10月24日 四街道自然同好会
 『東武浅草線の急行車内は、平日というこもあって空いています。時々、無人駅のような駅で、上り列車を待つために停車していると、まるで自分の部屋に一人でいるみたいな錯覚になることさえありました。(勤務明けで一人目的地に向かっていたので、気分は「一人旅」です)。聞こえてくるのは列車の軋む音だけです。車窓にも映し出される都会の雑多な景観も、時間と共に人狩りを見せ始め、一時間もすると、のどかな田園風景に取って代わり始めたので、僕は青空に雲のないのを見つめながら「今夜の星の話は何を話そうかなぁ」と思いめぐらせていました。

 と、ここまでは良かったのですが、日光に近付くにつれ、山間からモアモア〜っと雲が湧き上がってきたかと思うと、あっと言う間に広がってしまいました。

あ〜 あぁ〜 あぁぁ〜(このあとしばらくつづく…)

 「行きたくないなぁ。こんな曇っているのに、なぁ〜んで行かなきゃなんないんだろー」そんな事を考えていると、暗くなり始めた車窓に映る自分の姿の中を、赤く染まった紅葉が無表情に通り抜けていきます。遠くの街灯に小さな明かりが灯りました。

 終点に近付くまで外を見ないように、本でも読んで気を紛らせていたのですが、顔を上げたときに、なにげなく目が窓の方に向いてしまいました。そこには碧く染まった空に、真っ黒な山のシルエットが切り絵のように浮かび上がっています。「あれっ? 晴れてんのか?」固唾を飲みながら額を窓にくっつけて、くまなく見ても雲はどこにもありません。西の山の頂に、ひときは穏やかな光を投げ掛けている木星の姿がありました。(わーい)

 バスで夕暮れの賑やかな町を離れ、30分ほど揺られると真っ黒な闇が広がり、そこに星が瞬いています。普通なら「頭上に」という表現をするのですが、ここでは地平線まで星が輝き、まさに星空に包まれているという形容がピッタリの場所でした。
 西の地平線から雲のように湧き上がる天の川が、天頂を横切って東の空に架かっています。その中にはくちょう、ケフェウス、カシオペヤ、ペルセウス、ぎょしゃといった星座たちが埋もれていました。四街道では見ることのできないくらい星も明るい表情を見せ、久しぶりに星座探しが楽しいと思えるほどでした。遠くの街灯がユラユラ揺れて頼りなさそうです。

 「ここで野宿をしてもいいなぁ」などと勝手なことを考えていると、暗闇の中から僕の名を呼ぶ声がして我に返りました楓林舎の佐藤さんが、わざわざ迎えに来てくれたのです。佐藤さんの案内で、湯上さん一行は既に到着しているとか周辺の様子とか、ここ数日は星空が続いているといった話を聞きながら、車は暖かい灯りの点る木造作りの楓林舎の前で止まりました。室内に漂う木の香りが、冷え切った体をほぐしてくれるようです。先に来ていた皆さんと顔を合わせると、早速食事。そして湯上印の『果実酒飲み比べ』になりました(ここに書かなくても、いつものノリです)

 夜も更け、ほろ酔い気分で外に出ると、目が慣れてくるにつれて次々と星が浮き上がり始めました。僕自身、あまりの星の多さに呆れてしまい、見慣れているはずの星座の姿が、中々つかめないといった具合でした。あれこれ眺めているうちに星空のあちこちで、ポロン ポロンと流れ星が天を引き裂いては消えてゆきます。何億年もの間、宇宙空間を漂っていた宇宙塵が地球に飛び込んだ瞬間、気の遠くなるような旅を終えて燃え尽きる姿に、みんなわーわーきゃーきゃー喜んで(感動して)いました。 もしかしたら星座や星の名前を説明するより、ただ大地に寝っ転がって眺めているだけの方が、宇宙を理解(感じる)できるのかもしれません。太古の昔から人々を魅了してきた星の輝きが、現代の人イトにも同じように、それぞれの心の中へ、星の世界を語ってくれるのですから。

P.S. 翌日の部分日食は、小雨の中でちらっとだけ見ることができました。』

---四街道自然同好会・11月15日号(1995)/


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