このページでは、私の好きな「デンオン・アリアーレ・シリーズ」を紹介します。もともとデンオン・アリアーレ・シリーズは、フルートの有田正広を中心としたバロック作品を紹介するというコンセプトでスタートしたシリーズでしたが、2013年現在までに、有田氏を中心とする日本の演奏家たちによるバロック音楽と、古典派の作曲家たちのカタログが多数リリースされるようになり、「バロック」にこだわることのない作品集をリリースています。 そして、このシリーズのユニークな点は、様々なアーティストの魅力あるアルバムが、私の好きな画家である有元利夫(1946-1985)の作品をジャケットに使用していることです。有元氏の作品は、自身もリコーダーなどのバロック音楽を奏でるだけあって、タイトルにも音楽用語や作曲家の名前が登場します。なので、音楽のコンセプトに見事調和しているのではないでしょうか。このおかげでビジュアル的にも統一感のあるシリーズとなり、ジャケットを飾って眺めながら音楽を楽しむことができるのです。 ここでは、1996年にリリースされた5枚を紹介します。 |
|
|
|
|
|
アリアーレに「クラヴィーア」としてカタログに載っていた一枚で、それまでバロックだけだったシリーズに「ベートーヴェン?」と不思議に感じていたアルバムでした。それに今までのジャケットとも異なり、人物のアップというのも異彩を放っていたのです。 ここで初めて私はフォルテピアノを意識して聴きはじめたと思います。ベートーヴェンはそれまで敬遠していたのですが、フォルテピアノの音色にも惹かれ、このさっぱりとした感じが気に入ったのです。このアルバムにはシュローダー(ピーナッツ・ギャングの)が弾いていたメロディが何曲か収録されていたのも聴きやすいと思ったのかもしれません。一音一音がコロコロと聞き取れ、それまで自分の思い描いていたベートーヴェン像ではない、もしかしたらベートーヴェンってすごく面白いのかも、そんなきっかけを与えてくれた一枚です。 ベートーヴェンは当時の流行りには敏感で、新しい楽器(ピアノ)ができると、さっそくそれを手に入れて、その楽器の限界に挑戦する作品を書いていました。時代ごとの新製品に興味を示しているから、鍵盤も右に左に縦横無尽に走り回るような音域を駆使しています。それはピアノの性能を試しているかのようにも聞こえます。 小島さんのエッセイに、このレコーディングのために製作したフォルテピアノの試演会で「まるで火山が爆発するようだった」と回想する制作者クリストファー・クラーク氏のコメントはとても面白く、まさにその通りの音が聞かれます。ピアノが壊れんじゃないの?というぐらいの勢いで(笑)。ここで初めてベートーヴェンらしいイメージが湧いてきました。 私にベートーヴェンの面白さを気づかせてくれた小島さんは、2004年に闘病に倒れ、帰らぬ人となってしまい、返す返すも残念でなりませんが、ベートーヴェン以外にも、アリアーレにはハイドンのソナタ集を残してくれました。その2枚を聴くと、両者の作品の性格がとてもよくわかります。 |
1996年1月20〜23日、秋川キララホール |
|
|
|
|1989年|1990年| |1991年|1992年|1993年|1994年|1995年| 1996年|1997年|1998年|1999年|2000年| |2001年|2002年|2003年|2004年|2005年| 2006年|2007年|2008年|2009年|2010年| |