星と天界の音楽と(星のソムリエのブログ)

ラヴェルのピアノ曲愛聴盤
 ラヴェルのピアノ作品は、いまならCD2枚に収まってしまう程度の数しかなく、ドビュッシーのそれと比べると、ちょっと物足りなく感じます。それでも、何度も何度も聴く彼の数少ない作品を聴いているので、どれもこれもが名曲と感じてしまいます。 ここではラヴェルの全集にかぎらず、良く聴くアルバムを紹介します。、

最近ではピリオドを奏してのレコーディングも増えて、面白いですね。


ウラド・ペルルミュテール

・古風なメヌエット
・亡き王女のためのパヴァーヌ
・水の戯れ
・ソナチネ
・鏡
・夜のガスパール
・ハイドンの名によるメヌエット
・高雅で感傷的なワルツ


ビクターVIC-22735~5(1970年録音/1980年発売)

発売当初の帯には“ラヴェル演奏の規範”と称えているように、ラヴェル唯一の愛弟子による演奏です。

「ラヴェルが弾くとこうなるのかなぁ」

  などと想像せずに入られないタッチを楽しむことが出来ます。人類の遺産的といえるでしょう。残念なのはソロ作品のみで、連弾などの名作が含まれていないことです。

アナログ盤のデジタル・リマスター処理が施された2枚組CD。リマスターが施されるまでは1、2と分配されていました。

 2021年6月にTower Recordsによりリマスター盤がリリースされました。今回は1973年にレコーディングされた独奏によるピアノ全集の他に、1982年にエイドリアン・ファーマーとの連弾による『マ・メール・ロワ』が追加されています。タワー情報では、連弾相手のファーマーは、現Nimbus Recordsの社長に就任しているのだとか… 残念なのは、ジャケットの色が変なところ。音質は改善されているものの、ジャケットは原画から起こしたんじゃないような色味(色あせたカラープリントから起こしたような色…)
 

 

・グロテスクなセレナード
・耳で聞く風景
・口絵
・古風なメヌエット
・亡き王女のためのパヴァーヌ
・水の戯れ
・ソナチネ
・鏡
・夜のガスパール
・マ・メール・ロワ
・ハイドンの名によるメヌエット
・高雅で感傷的なワルツ
・ボロディン風に
・シャブリエ風に
・前奏曲
・クープランの墓

(ロリン・マゼール/フランス国立管弦楽団)
・ピアノ協奏曲
・左手のためのピアノ協奏曲


 私がもっともお勧めするのがジャン=フィリップ・コラールによるピアノ曲全集です。ソロ作品はもちろんのこと、4手(連弾、2台を含む)のための作品も網羅した、まさしく“ピアノ作品全集”です。控えめながらミシェル・ベロフと、カティア・レベックが参加している「口絵」などは、他で聴くことが出来ない貴重な録音ではないでしょうか。発売当初は3枚組みボックスとしてリリースされましたが、後に様々な形でCD化されました。たとえばマゼールとのピアノ協奏曲をカップリングにしたCDセットだったり。現在は【名曲集】として、曲目を減らし、ジャケットのクレジットを変更した形でリリースされています。そして、EMIからERATOになったことで期待はしているのですが、2017年現在も国内盤の発売が無い全集セットなのです。
また、嬉しいことには2003年にEMIがボックスとしてまとめてくれたセットには、長らく廃盤状態が続いていた1978年録音のドビュッシーがカップリングされました。なので、ジャケットにクレジットされた文字も「RAVEL-DEBUSSY」

 コラールが「ラヴェル没後50周年演奏会」で上野の東京文化会館小ホールでコンサートを行ってくれた際、ジャケットにサインをして貰うことが出来ました(なんてミーハー)。

 そして私と同じ誕生日の(関係ないですけどね)ロリン・マゼール/フランス国立管弦楽団とのピアノ協奏曲全集も、ピアノ作品集のレコーディングと同時期に行われました(プロデューサー、エンジニアが同人物。ピアノ・ソロの後のセッションで)。
これがリリースされた頃、私はまだ中学生だったこともあり、この異色の組み合わせの凄さは知りえませんでした。写真にこうしたアーティストが一緒に写りこんでいるのって、ぞくぞくしちゃいますね(笑)。
演奏自体はマゼールにしてはオーソドックスかなぁ、と思います。確かこの後、ホルストの『惑星』を入れてますね。ホルストの時も同じように聴こえました。


マルタ・アルゲリッチ
 アルゲリッチはラヴェルを得意としていたようで、2017年現在まで、5枚のアルバムをレコーディングしています。残念ながら未録音に手を出さず、再録音(ピアノ協奏曲など)があるために、枚数的にはとっくに全集を完成させているのに、ピアノ・ソロ全曲をレコーディングをしていません。わずかなレコーディングから聞こえてくるラヴェルは、かなり個性的な演奏でした。
 最近のインタビューで、マルタは「誰かと」じゃないと「不安」とコメントしていたのを読みました。だからなのか、ピアノ・ソロはない代わりに、デュオだったり協奏曲だったり… どんどんレコーディングが減っていきます。

 ともかく、マルタのラヴェルは、美しい音色はもちろんのこと、(もともと印象はとも違うラヴェルの色を)印象派っぽく弾かないラヴェルに惹かれているので、ぜひラヴェルの残りを、あるいはワイセンベルクのように♪「クープランの墓」だけでもレコーディングしてほしいですね。
 ♪「マ・メール・ロワ」は2種ありますが、最初のレコーディングは打楽器が加わった編曲。そして、今や指揮者として有名になったプレトニョフとのデュオ。

・ソナチネ
・夜のガスパール
・高雅で感傷的なワルツ

(ネルソン・フレイレ -1993-)
・マ・メール・ロワ(ザードロ編)
・スペイン狂詩曲(ザードロ編)

(ミハイル・プレトニョフ -2003-)
・マ・メール・ロワ

(クラウディオ・アバド/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団)
・ピアノ協奏曲(1968)

(クラウディオ・アバド/ロンドン交響楽団)
・ピアノ協奏曲(1984)

 

 ピアノ協奏曲の再レコーディングは、アバド/ロンドン響のラヴェルの管弦楽作品全集の一環で録音されたもので、♪左手のための協奏曲は、当時怪我をしてピアノを離れていたミシェル・ベロフが担当しています。実のところ、ベロフが弾くことになったのが、マルタの一言だったらしいです。
「ミシェル!あなたが弾きなさいよ!」って。


前田あんぬ

・グロテスクなセレナード
・古風なメヌエット
・亡き王女のためのパヴァーヌ
・水の戯れ
・ソナチネ
・鏡
・夜のガスパール
・ハイドンの名によるメヌエット
・高雅で感傷的なワルツ
・ボロディン風に
・シャブリエ風に
・前奏曲
・クープランの墓


 リリース当初、ジャケットに圧倒されてしまって・・・ 

 なーんでこんな水商売みたいな格好でラヴェルのジャケットを持ってきたんだか理解に苦しみます。本人も緊張というか、笑顔堅いし。しかもジャケット裏はミニスカートで立ち姿。隣にラヴェルの写真。せっかくペルルミュテールが「ラヴェル弾き」と讃えているというのに。何考えてんだかフォンテック(レコード会社です)。ただ、本人の希望であったなら致し方ないですが。それに応えてなのか、2000年の再発売の時はまるで別人のような写真に差し替えられての発売になっていました。

 で、気になる演奏ですが、ホールトーンが出ていて、どこかのステージで聴いているようなクリアな音が好感持てました。それは演奏から来るもので、ペルルミュテールが「ラヴェル弾き」と言ったことに頷けるのではないでしょうか?特にピアノがオン気味のフランソワの後に続けて聴くと明らかで、その響きに魅せられてしまいます。

 



 

キャスリン・ストッツ(1992)

・クープランの墓
・水の戯れ
・ソナチネ
・逝ける王女のためのパヴァーヌ
・夜のガスパール

 NECアベニュー NACC-5544

 ペルルミュテールに師事したキャスリン・ストッツのラヴェル。たった1枚しかレコーディングしていませんが、発売当時話題になりました。地味な演奏ですが、ラヴェルのピアノ作品が持つ雰囲気を十分に伝えてくれます。
ストッツはショパンやフォーレを得意としており、フォーレのピアノ作品全集をレコーディングしています。

レコード帯には“ラヴェル-ペルルミュテール-ストッツ 時を越え語り継がれたラヴェル直伝派のピアニズム”と書かれています。



ジャン・ティボーデ(2003)

・グロテスクなセレナード
・古風なメヌエット
・亡き王女のためのパヴァーヌ
・水の戯れ
・ソナチネ
・鏡
・夜のガスパール
・ハイドンの名によるメヌエット
・高雅で感傷的なワルツ
・ボロディン風に
・シャブリエ風に
・前奏曲
・クープランの墓

 ピアノの貴公子というあだ名がついているティボーデのラヴェル全集。とはいってもソロのみです。



ロジェ・ミュラロ

・グロテスクなセレナード
・古風なメヌエット
・亡き王女のためのパヴァーヌ
・水の戯れ
・ソナチネ
・鏡
・夜のガスパール
・マ・メール・ロワ
・ハイドンの名によるメヌエット
・高雅で感傷的なワルツ
・ボロディン風に
・シャブリエ風に
・前奏曲
・クープランの墓
・ラ・ヴァルス(独奏版)

ACCORD 476 0941

(2003年録音)

 イタリアの銘器Fazioliによる演奏。スタインウェイのキラキラとした白色で透明感のある輝きに対して、琥珀のようなイメージを感じさせる音です。ラヴェルのピアノ作品は、それほど多くないのでだいたいが2枚で収まってしまいます。2台のピアノ作品も含まれていますが、全集には至っていないのが残念です。

個人的にはスタインウェイをヴェガの純白の輝きとしたら、ファツィオリはアルクトゥルスの樺色(先ほど琥珀と表現しましたが、星の色に例えると…)のような音世界が広がってくるようです。

 

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