Photo by Toshiharu Minagawa. |
アーティストのカタログは下にあります |
WHP-28001 Autumn/ George Winston |
WHP-28002 Passage/William Ackerman |
WHP-28003 An evening with Windham Hill Live |
ウィンダム・ヒルと最初に出会ったのは、1983年のトヨタ・クレスタのCM(山崎努氏出演)でした。みなさんもご存じのジョージ・ウィンストンのピース“あこがれ/愛”がお茶の間に初登場したのです。 |
あこがれ/愛
/ ジョージ・ウィンストン |
その後ウィンダム・ヒルがNHK-FMで特集され、すでにレコードがリリースされていることを知ると、さっそく週末にレコード屋に出かけ、4枚のアルバムを店員に紹介されました。CMで使われているのはジョージ・ウィンストンの『オータム』に収録されている“あこがれ/愛”であることを教えられ、ミーハーな友人はさっそくオータムを購入。 |
サンクスギヴィング
/ジョージ・ウィンストン |
私はジャケットが気に入った『ディセンバー』を購入しました。実は私にとってのウィンダム・ヒルの衝撃は、音楽そのものというよりも、音楽と実にマッチしたアルバム・ジャケットのセンスの良さに惹かれたのです。これは、写真と音楽の融合を考えていた私にとっては、かなりの衝撃でした。生意気にも「先を越された」などと感じたものです。ジャケットの写真が音になった、音がジャケットになった…。そんな感じです。 |
ブリックレイヤー家の美しい娘/ウィリアム・アッカーマン |
さて、そんなウィンダム・ヒルというのは、一体どんな音楽集団なのでしょうか。ここで、ちょっとライナー・ノーツや、雑誌などで紹介されているプロフィールをかいつまんでみることにします。 |
愛と冒険のテーマ/
マイケル・ヘッジス |
ウィンダム・ヒルは、1976年、当時はまだ無名だったギタリスト、ウィリアム・アッカーマン(William Ackerman)によって設立されました。 ウィルはスタンフォード大学で歴史を専攻していましたが、アカデミックな世界よりも手作りの世界の強く惹かれ、大学を辞めて小さな建築会社を始めます。その会社の名前は『ウィンダム・ヒル・ビルダーズ(Windham Hill Bilders)』といい、かつて自分が逗留した南バーモントにある若い芸術家たちのたまり場、『ウィンダム・ヒル・Inn』にちなんで名付けられました。この会社でウィルは自ら大工道具を握って、山小屋や別荘などを建てて生計を立てていました。 その一方で彼は好きなギターでオリジナルを作曲し、友人のために、また演奏活動をする仲間たちのために、よく曲をプレゼントしてたのです。 ある時そんな友人の一人が、彼の曲の入ったカセットをラジオ局に持ち込んだところ、すぐにオン・エアされ、局に問い合わせが殺到しました。これがきっかけとなり、ウィルの友人60人が5ドルずつ出し合って彼のソロ・アルバムを制作することになったのです。そしてウィンダム・ヒル・レーベルの最初のレコード『タートル・ネイブル』が誕生しました。 日本では、1983年11月25日付けで、ワーナーパイオニアよりウィリアム・アッカーマンとジョージ・ウィンストンのアルバムがリリースされました。 そして『オータム』からは“あこがれ/愛”が、『パッセージ』からは“ブリックレイヤー家の美しい娘”が、そして『ディセンバー』からは“サンクスギヴィング”がそれぞれシングルカットされ(シングルは日本のみ)、この手のジャンルとして異常ともいえるこの人気を博することになりました。先のテレビCMで使われたことや、テレビの天気予報に使われたことが少なからず影響していると思います。 その人気は1984年の白樺湖畔でのライヴ中継でピークを迎え、アッカーマンを始め、甥のデ・グラッシのギター、ピアニストのリズ・ストーリー、シャドウファクスのチャック・グリーンバーグらの演奏するシーンがテレビ朝日にて放送されるにいたります。 筑紫哲也氏とウィンダム・ヒルを日本に紹介したディレクターとアッカーマンの3人によるトークや、アッカーマンの即興“軽井沢にて”が演奏されました。 更には西田敏行主演の映画『植村直己物語』で、ウィンダム・ヒルが全面的に音楽を担当、その制作シーンも音楽ドキュメンタリーとしてTBSで放送されました。お茶の間にマイケル・ヘッジスのハープ・ギターが登場するのは、もしかしたら初めてのことだったかもしれません。 日本でもウィンダム・ヒルが紹介された頃は、かなり大々的に宣伝が行われていましたが、それというのも、レコードの作りにしろ、音楽とヴィジュアルの融合が日本人の感覚と良くマッチしていたからでしょう。 真っ白いキャンバスを思わせる白地に風景写真を当てはめたレコードジャケット。当時はまだそういう時代だったので、アルバムを部屋のインテリアとして飾って楽しんだものです。美しい風景写真と音楽の融合。 クラシックの世界でもヴィヴァルディの『四季』、ベートーヴェンの『田園』やベルリオーズの『幻想交響曲』、ドビュッシーなど印象主義と言われる作曲家たちの作品を標題音楽として捉えたりしますが、そういったスタイルに属さなかったにもかかわらず、タイトルが詩的であり、そのタイトルをイメージさせる視覚がアルバムジャケットにありました。 “日本人は表題が好き”なので、そういう効果は日本人の方が得意なのではないかと思っていましたが、ウィンダム・ヒルはそれを見事に覆してくれたのです。 |
日本でも独自のベストアルバム『心の美術館 Vol.1 PEACE』(1984)と『心の美術館 Vol.12LOVE』(1985)のリリースに合わせ、“レコードを聴きながら見る”という全く新しいスタイルの写真集『PEACE』と『LOVE』が小学館から写楽BOOKSのシリーズとして2冊の写真集が出版され、日本人の感性の豊かさをアピールしてくれたように思えます(個人的な興味は、若き日の星野道夫氏の作品が収録されているのが嬉しい)。 現在は多くのアーティスト(アッカーマンさえ)たちがレーベルを離れてしまいましたが、当時のサウンドポリシーはアーティストの中で育まれ、今も多くの人々の心を癒し続けています。 このページでは、そんなサウンドを生み続けているウィンダム・ヒルを紹介します。 2007年にウィンダム・ヒルは30周年を迎えましたが、今はレーベルとしての機能は残っていません。ここから出発したアーティストたちが、それぞれの道を歩み、今も活動を続けています。 ここでは、そんなウィンダム・ヒルをリアル・タイムで聴いてきた私が、この音楽集団を紹介するページです。 |
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