いよいよウィルの紹介。すでに夜の10時すぎ。会場の構造がステージのみで、ステージ脇がないため、客席後方のバルコニーからウィルの登場(押尾氏もここから登場してた)。
1曲目の演奏の前にギターの説明。1997年に亡くなったマイケル・ヘッジスがウィルのスタジオに忘れていったという、ウィルは「マイケルの置き土産」といって紹介したParlor Guitar。レコーディングでも時々奏しているギターですが、ステージで使うとマイケルの精神がここにいるような感覚となります。
曲は♪Uncondisional。作曲は1977年という、かなり初期の作品ですが、初めてレコーディングされたのは1997年にRob Eberhard Youngとのデュオで発表した『A SUMMER SOLSTICE』の中の1曲。この時はまだ♪Incondizionatamenteというタイトルだった曲(ウィルはよく曲名を変えてリ・レコーディングをよくやる)。ロブはイマジナリー・ロード・レーベルからリリースされた数少ないアーティストの一人で、マイケル・ヘッジスを思わせるアグレッシブなプレイは、マイケル本人も絶賛していたギタリストです。それにしてもメガネ姿のウィルも、いい感じで歳とった感がにじみ出ていてカッコいい。
(そういえば楽屋裏で私のメガネ・チェーンを見た奥様が「それ、いいわね」といってしげしげと手に取って眺め「彼は良く、俺のメガネはどこ言った? いつもと探しているから、こんなの欲しいわ」なんてこと言ってました)
2曲目は押尾氏がステージをウィルに譲りソロ。♪The Impending Death Of The Virgin Spirit。オリジナルは2ndアルバム『IT TAKES A YEAR』の曲で、邦題が「無垢の心」と付けられています。ウィルを代表曲の一曲。2曲とも途中で止めてしまった様子でしたが、目の前で眺めていた押尾氏は「そんなこと大したことじゃないよ」、と興奮状態。そんな二人を見ていてコチラも嬉しくなって目が離せない状態です
3曲目は押尾氏と再びデュオで♪The Bricklayer's Beautiful Daughter。日本では「ブリックレイヤー家の美しい娘」というタイトルでシングルカットされた曲。デュオによる演奏は、まるで小さな女の子が庭を飛び跳ねるように感じられ、娘というよりは少女を思わせる雰囲気が新鮮でした。
二人の共演が、同じく3曲過ぎたところでお待ちかねのToddの登場。これまでのImaginary Road Studioでレコーディングされた2枚のアルバム(TOUCHED BY THE SUN、ONE)ではギタリストとして親しんできた彼でしたが、最初に手にした楽器はバンブー・フルートという形も音色も尺八に良く似た楽器(Bo Fain製)。曲は映画『植村直己物語』から、今は亡きチャック・グリーンバーグのリリコンが美しい♪Prossesional。これもオリジナルはウィルの1st『IN SEARCH OF THE TURTLE'S NAVEL』にソロでレコーディングされていた曲。2016年にアナログ化された『RETURNING』では、じつに5回目のレコーディングが行なわれ、途中アンサンブル化されたアレンジをソロに戻してレコーディングしています。
次はウィンダム・ヒルのフォロワーのみの演奏で、それをウィルが目の前で聞いている、非常に感慨深い瞬間ではないでしょうか? 曲はToddの新しいアルバムに収録されている♪Celtic Heart。ギターも打楽器として表現する押尾氏との共演はToddにとっても良い刺激になるのではないでしょうか?そしてまた、このセッションが初めてとは思えない(大阪で演っているとはいえ)息のあった演奏を繰り広げてくれました。この曲の後半ではToddもギターに持ち替え、ギターバトルが良かった。
ウィンダム・ヒルの新しい風を体験した後は、再びウィンダムの丘へ。1985年の傑作♪Visiting。ウィルの5th『PAST LIGHT』に収録。邦題もそのまま「訪れ」。ここで押尾氏はギターからベースに持ち替え「マンリングのパートだな」とニヤニヤしながら眺めていると、その通りに押尾氏が解説(今回のステージはすべて押尾氏が曲解説と通訳的なことを担当してくれたので安心)。トリオの演奏。
そして「次が最後の曲」という紹介でウィルの4thアルバム『PASSAGE』に収録されている
♪Hawk Circle オリジナルはジョージ・ウィンストンとのデュオ。そして、なんの前触れも無く、この会場のウリのひとつとなっているらしいステージ後方の幕が開き、眼下の夜景になった庭園が目に入ってきました(二階席からじゃないとわからないかもしれません)。ウィルはそれを見て「トーキョー!」と叫んで両腕を上げて叫んでくれましたが、せっかくの演出も私には不要かなと思えました。というのは彼(ら)の音楽は自然の中での語らいに似たアコースティックサウンドの中で聴いてきたので、人工的な風景には違和感を覚えてしまうからです。やはり彼の音楽は自然の中で、ウィンダムの丘で聞きたいですね。
一度ステージの奥(客席)に引っ込んだ後、拍手が鳴り止むはずもなくアンコールへ。登場したのは押尾氏とウィルの二人だけ。曲はウィルもメロディがいいと絶賛してくれたという押尾氏のオリジナル曲♪ナユタ。押尾氏はウィルに「じゃあ一緒に演ってよ!」と言ったら「やろう!」とOKをくれたということで実現した曲なんだそうで、最後の〆もウィルの曲で終わるのかと思いきや、この選曲は意外(嬉しい誤算)でした。ウィルが自分のステージで、自作以外を演奏するのは非常に珍しいかもしれません。
7月13日の曲目は以下のとおり。 |