星と天界の音楽と(星のソムリエのブログ)

 直下の2冊(星のない夜に楽しむ本、星の年表)が、まさか斉田さんの執筆されたということを知ったのは、私が『星を近づけた人びと』を読んだ後のことでした。
  『星の手帖』への執筆も多かったし。とにかく斉田さんの作品は、星のソムリエのネタ帳にはかかせないような天文関連の、あまり表立って登場しないようなエピソードが満載なのです。

 

星のない夜に楽しむ本、星の年表
 まさに私が追っかけている資料がぎっしり収まった本です。天文学に起きた出来事が年表形式に記載されたなんの変哲もない小誌ですが、その内容は天文学の偉大なる足跡です。こうした作業は斉田先生ならではの偉業でしょう。 もともとは付録として作られたそうですが、こうして冊子として出版された出版社にも拍手です。  この本が出版されたエピソードが最後に記載されていますが、まさにコペルニクスと同じ状況にありました。出版社の方が校正刷りを持ち込んだのが病床に伏せた斉田先生であり、「校正通りに」という言葉を残し、2日後に亡くなられたそうです。




天文学99の謎
【天文学99の謎】0376-611331-2872
産報ジャーナル(1977年4月1日発行)




星を近づけた人びと
【星を近づけた人びと 上・下】
地人選書(1979年12月10日発行)
 「おはなし天文学」の著者である斉田博先生の書き上げた、あまり表だって語られることのない天文学者の半生を描いた作品集。上下とあり、かなり読みごたえがあります。「へぇーそうだったのかー」といったエピソードが詰め込まれ、先生の一品である「雨の日の天文学」(クイズ集)と同じ性格を持っているのではないでしょうか。
  私は、このエピソード集にはまってしまい、現在ではほぼ新刊(復刻)は考えられないので、図書館を巡って読むことが出来ました。 他にも斉田先生には『天文学99の謎―宇宙と星はどのように解明されたか 』や、いわゆる遺作となってしまった星の手帖に連載していた『宇宙の挑戦者』 など、啓蒙的な著作を数多く出版されていて、私も大いに感銘を受けています(進行形)。  




「おはなし」シリーズ

【おはなし天文学 新装版】
地人書館(2000年10月15日発行)
【おはなし星座教室】
地人書館(1980年10月1日発行)

 先の「星を近づけた人々」の話題をも盛り込んだエピソード集で、こちらはちょっと低学年向けといった感じのする体裁で書かれています。だからといって内容は相変わらずで、古今東西の天文学者達が繰り広げた発見物語に終始しています。

  著者が嘆くように、多くの天文学者の伝記では、その発見した事実だけを記述し、そこに到るまでのエピソードというものは、ほとんど書かれていません。ここでも、天文学者が発見に到る道のりが、読みやすい文体(この文章力も、並大抵のことではありません)なので、次々へと話が進んでいきます。曇った日に読む書籍としては最上の本でありますが、あっという間に読んでしまえそうで、それで晴れ上がってくれれば一石二鳥なのですが・・・

 なお、このシリーズは「天文と気象」という月刊誌に連載され、1973年に単行本として纏められたのが初出です。現在は新装版として読むことが出来ます。


〜 もくじ 〜






未知の宇宙 ーそのナゾにいどむ(I.M.リービット)

【未知の宇宙 ーそのナゾにいどむ】
地人書館(1976年10月12日発行)

 斉田さんは天文学史の著作も多く出版されていますが、翻訳本も手がけています。プロの翻訳家でもないのに、結構な数の翻訳を手がけていて驚異の人だなぁ、と改めて感心してしまいます。この『未知の宇宙』は、当時発見されて間もないブラックホールに関する発見物語を読むことができます。1974年に本国アメリカで出版され、その直後に翻訳をしてくれています。




宇宙の発見 ー望遠鏡による天文学入門(アイザック・アシモフ)

【宇宙の発見 ー望遠鏡による天文学入門】
地人書館(1977年9月30日発行)

 SF作家として有名なアイザック・アシモフが、雑誌に掲載したエッセイの集録ではなく、本格的に天文学と取り組んだ数少ない著作。望遠鏡以前の時代から人間が宇宙開拓に注いできた足跡を、数式を使わず、豊富なエピソードを綴っています。斉田さんがこれまでまとめてきた『星を近づけた人びと』 と同じ性格の内容で、SF作家よろしく、ドラマチックに展開しています。




宇宙の果て ー激突する宇宙論(チモシイ・フェリス)

【宇宙の果て ー激突する宇宙論】
地人書館(1979年2月1日発行)

 この本こそ、まさに斉田さんの『星を近づけた人びと』の原点のような内容。「長いあいだの悩みの歴史は物語にはならないが、ひとたび発見が生まれると、すばらしい物語が作られると言う傾向があり、物語の作者は、何を知ったかということを書きたがり、何が理解を妨げたかを無視しがちである」「物語は主として大望遠鏡と電波望遠鏡による宇宙への挑戦に焦点が集められているが、それが、古今東西の偉大な思想家、とりわけ哲学者の考えと、どのようにかかわりあっているかが、たくみに綴られている。これも類書では求められない特徴である」と書いています。日本では『コスモス』が放送される前のカール・セーガン(この本ではカール・サガンと表記)が序文を書き、著者からアン・ドルーヤン(ドルヤンと表記)に賛辞が贈られていましたが、こうした展開は、まさに『コスモス』への続いているようでした





近代天文学の夜明け
 探してようやく見つけた一冊。ハーシェルに関する書籍は、もしかしたらこれダケなのかもしれません。貴重な伝記です。それが天文学者のエピソードの第一人者である斉田先生の執筆による本なので、面白くないはずがありません!




星百科大辞典(リチャード・バーナム)
【星百科大辞典】NDC440
地人書館(1979年4月1日発行)
 リチャード・バーナムの大作を翻訳したもの。事典という体裁を取っていますが、読み物としても面白い作品




 斉田博さんは1978年に創刊された『星の手帖』創刊号から1982年の17号まで、途中Vol.11がお休みとなりましたが『星を近づけた人びと』の続編ともいえる「天文意外史」というタイトルで連載を執筆してくれました。のちに『宇宙の挑戦者』という単行本にまとめられました(加筆とともに掲載されなかったエピソードもついかされています)。
  ただ、残念なことにVol.18には「天文意外史」ではなく、斉田さんの訃報が掲載され、氏のご冥福をお祈りするとともに、とても残念に思いました。

 このシリーズを引き継ぐ形で、VOL.31から天文屋・石田五郎さんが「天文史」を担当しています。





Vol.1 特集「現代の宇宙論」 天文意外史1「143年前の"未知との遭遇"」
Vol.2 特集「銀河系」 天文意外史2「プラチナで望遠鏡を作れ」
Vol.3 特集「天文学者」 天文意外史3「悲劇の日食観測」
Vol.4 特集「太陽系」 天文意外史4「断頭台に消えたバイイ」
Vol.5 特集「天体写真」 天文意外史5「マリアとジョージの恋」
Vol.6 特集「日本の天文学者」 天文意外史6「チコ・ブラエの鼻」
Vol.7 特集「小型望遠鏡」 天文意外史7「まぼろしの彗星1921e」
Vol.8 特集「天文学最前線」 天文意外史8「大発明!彗星自動発見機」
Vol.9 特集「自作望遠鏡」 天文意外史9「片腕の魔術師・シュミット」
Vol.10 特集「天文基礎知識」 天文意外史10「彗星発見に情熱を燃やしたスイフト」

Vol.12 特集「大口径自作反射望遠鏡」

天文意外史11「巨人望遠鏡の影に」
Vol.13 特集「入門天体写真」 天文意外史12「ハーシェル 天王星発見の舞台裏」
Vol.14 特集「新星」 天文意外史13「近眼の鬼才 ケプラー」
Vol.15 特集「太陽」 天文意外史14「望遠鏡の発明前後」
Vol.16 特集「ハレー彗星」 天文意外史15「ツィオルコフスキーの復活」
Vol.17 特集「夏の星雲・星団観測」 天文意外史16「メルボルンのクックの家」




宇宙の挑戦者
 この本は、季刊誌『星の手帖』に連載されていた「天文意外史」を加筆し、掲載されなかったエピソードを加えたものです。
 
チコ・ブラエ(天文意外史6)
近眼の鬼才ケプラー(天文意外史13)
肉眼対望遠鏡、世紀の対決
プラチナで望遠鏡を作れ(天文意外史2)
断頭台に消えたバイイ(天文意外史4)
月人デッチあげ事件始末記(天文意外史1)
海王星発見のかげに
巨人望遠鏡のかげに(天文意外史11)
マリアとジョージの恋(天文意外史5)
彗星発見に情熱を燃やしたスイフト(天文意外史10)
大発明!彗星自動発見機(天文意外史8)
片腕の魔術師・シュミット(天文意外史9)
彗星クライドと呼ばれた男
悲劇の日食観測(天文意外史3)
まぼろしの彗星1921e(天文意外史7)
ヘールの夢
ハーシェル 天王星発見の舞台裏(天文意外史12)

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