラ演奏で知られるガーディナーが「突然の変心か?」とも思いましたが、ライブではモダンオーケストラとの共演も多く、ベルリオーズなどもベルリンフィルで客演したり。ただし、レコーディングは少ないようです。


ロイ・グッドマン指揮/ニュー・クイーンズホール管弦楽団(1996)

 最近クラシック界ではやっているオリジナル(またはそのコピー)楽器によるレコーディングです。この組曲は20世紀の現代音楽に分類されるのに、ピリオド楽器というのもピンときませんが、テンポやソロの音にじっくり耳を傾けてくると、モダン・オーケストラにはない響きを楽しむことができます。

レビュー


松井直美/諸井誠編曲(1996)
 とうとうこういうアレンジものの出現、という気もしましたが、作曲家諸井誠氏の手による編曲もの(日本人の編曲は意外でしたが)。オルガン以外にパーカッションとチェレスタが効果的に使われています。音色に変化がないので、ちょっと飽きてきてしまうかもしれません。だったらまだピアノのほうが・・
レビュー




レナード・スラットキン/フィルハーモニー管弦楽団(1997)
 第7曲目の「海王星」に参加する女性コーラスのヴォカリーズに、少年合唱団を起用した演奏。深遠なる宇宙の彼方に消え入るような効果を発揮するには女性合唱団。またこの演奏のように少年合唱団を起用すれば天国的な…といった感じになるのかと思っていたのに、何も知らなければこれが少年の声とは思えません。 コーラスに児童を起用するのは1986年のアンドリュー・デイヴィスの演奏に次ぐもの。手兵セントルイス交響楽団ではなくフィルハーモニー管弦楽団というのも、同郷でしか表現できない「何か」を期待したのでしょうか? できれば主兵であるセントルイス響で録音して欲しかったなぁ。



 

レン・ヴォースター&ロバート・チェンバーレイン(1997)
 ピアノ版の演奏はこれで二種目のディスク(輸入盤さまさま)。前作はオーケストラを意識してのエコー(残響)があって、霧のかかったような、メロディーラインが聞こえてこないところもありました(歌がたくさんあるのにもったいない!)が、今回のディスクはデジタルだからなのか、くっきりとした輪郭が感じられて細部の音まで見通せる透明感があり、骨格を知るには良いかもしれません。(ピアノ編曲の部屋へ


ピーター・サイクス編曲(1998)
 パイプオルガンに編曲されたこのディスクを最大限楽しむためにはそれなりの出力のアンプとスピーカーが必要でしょう。 しかし、残念ながら一般家庭では思うような再生ができないのが実情です。ダイナミックレンジが恐ろしいほど広いために、低音が全く再生されないのです。ものすごいシステムで聴いたときの破壊力はこの上なく、特に音(低音)の洪水に一度でも浸ってしまうと、オーディオファイルにとって、これはもう病みつきなってしまう恐ろしいディスク。ちなみにオルガン編曲には、先に紹介した松居直美のディスクもあります。
レビュー


ヨエル・レヴィ指揮/アトランタ交響楽団(1998)

 アトランタ交響楽団の音楽監督に就任して10年目の録音。いかにも「アメリカのオーケストラ!」というバリバリの演奏。そういえば同じ年にチェコフィルを振って、「あの」イングウェイ・マルムスティーンとコラボしてました。テラークは高音質なアルバムを制作してくれますが、このアルバムもしかり。個人的には明るい音色の感触を楽しんでおりますが、「英国の作曲家の作品」って意識してしまうと、ちょっと系統が違うのかなぁと思ったりもします。しかしオーディオファイルとして聞く分には文句なし。

女声コーラス;アトランタ交響合唱団


ジョン・ヴィクトリン・ユウ(1998)/フィルハーモニー管弦楽団

 韓国出身の指揮者、ということや惑星以外のホルストによる『日本組曲』などといった興味深い作品とのカップリング。
 それよりもなによりも、エクストンでレコーディング、SACDマルチという高音質でオーケストラの細部までが楽しめるディスクです。ただ、せっかくのオーディオ・ファイルなのですが、期待していたほどの迫力に欠けるのが残念。マルチなので、時折楽器がリアに回ったりして「おっ」と期待させるシーンもありますが、もっとバリバリと鳴らして欲しかった。

女声コーラス;フィルハーモニア合唱団

 



フィオナ&ジョン・ヨーク(2001)

 最近になってずいぶんピアノ版を聴く(リリース)ようになったような気がします。今度は2台のピアノための編曲ではなく、連弾のための版。これもホルスト自身が行ったもので、世界初録音だという。1台を4手で叩いているので、奥行きや迫力には今一つ欠けるところもありますが、この手の編曲は「手軽にオーケストラを楽しむ」ことができなかった時代の産物なので無理はありません。よほどのマニアでない限り、手を出すことはないのではないでしょうか?私はカップリングの「夜想曲」目当てです。
 このピアノ・デュオは「York2」という名義で活動しているようですが、2011年にニンバスよりパッケージを変更して再リリースした際、、ほかにもストラヴィンスキーの「春の祭典」、ドビュッシー「海」 などを取り上げてレコーディング、コンサートも行っています。
ピアノ編曲の部屋へ


マーク・エルダー指揮/ハレ管弦楽団(2001)

 ついに出てしまった… といった感じの“冥王星”付きの惑星。ここにあるのは、ジャケットに併記されているまぎれもない作曲者コリン・マシューズの冥王星。ホルストの『惑星』ではありません。
 それは副題の「再生をもたらす神(The Renewer)」からもわかるとおり、マシューズは占星術やギリシャ神話に精通していないのか、あるいはホルストがこの組曲を「ギリシア・ローマ神話」の神々をテーマにしている意図を組み損ねたのか、占星術としての“再生”という言葉を選んでいます。プルトー(この名はローマ神話)はアスクレピオスの暗殺を企てた張本人なのに!

 

 

デビッド・ロイド・ジョーンズ指揮 /ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団(2002)

 通常版には“冥王星”が続いて演奏されているようで、海王星の女声コーラスのあとになにやらヴァイオリンの持続音がフェード・アウトしてゆく(私のディスクはSACD盤)。 オリジナルにはないヴァイオリン。つまりこの録音の演奏には冥王星が続くのに、無理矢理機械的に終わらせてしまいます。入れないのならばスコア通りにして欲しいところ。しかしながら非常に透明感があっていい演奏です(通常盤は未聴)。
 そしてSACDで再生したときの音の広がり。あまり期待していなかったのに、このフォーマットで再生できるようになって聞いた最初の「惑星」だったのですが、「これはすごい演奏だ!」と思わせてくれたのです。なんだか「SACDにしちゃえばどんな演奏でも名演になるのでは?」とさえ思ってしまいました。さらにはDVD-Audio でもリリースされましたが、これはNAXOSというレーベルだからできたのではないでしょうか。


コリン・デイヴィス/ロンドン交響楽団(2003)
 1988年にベルリンフィルを振った名盤があるデイヴィスの、しかも惑星にしては珍しいライヴレコーディング。というのも、このアルバムは「ロンドン交響楽団」の自主レーベルLSOで制作されたものです。最近はメジャーオーケストラといえど昔のようにクラシック音楽をレコーディングしづらい時代になってきたようで、ほかにも自主レーベルを立ち上げた楽団があります。でもかえってそのほうが自由度があって、カタログを眺めると面白いと思います。


ロジャー・ノリントン指揮/シュトゥットガルト放送交響楽団(2004)

 一時期は古楽オーケストラ(ロンドン・クラシカル・プレイヤーズ)で大胆な解釈を見せたノリントンが、最近はモダンな楽団を振り話題を播いています。ユニークなのはモダン楽器に古楽奏法を用いていることかでしょう。弦のノンビブラートは、惑星がとても新鮮に映ります。合唱もオケの手前に聞こえる異様さ。この曲にしては珍しいライヴレコーディング。

 でも、やっぱりノリントンにしろ、ガーディナーにしろ、古楽オーケストラでレコーディングしてもらいたかったなぁ。

女声コーラス;シュトゥットガルト国立歌劇場合唱団


パーヴォ・ヤルヴィ指揮/シンシナティ交響楽団(2009)

 アメリカのオーケストラによるレコーディングで、彼ら(アメリカ人)らしく、金管が咆哮しています。それを見事に録音したテラークの技術も特筆すべきでしょう。これだけなってくれれば、なにか吹っ切れた感も…
 私にはスラットキン(セントルイスだったらなぁ)、レヴィ、そしてヤルヴィがアメリカン三部作として楽しませてもらってます。
 

女声コーラス;シンシナティ交響合唱団

冨田勲(2011)

 レコード会社の宣伝では、どうやら2012年に氏が80歳を迎えるに辺り立ち上げたISAO TOMITA PROJECTの一環としているようで、今後(というかCOMING SOONになってます)、月の光、展覧会の絵・・・と続くようです。楽しみぃ!

 この新たに蘇った音の迫力は、さすがSACDの威力でしょう。もはやホルストの「惑星」ではなく、完全なる冨田の「惑星」であることは疑いの余地もありませんが、今回は木星と土星の間に「イトカワとはやぶさ」が作曲されました。遠い宇宙を孤独に旅したはやぶさへの思いがしみじみと伝わってくるようです。(レビュー

これ以降のカタログはSACDの「惑星」のレビューにお進み下さい

 人気曲と言うこともあり、実に多くのディスクがリリースされていますが、未だにこの曲をレコーディングまたは取り上げてくれていない指揮者が多数存在します。言いたい放題にディスクのレビューなどを書いてきましたが、最後に『惑星』を取り上げて欲しい(欲しかった)指揮者を挙げてみました。オーケストラは理想の組み合わせとして(まあ、無理だなぁ)。すでに故人となられた方もいらっしゃるので、夢物語です。

◎ピエール・ブーレーズ/ロンドン交響楽団
◎リッカルド・ムーティ/フィルハーモニー管弦楽団
◎クラウディオ・アバド/ロンドン交響楽団

 
レコードリスト
 

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