このページでは、私の好きな「デンオン・アリアーレ・シリーズ」が1989年にリリースしたアルバムを紹介します。 もともとデンオン・アリアーレ・シリーズは、フルートの有田正広を中心としたバロック作品を紹介するというコンセプトでスタートしたシリーズでしたが(たぶん)2011年に終了。これまで有田氏を中心とする日本の演奏家たちによるバロック音楽と、古典派の作曲家たちのカタログが多数リリースされるようになり「バロック」にこだわることのない作品集をリリースしてくれていました。 そして、このシリーズのユニークな点は、様々なアーティストの魅力あるアルバムが、私の好きな画家である有元利夫(1946-1985)の作品をジャケットに使用していることではないでしょうか。 有元氏の作品は、自身もリコーダーなどのバロック音楽を奏でるだけあって、タイトルにも音楽用語や作曲家の名前が登場します。なので、音楽のコンセプトに見事調和しているのではないでしょうか。このおかげでビジュアル的にも統一感のあるシリーズとなり、ジャケットを飾って眺めながら、そして星空に想いを馳せながら音楽を楽しむことができるのです。 ここでは、1990年にリリースされたアルバムを紹介します。 |
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バロック専門のレパートリーだと思っていたし、アリアーレがバロック専門にレコーディングをすると思っていたので、シリーズの2作目にしてフルートを独奏としたモーツァルトの四重奏曲がリリースされたのにはちょっと驚かされました。と同時に「当然の選曲」とも思いました。今回はバッハのBWV1031とBWV1020で奏でていた1770年ごろにフリートリヒ・ガブリエル・アウグスト・キルストによって製作されたトラヴェルソ1本を奏で、持ち替えを行っていません。それだけにじっくりとその音色を味わえます。曲によってヴァイオリンが入れ替わります。
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有田氏のこのアルバムを知る以前は、バルトルド・クイケン(1975)と、ブリュッヘン率いる18世紀オーケストラの首席フルーティストのアルバムを愛聴していました。それぞれが制作者の異なる楽器を用いて、音色の違いを楽しんでいました。特にコンラート・ヒュンテラーの楽器は、1991年になって納屋の倉庫から発見されたといういわくつきの一品。それだけでも通常と違った音色を、実際の音以外のところを想像しながら楽しんでいました。それにしても有田氏は何本トラヴェルソを持っているのでしょうか。通算三作目にして4本目の登場です。時代的にはもっとも古そうです。 このシリーズで遅かれ早かれテレマンの無伴奏がレコーディングされると楽しみにしていましたが、こうも早く登場するとは思ってもみませんでした。テレマンの無伴奏ファンタジーは、ヴァイオリン、フラウト・トラヴェルソ、チェンバロ、そしてヴィオラ・ダ・ガンバと、それぞれ書かれていて、その楽器の音色をじっくりと味わうことができる楽曲です(それにしてもテレマンの器用さと言ったら言葉に表せません)。 この4つの楽器のうち、もっとも単調になりがちなのが、このフラウト・トラヴェルソではないでしょうか?しかし、楽器の中でも、その歴史はもっとも古い楽器として、パンの楽器として、すべての楽器の中で最も神話的なイメージが強く、それが私の中で飽きることがない理由です。 笛という形状をしていなくても何かを通り抜ける際、もっと言ってしまえば空気の塊を空気が抜ける際にだって「びょぉ〜」という音が発生するぐらいだから、自然界にもっとも近い楽器として親しみのある音といえると思います。その単調と表現したのは、単旋律という意味です。 昔、ミカラ・ペトリが2本のリコーダーを加えてハーモニーを奏でていましたが、それはほとんど曲芸に近い技。そうでもしない限り、笛類は一つの旋律しか奏でることはしないのです。それがかえって神秘的と感じることができるのです。 |
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