星と天界の音楽と(星のソムリエのブログ)



AlexisWeissenberg(1929-2012)

 私がブルガリアのピアニスト、アレクシス・ワイセンベルク(1929-2012)と巡り会ったのは、母がもらってきたコンサートのチラシでした。小~中学生の時にムソルグスキーの『展覧会の絵』が気に入り(そもそものきっかけは、つのだじろうの『恐怖新聞』)、そのチラシにムソルグスキーが曲目にあったのを見かけて持ってきてくれたのが、たまたまワイセンベルグだった、ということなのです。
 結局、彼のコンサートには行くことができませんでしたが、来日に合わせNHKなど、多くのテレビ番組へ出演し(確か黒柳徹子の番組)子どもたちと音楽遊びをしていました。その際、後ろ向きにピアノを弾いたりしていたのを思い出します。
 特に私が好んで聴くアルバムは、先にあげたムソルグスキーとラヴェルの『クープランの墓』がカップリングされたレコードで、ワイセンベルクのアルバムとしては始めて購入したものです。そのあと、チャイコフスキーとラフマニノフのピアノ協奏曲のカップリングされたお得ムソルグスキーはバーバ・ヤーガの小屋からキエフの大門に至るところでA面からB面へとショッキングなひっくり返しがあって、ワイセンベルクの迫力のある演奏がクライマックスを迎える手前で「くっそー」と思ってました(笑)。 これがレコード時代。
 2006年から2007年にかけて、(これで一体何期目になるのか?)東芝EMIの廉価盤シリーズおかげで、以下のアルバムをまとめて購入し、久しぶりにワイセンベルク漬けになっています。やっぱりオリジナルジャケット、というより、最初に見かけたときのジャケットが一番しっくり来るので、シリーズをしばらく傍観していました。最も懐かしく思ったのはバーンスタインとのラフマニノフです。これが発売されたのをきっかけに、今までためらっていたコンチェルトやムソルグスキーを探してしまいました。
一言で彼の演奏をたとえるなら“強靭なタッチ”でしょうか?繊細なピアノ曲には不向きな表現ですが、私が好んで聴いているアルバムに関して言うなら、やっぱりこれぐらいの迫力は欲しいです。



 
 チャイコフスキーはトロンボーンのファンファーレに続いてピアノの打鍵がいかにもワイセンベルクらしい強打の連続で、スカッとします。それにこたえてカラヤンも美しい音をパリ管弦楽団から引出した名演・名録音です(EMIには珍しい、というかこの頃の録音は良かった)。
 アナログでは下のラフマニノフとのカップリングでしたから、廉価盤でおつりがくるような思いで楽しませてもらいました。

指揮;ヘルベルト・フォン・カラヤン/パリ管弦楽団
録音;1970-1972年

 

 
 レコードではチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番とのカップリングでしたが、こちらの方が初出の組み合わせのようです。チャイコフスキーと同じく、ピアノの序奏は強靭な打鍵ではじまり、ワイセンベルク節が堪能できます。この曲はこうでなくちゃ。私にはギリシア神話の英雄ヘラクレスが逆境に立ち向かうようなテーマに聴いていました(ああ、懐かしい…)

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮;ヘルベルト・フォン・カラヤン
録音;

 

 
 2012年になってFM東京の音源で、1977年に両者が来日した際のライヴ音源がSACD化 されてリリースされました。彼の死を偲んでのリリースでしょう。いいことしますね、ファンも喜ぶし。ちなみにライヴ音源はカラヤンがベルリン・フィルを率いてベートーヴェンの交響曲全曲演奏会のチクルスの一環としてピアノ協奏曲全曲も行いました。そちらもSACD化されて話題になってます(初出に比べて値段が半額近く下がっている!)。
 セッションによるレコーディングも1970年代に行われました。カラヤンの追及する音の美学とワイセンベルグの強靭な打鍵が見事に合体したような演奏・録音です。ショルティとの組み合わせも面白かったなぁ、とないものねだりしてしまいますが、カラヤンがショルティを近づけなかったという逸話もあるぐらいだから、難しい相談なんだろうと思いますが…

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮;ヘルベルト・フォン・カラヤン



 そもそもバーンスタインのEMI録音ということ自体が珍しく、このアルバムの他、同じくフランス国立管弦楽団を指揮したベルリオーズの『幻想交響曲』や『イタリアのハロルド』があります。ラフマニノフの協奏曲、有名な第2番はカラヤンと、そして地味な第3番をバーンスタインと。なぜ同じセッション(カラヤンかバーンスタインのどちらか)で録らなかったんでしょうか。まあ、ファンとしてはこうした顔合わせは楽しみでもあるのでうれしいですが。

フランス国立管弦楽団
指揮;レナード・バーンスタイン
録音;1979


 


 カラヤンばりばり演出の映像。レコード(音)ではパリ管弦楽団でしたが、映像は手兵であるベルリンフィルを起用して硬質な音がヒシヒシ伝わってきます。

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮;ヘルベルト・フォン・カラヤン

 


 1972年8月7日にザルツブルク音楽祭に出演した際のライヴです。ラジオなどでもオン・エアされることの多い音楽祭ですが、ここ最近はオルフェオ・レーベルから放送音源がリリースされることが多いので要チェックです。それにしても曲目を見ると、一晩のコンサートにこんなに演奏したの!と驚いてしまうぐらいのてんこ盛りです。

ラヴェル: クープランの墓
シューマン: 幻想曲 ハ長調 Op.17
ムソルグスキー: 組曲「展覧会の絵」
以下、アンコール
夜想曲 第20番 嬰ハ短調(ショパン)、即興ワルツ(リスト)、狂詩曲 ト短調(ブラームス) 、エチュード ヘ長調(モシュコフスキ)、主よ、人の望みよ喜びよ BWV147(J.S. バッハ)。


左上にあるのが来日公演のチラシ

Alexis Weissenberg.com

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