★交響曲第11番『1905年』
この交響曲が、よもや宇宙をテーマとした科学番組に使用されるなんて、作曲家は思いもよらぬ出来事だったことでしょう。当然ショスタコーヴィッチは1975年に亡くなっているので、そんなこと知る由もないでしょうが、この曲が扱っているテーマをご存知の方には、やはり驚愕の出来事なのではないでしょうか。
ちょこっと、この曲の解説を(あいかわらず簡単に)。
ショスタコーヴィッチの交響曲第11番『1905年』は1957年の作曲です。副題にも現れている通り、1905年に起きた、ある出来事を題材にしています。その年が明けて間もない1月9日、ロシアのサンクトペテルブルグで起きた“血の日曜日”事件。労働者の請願行進に対して政府が発砲、死者が千人にも及んだ惨劇です。
第1楽章が主に番組では使われていますが、交響曲としては全楽章を通して、切れ目なく演奏する指示が書かれているために、4楽章の交響曲というよりは単一楽章の交響詩といった性格が強い曲です。しかし聴いてみれば約1時間(な、長い…)。
それぞれの楽章には副題がつけられています。
第1楽章;宮殿広場(Adagio)
第2楽章;1月9日(Allegro)
第3楽章;永遠の追憶(Adagio)
第4楽章;警鐘(Allegro non troppo)
第1楽章は、すでにコスモスでなじんでいるために、本来は宮殿広場に集まる群衆を描いているとのことですが、宇宙を漂うイメージしか湧きません。静かなアダージョ楽章。
第2楽章では惨劇(弾圧から死者が横たわるまで)を描写し、自作の合唱曲のメロディを引用しています。
第3楽章は犠牲者へのレクイエムと言うべきアダージョ。革命歌「同志は斃れぬ」をヴィオラが歌い、その叫びと嗚咽はやがて行き場のない怒りへと昇天し、冒頭のレクイエムへと回帰する流れとなっています。
第4楽章は激しいアレグロ。番組でも一部登場します。
アラン・ホヴァネスに次いで番組で多用されている曲です。通常のCDでは第1から4楽章までは切れ目なく演奏されているため、サントラに第1楽章だけ収録されているのは大変喜ばしいことです。
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