BEYOND THE PLANETS(1985)

 A Contemporary Interpretation of Gustav Holsts The Planets.
featuring the music of Jeff Wayne, Rick Wakeman, Kevin Peek,
Narration by Patrick Allen.

 
Rick Wakeman/Keyboards
Jeff Wayne/Composed by Waves/The Journey, Circles, The Heavens Reply Beyond.
Kevin Peek/Guitar
Trevor Spencer/Drums
Patrick Allen/Narration




01. Waves/The Journey*
02. Mars/The Bringer Of War
03. Venus/The Bringer Of Peace
04. Mercury/The Winged Messenger
05. Jupiter/The Bringer Of Jolity
06. Circles*/Saturn The Bringer Of Old Age
07. Uranus/The Magician
08.Neptune/The Heavens Reply Beyond*
*featuring Patrick Allen


 1985年、元イエスのリック・ウェイクマンがギタリストのケヴィン・ピークらと共に母国の作曲家である「惑星」をカヴァーしました。ホルスト死後50年経過(1933年没)したために、「ホルストの遺言」の束縛から逃れることができたことによる選曲です。自分でもおかしいのですが、クラシックのアーティストが同曲をレコーディングしてもカヴァーなんて表現せず、単にレコーディング、録音といった言葉を使うのに、洋楽アーティストが他人の曲を録音すると、どういうわけかカヴァーと言ってしまいます(笑)。
 さて、リックの「惑星」ですが、10年前にパトリック・グリースンによるモーグ・シンセサイザーのレコードが制作されていますが、ここではパトリックの「BEYOND THE SUN」へのオマージュとして「BEYOND THE PLANETS」というタイトルで制作されました。しかしリックの音は、シンセサイザーという表現よりキーボードといったほうがしっくり来るので、彼に限ってはキーボードと表現しようと思います。これが、なかなか良く作りこまれています。トミタ以外で聴くならリックかも、とも思ってしまいます。

 聴くまでは大した期待をしていませんでしたが、冒頭、ジェフ・ウェインの作曲した前奏にパトリック・アレンの語りが入り、火星へとなだれ込む構成は、映画のプロローグを見るようで楽しめます。ホルストの「惑星」はここから始まりますが、ドラミングのリズムがホルストのものと多少異なり、頭の中ではオケのリズムを刻みながら実際のトレヴァー・スペンサーのドラムスを聴いてしまうと「なんだ変拍子、おおプログレッシブロック!」などと勘違いしてしまいそうです。 今までのシンセサイザーにアレンジされた「惑星」の中では、冨田以外ではもっとも個性的かもしれません。一人でやらなかったことが、客観的に眺められたのかもしれませんが、ところどこでかぶさってくるケヴィン・ピークのギターがエレキ(火星)あり、アコースティック(金星)ありで、シンセのみの音アレンジと比べて一味も二味も違って聞こえてきます。このあたりも単独でアレンジすると陥りがちな「単調さ」が回避されるのではないでしょうか。そういった視点から見ても、「トミタの惑星」はすごい作品だと改めて感じます。
 全曲がほぼオリジナルに忠実にアレンジされていますが、中には火星や木星のようにエンディングに仕掛けを入れたり、土星が唐突に終わったりということもあります。木星は当時(1985年)流行ったルイス・クラーク(ELO)の仕掛けた「フックト・オン・クラシックス」の影響がみられ、ロック風の火星は、ELP(エマーソン・レイク・アンド・パウエル)の『EMERSON, LAKE & POWELL 』に影響を与えたのかもしれません。なお、キング・クリムゾンが1970年にリリースした『IN THE WAKE OF POSEIDON 』の中の「The Devil's Triangle」もホルストの火星を題材にしていますが、当時は死後50年たっていなかったので遺族からの許可が下りず、大胆なアレンジと共にタイトルもぼかし、作曲のクレジットにもホルストの名前を入れずに録音されています。


IN THE WAKE OF POSEIDON(1970)
 
 遺族からの許可が下りなかったがゆえに大胆なアレンジを施してカヴァーされた「火星」今でいうところのサンプリング的なアレンジで火星が演奏されています。 クラシックを取り入れる手法で人気を博してきたプログレッシブ・ロックは、このころ、ELP(エマーソン・レイク・アンド・パーマー)の「展覧会の絵」などがヒットしましたが、同郷の英国人としては「惑星」を演りたかったのでしょうか。ここまで解体(作曲家のクレジットの問題で、ここまでやる必要があった)されるとあきらめがつきます(笑)。

 

SOLAR FIRE(1973)
 マンフレッド・マンが率いるバンドで、私なんかは1977年にビルボードでナンバーワンとなった♪光に目もくらみ-Blinded By The Light-(オリジナルはブルース・スプリングスティーン)ぐらいしか知りませんでしたが、ホルストをカヴァーしていました。それも木星のみ。日本の女声ヴォーカリストが大ヒットさせたメロディとは違い、第二主題に歌詞をつけて繰り返します。このアルバムコンセプトがそもそもホルストからの影響で、オープニングはいきなり女声のヴォカリーズ(ソロ)で始まります。「おっ、これは海王星の流れから来る構成かな」と思ったものでした。このあとボブ・ディランのカヴァーへと流れ込んでいきます。


EMERSON, LAKE & POWELL(1986)
   
 1986年にリリースされたELP(エマーソン・レイク・アンド・パウエル)の『EMERSON, LAKE & POWELL』には、火星がカヴァーされています。なぜか唐突に火星だけを選曲していますが、これは当時クリムゾンに在籍していたグレック・レイクがちゃんとした形でやりたかったからかもしれません。法的な束縛から逃れたので。『展覧会の絵』とかのように全曲やってくれてもよかったのにと思います…

 


 
 
 
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