ウィンダム・ヒルの掲示板

Photo by Toshiharu Minagawa.


WH-1033
ISLANDS / Scott Cossu

Windham Hill Records, 1985

Produced by Steven Miller and Scott Cossu.
All Composed by Scott Cossu.

01. Ohana
 Scott Cossu; Piano
Dave Valentin; Flute / Mark Egan; Bass
Danny Gottlieb; Drums / Roger Squitero; Percussion / Steve Baboury; synthesizer

02. Gypsy Dance
Scott Cossu; Piano
Michael Urbanik; Violin / Roger Squitero; Congas, Percussion

03. St. Croix
Scott Cossu; Piano / Tom Varner; French Horn

04. Islands
Scott Cossu; Piano
Dave Valentin; Flute / Roger Squitero; Congas, Percussion

05. Harlequin Messenger
Scott Cossu; Piano
Mark Egan; Bass, 8 String Bass / Danny Gottlieb; Drums
Tom Varner; French Horn / Roger Squitero; Percussion

06. Vashon Poem
Scott Cossu; Piano

07.Oristano Sojourn
Scott Cossu; Piano
Dave Valentin; Flute / Mark Egan; Bass
Danny Gottlieb; Drums / Roger Squitero; Percussion 

08. Fawn
Scott Cossu; Piano
Dave Valentin; Flute / Eugene Friesen; Cello


 ウィンダム・ヒルの抒情派ピアニストという紹介をされることのあるピアニスト、スコット・コッスのレーベル2ndアルバム。最初にこのアルバムを聴いたのが、日本で紹介された1986年まで遡りますが、オープニングのフュージョン系の音を聴いて一瞬戸惑ってしまいました。

 というのも、私がウィンダム・ヒルに求めていた音楽というのはアッカーマンやウィンストンなどのアコースティックなサウンド。コッスが1stで聞かせてくれたようなピアノソロや、民族音楽を髣髴とさせるリズミカルな楽曲もありましたが、そういったシンプルな音楽でした。それが、このアルバムのオープニングで飛び出した、当時流行したジャズ・フュージョンをイメージさせる軽い音楽に「あれ〜 ウィンダム・ヒルもこういう音楽をやるのか〜」というのが第一印象でした。

 あれから数年。

 今ではレーベルが様々な良質の音楽を提供してくれているおかげで、私の「聴かず嫌い」も影を潜め、今やこのコッスの【ISLAND】もしっかりと耳を傾けて聴くことができるようになりました(笑)。それにエンディングに収録された“Fawn”というレーベルを代表すると言っても過言ではない名曲が収録されていることが、私の中では今や評価の高いアルバムにのし上がっています(笑)。

 確かにトロピカルなイメージが先行してしまいそうなオープニングなのですが、特にこの時期、日本のジメジメとした梅雨をカラッと吹き飛ばしてくれそうな勢いがあります。
 アルバム全体を占めるムードは、タイトルどおりトロピカルな島の人々の賑わいを連想させます。このあたりは、民族音楽収集家でもある一面を覗かせてくれます。

 1、2、4、5、7がアップテンポ、3、6、8が抒情楽章。軽快なリズムで踊り続け(踊らされ?)、火照った体をひんやりと冷やしてくれる効果を持つ、フルートやホルンなどのデュオによる対比が美しいアルバムです。この構成はウィンダム・ヒルならではで、しかも抒情楽章がことのほか美しいのです。

プロデュースは以下の名盤を制作しているスティーヴン・ミラー

〜ウィンダム・ヒル〜
AERIAL BOUNDARIES / Michael Hedges
PAST LIGHT / William Ackerman
UNACCOUTABLE EFFECT / Liz Story
SOUTHERN EXPOSURE / Alex DeGrassi
VAPOR DRAWINGS / Mark Isham
MONTREUX / Montreux
EVENING WITH WINDHAM HILL

〜ウィンダム・ヒル傘下のレーベル(Hip Pocket、High Street etc.)〜
TEMPORARY ROAD / John Gorga
STICKMAN / Andy Narrell
MOSAIC / Mark Eagan
PORTRAIT OF A PLAYER / Billy Childs
HEARTS AND NUMBERS / Michael Brecker& Don Grolnick


01. Ohana
 広がりのあるスケール感と爽快な音。いかにも南国の爽やかでトロピカルな雰囲気を持ち合わせた滑り出し。中間からピアノとデイヴ・ヴァレンティンのフルートの掛け合いに、マーク・イーガンのフレットレスが絡んで疾走し、どんどんスケール感を増しててゆきます。

02. Gypsy Dance
 オープニングはご機嫌なピアノソロに始まり、その後でマイケル・ウルバニアクのヴァイオリンが自由に奏で、途中ピアノとのユニゾンとなって軽快に絡み合います。

03. St. Croix
 トム・ヴァーナーの大らかでのびやかなホルンのメロディ。それを引き立てるようなピアノのきらびやかな伴奏は、まるで深い森を流れる小川の水しぶきのようです。セント・クロワとはセント・クルーズ島のことですが、まだ行ったことのない島でさえ、こういった叙情性溢れる曲を聴くと、眼前にその大自然が姿を現してきそうです。

04. Islands
 フルートの軽快なリズム、ピアノとのユニゾン。コンガのパーカッション。こういった曲はライヴで体験すると必ずやノッテしまうしまうタイプの曲で、インプロゼーションが絶対に楽しいはず。アルバムタイトルトラックにもなったように、この曲のレコーディングはスタジオライブの一発録りではないでしょうか。デイヴ・ヴァレンも自らの声を発して凄いノリよう。

05. Harlequin Messenger
 ピアノソロで始まるメロディアスなタッチが気持ち良い。後半でフレットレス・ベースが被さり、がらりと曲の表情が変わります。

06. Vashon Poem
 このアルバムで唯一のピアノソロ作品。高原の霧を思わせるようなひんやりとしたタッチのフレーズ。

07.Oristano Sojourn
 フルートが主役の軽快な曲で、途中コッスのピアノが鳴りを潜めてしまうほど。 

08. Fawn
 ピアノとフルートのデュオ。クロード・ドビュッシーやジャン・クラなど、フランス印象派のような絵画的な雰囲気を醸し出しています。後半にユージン・フリーゼンのチェロが朗々とした歌を奏でますが、この共演がきっかけで、次作【REUNION】へと発展します。この“Fawn”に魅了された方は、ぜひ【REUNION】も!


 このアルバムは、ニュー・ヨークのスカイライン・スタジオで1984年の3月から4月に掛けてレコーディングされました。そのため、地元ミュージシャンとしてニュー・ヨーカーが集まり、当時のウィンダム・ヒルにしては珍しくセッション・ミュージシャンが多数参加し、今までにない、言い換えるとスコット・コッスの多彩な音楽が繰り広げられることになりました。

〜Discography〜
STILL MOMENTS (Music Is Medicine, 1980)
WIND DANCE (Windham Hill, 1981)
SPIRALS (First American, 1982)
ISLANDS (Windham Hill, 1984)
REUNION (Windham Hill, 1985)
SHE DESCRIBES INFINITY (Windham Hill, 1987)
SWITCHBACK(Windham Hill, 1989)
STAINED GLASS MEMORIES (Windham Hill, 1992)
WHEN SPIRITS FLY(Miramar, 1998)
EMERALD PATHWAY(Miramar, 2002)
WHEN SPIRITS FLY...AGAIN(Miramar, 2004)



ISLANDS / Scott Cossu Trio

01. Vashon Poem
02. Sanibel, Sweet Rose
03. Oristano
04. Islands
05. Triumph
06. Moira Fawn
07. Ohana

All compositions by Scott Cossu.

QUANTUM, 2007



 【ISLANDS】がリリースされた後、ギターのヴァン・マナカス、ドラマーのエディ・ウッドとトリオでジャズ・フェスティバルに出演しました。

 このアルバムに収録された曲を中心にライヴを繰り広げ、その時の模様を伝えるビデオが何を今さらながら、という気がしないでもないのですが(ファンにとっては、そりゃ嬉しい!)、リリースされています。ただし、リージョンが日本対応ではないので、再生時に注意が必要となります。