星と天界の音楽と(星のソムリエのブログ)



 映像と共に話題になった『コスモス』のサウンドトラック盤は、日本でもテレビ放送の直後にリリースされました(RPL-8063)。残念なことにCD化にならず国内盤は廃盤となっていますが、これをもとに再構成され、デジタルリマスター処理が施されたCDの2枚組がリリースされました。ここでは、双方の比較を行ってみようと思います。

 番組のテーマ曲として選ばれたのは、ギリシア出身のキーボーディスト、ヴァンゲリスの楽曲。オープニングに使われていた“天国と地獄パート1”は、この番組のために作曲されたのではないかと勘違いしてしまうほどの広がりで視聴者を魅了しました。そしてもう1曲は“アルファ”。この楽曲も効果的に番組では使われています。この当時はまだシンセサイザーという言い方は一般に浸透して折らず、電子音楽などと呼ばれていました。

 番組では他に効果的に使われていた曲にクラシック曲があげられるでしょう。特に映像と見事に被さっていたのが、ショスタコーヴィッチの交響曲第11番や、ホヴァネスの交響曲第19番。これら二つの曲は番組の展開上、テーマとして扱われていたためもあって頻繁に登場しています。

 しかし『コスモス』でもっとも衝撃的な映像と音楽は、第2話『宇宙の音楽』の中の生命の進化におけるコンピューターグラフィックでしょう。単細胞生物から人間が誕生するまでの長い歴史を、まるで一筆書きのようなアニメが音楽に合わせて舞曲を踊るかの如く進化してゆく過程は、カルチャーショックでした。そのバックで使われていたのが、バッハのパルティータ第3番と、ヴィヴァルディのマンドリンと弦楽のためのソナタです。後者はセーガン博士が「それでは億年の歴史を1分でまとめてみましょう」というシーンで使われました。嬉しいことに後者はCDになって初めて収録されました。

 どういう理由からか、最初に放映されたときの音楽が差し替えられるシーンも多々あります。たとえば第一話のエラトステネスを紹介する場面では、ヴァンゲリスの『天国と地獄』から“Bacchanale”が使われてましたが、ビデオ化以降別の曲に差し替えられたり、再放送ではマーラーの曲が多く採用されたりしていたにもかかわらず、DVD化ではまた元に戻ったり。またサウンドトラックといいながらも、テレビで使用された演奏が必ずしも収録されていなかったりと、多少の不満は残ります。


THE MUSIC OF COSMOS

 廃盤(RPL-8063)と紹介してしまいましたが、海外ではジャケットがヘンテコ(安っぽい)になってリリースされていました。内容は曲順も曲目も当時のままです。中身のスリーブなどもそのままです(なんでジャケットだけ、あんなに変な風にしたんだか)

 もともとRCAからリリースされていましたが、版権の関係なんでしょう、ジャケットだけ変更されています。内容は同じなんだから、オリジナルのままリリースしてくれているのだから、このさいワガママは言わないでおきましょう。



放送直後にリリースされたサウンドトラック
(1981。廃盤)
2枚組で再構成されたサウンドトラック(2000)
SIDE 1
I.SPCE/TIME CONTINUUM(時間と空間の旅)
DISK 1
I.SPCE/TIME CONTINUUM(時間と空間の旅)
天国と地獄(ヴァンゲリス)
交響曲第11番(ショスタコーヴィッチ)
アルファ(ヴァンゲリス)


天国と地獄(ヴァンゲリス)
The Dark Emptiness of Sapce
交響曲第11番(ショスタコーヴィッチ)
The Big Bang
アルファ(ヴァンゲリス)
II.LIFE(生命の詩)
II.LIFE(生命の詩)

鶴の巣籠(G.ヤマグチ)
カノン(パッヘルベル)
四季「春」(ヴィヴァルディ)
ソラリスの海(J.S.バッハ/冨田勲)






The Beginning of Life
鶴の巣籠(G.ヤマグチ)
クラリネット協奏曲K.622(モーツァルト)※
カノン(パッヘルベル)
The Animals Emerge
メタモルフォシス(ボディスラム)※
Survival
ソラリスの海(J.S.バッハ/冨田勲)
The Beauty Below
パルティータ第3番(J.S.バッハ)
III.THE HARMONY OF NATURE(自然界の調和) III.THE HARMONY OF NATURE(自然界の調和)

パルティータ第3番(J.S.バッハ)



Runnig Free
四季「春」(ヴィヴァルディ)
トランペット、オーボエと通奏低音のためのソナタ(フィンガー)※
マンドリンと弦楽のためのソナタ(ヴィヴァルディ)※
IV.EXPLORATION(探検の時代) IV.EXPLORATION(探検の時代)
交響曲第19番(ホヴァネス)
レガシー(シナジー)
序曲『ロシアの復活祭』(リムスキー・コルサコフ)
心の宇宙(武満徹)







The Great Voyage
歌劇『サルタン皇帝の物語』より※
レガシー(シナジー)
序曲『ロシアの復活祭』(リムスキー・コルサコフ)
DISK 2
パルサー(ヴァンゲリス)※
The Power Strggle
交響曲第19番(ホヴァネス)
Industrialization
メランコリー・ブルース(ルイ・アームストロング)※
War
Aquarius(ミュージカル『ヘアー』より) ※
. V.EXTRATERRESTRIALS(地球圏外)
. Up Into Space
霊感の館(ヴァンゲリス)
The Aliens Are Watching
『惑星』より火星※
エイリアン・イメージ(BOYDSTUN)※
フライ・ナイト・バード(ロイ・ブキャナン)
SIDE 2
V.CATACLYSM(カタストロフィー)

VI.CATACLYSM(カタストロフィー)
フライ・ナイト・バード(ロイ・ブキャナン)
霊感の館(ヴァンゲリス)
春の祭典(ストラヴィンスキー)
Over Population
春の祭典
Human Destruction
グレゴリオ賛歌(ホヴァネス)※
VI.AFFIRMATION(未来への希望) VII.AFFIRMATION(未来への希望)
イグナチオ (ヴァンゲリス)
羊飼いの娘(ブルガリア民謡)
天国と地獄(ヴァンゲリス)
Who Speakes For Earth ?
羊飼いの娘(ブルガリア民謡)
コメット(ヴァンゲリス)

 


1981年にリリースされたオリジナル盤と異なる点
・音質がデジタル・リマスター処理された。
・曲目が増えた(※)。
・EXTRATERRESTRIALSという項目が増え、V以降がずれている。
・曲目は同一でも演奏者が異なっている。
・曲間にエフェクト(青字)が掛けられている。



番組で使用された曲が収録されているアルバムを紹介します。

ヴァンゲリスジャン・ミッシェル・ジャール冨田勲|ピンク・フロイド|