ウィンダム・ヒルの掲示板


COLORS IN THE DIARY

Produced by Will Ackerman.
Co-Produced by Marika Takeuchi and Andreas Bjorck.
Recorded, Mixing by Tom Eaton.
Recorded at Imaginary Road Studio.

except;
Violin recorded at WGBH Studios by Antonio Oliart.

All music2016 by Marika Takeuchi

Marika Takeuchi

   
   

♪ ♪ ♪

01. Frozen Lake
Marika Takeuchi ; Piano / Eugene Friesen ; Cello/ Si-jing Huang; Violin

02. Green Field
Marika Takeuchi ; Piano / Eugene Friesen ; Cello/ Si-jing Huang; Violin

03. Blue Falls
Marika Takeuchi ; Piano

04. White Mountains
Marika Takeuchi ; Piano / Eugene Friesen ; Cello/ Si-jing Huang; Violin

05. Gray Clouds
Marika Takeuchi ; Piano

06. Remembrance
Marika Takeuchi ; Piano / Eugene Friesen ; Cello

07. Ocean Wind
Marika Takeuchi ; Piano / Andreas Bjorck ; Synth programming

08. Nostalgia
Marika Takeuchi ; Piano

09. Into The Storm
Marika Takeuchi ; Piano / Eugene Friesen ; Cello

10. Sparkling Sky
Marika Takeuchi ; Piano

11. Colorful Mind
Marika Takeuchi ; Piano / Eugene Friesen ; Cello/ Si-jing Huang; Violin

12. Morning Light
Marika Takeuchi ; Piano

 

 

Photo by Marika Takeuchi.

 今年はウィリアム・アッカーマンのソロ・アルバム『IN SEARCH OF THE TURTLE'S NAVEL』がリリースされてから、40年が経ちます。つまりはウィンダム・ヒルが発足して40周年。

 そして4枚目のアルバムとなる、竹内まりかさんのニューアルバムは、ウィルやレーベルにとって節目となる年に、プロデュースがウィリアム・アッカーマン、そして彼のイマジナリー・ロード・スタジオで行われました。

 昨年、一時帰国してくれた夏にお会いすることができ、その際
「ボストンに戻ってからすぐに、ウィルのスタジオでニュー・アルバムのレコーディングをします」
 と聞いていたから、今か今かと首を長くして楽しみにしていた作品集は、これまでにはありませんでした。
そして、その新譜を2月のコンサート終了後の会場で、直接ご本人からの手渡しで受け取ることができました。
 わずか半年ほど前にお会いして(わざわざ私の職場まで、ご夫婦でお越しいただいた)、今回のライヴでの再会時に、あの時はまだ製作前だったニュー・アルバムを受け取ることができて非常に嬉しく思います。
しかも世界に先駆けての先行販売だし!(公式には4月でした)。

 Leonid Afremovによって描かれたジャケットの色彩は、自然界に存在する、すべての色を配色したかのような、カラフルな色彩に溢れたジャケット。あらゆる季節に存在している色です。そんな色彩は、まりかさんの日常における心象風景の1ページでありながら、リスナーにとっても、記憶の中に編みこまれる一枚の絵として、一葉の日記の中に、忘れかけた記憶の中に蘇らせてくれる野ではないでしょうか。
 今回のアルバムに収められた12曲は、四季を通じて、これからも、あらゆるシーンで聴くことになるだろうと思います。

 主役のピアノという楽器は、どちらかと言えば寒色のイメージ(ピアノの白い鍵盤から視覚的に感じる私の感覚)があり、純白で何色にも染まっていない、雪のヒンヤリとした無垢の感覚があります。サティの「白い音楽」と同じ感覚ですが、キャンバスが白いと、音のパレットをうまく表現できれば、どんな楽器よりも色彩豊かな音楽を生み出せるのではないでしょうか? 実は、そのことをまりかさんの新作に期待していたのです。

 今まで発表されて来たアルバムからも「音を色で感じる」と話していたぐらいですから、期待を裏切ることはないと思っていました。そして、今回のアルバムでも期待以上の色彩(ハーモニー)に溢れていて、ウィルのプロデュースした作品の中でも、一、二を争うぐらいのクオリティの高い作品集となっていると思います。かつてウィンダム・ヒルからリリースされた名盤たちと、肩を並べるぐらいのサウンド・スケッチ。

「音楽が風景になり、風景が音楽になる」


Photo by Marika Takeuchi.
 レコーディングはスタジオで楽器ごとに行い、トムがミックスして編んでいく… あたかも顔を付き合わせた形でセッションをしたかのような臨場感にあふれていますが、最近のレコーディングはアーティストのスケジュールにも左右されて、「せーの」で録ることはまれになって来たようです(デフ・レパードがそんな方法で何十年もやって来たとインタビューで読んだことはあります)。
 そんなことをまったく意識させることなく、なめらかで自然なハーモニーを奏でてくれる。それは先日のライヴにてニューアルバムの大半を目の前で体験していたからかもしれませんが、この臨場感はイマジナリー・ロード・スタジオの持つ特性なのかもしれません。
 
 オープニングの♪Frozenは、ライヴでも強く印象に残った1曲で、雪山を黙々と歩いているとき「ふっ」我に返る瞬間に襲われる、大自然の息吹と自然の音(声)を聞く瞬間を垣間見たような感覚になった曲でした。3つの楽器の残響が、すうっと空気の中に吸い込まれ、静寂が訪れた瞬間、あの黙々と歩く雪山登山の最中に、ふっと我に返ったときに感じる、自分を取り巻く大自然の息吹と懐の奥深さと、まったく同じものを感じたのです(これ、大好きなんです)。その感覚に襲われたとき、思わず目頭に熱いものがこみ上げてきました。
「間」の中に音が入っているわけでもなく、日常の音が紛れ込んでくるのですが、今回のライブでは、誰もが音を立てずに、目の前の音楽に体を預け耳を傾けている。この張りつめた緊張感は圧倒的でした。
 続く♪Green Fieldは一転、単色の白い世界からがらりと色彩豊かなイントロで始まります。同じピアノだというのに、こうも違った印象を受けるのは、作品に含まれる色彩豊かなパレットの筆さばきが、言い換えるなら音の組み合わせ方にイメージを付けるのが得意なのでしょう。そして、そうした音楽が好きなリスナーにとって、このアルバムは過去に製作されたウィンダム・ヒルなどと同じ感触を得ると思います。
 ♪Blue Falls 山間の泉から湧き出す清涼な清水も、やがて大きな流れへと変化する。それとも人の成長の表しているのでしょうか。だんだんと力強くなるパッセージから勇気と力が湧いてくるようです。
 ♪White Mountains ノルウェーの雪山でのクロスカントリー体験を元に作曲されたという白い曲。とはいっても、白い世界だけに自然の持つ懐の温かさや厳しさなどを静かに含んだ世界。ここでは純粋に雪山遊びの楽しさを味わうまりかさんのウキウキとした気持ちが伝わってくるような展開に、リスナーも次の季節を待つ冬ならではの弾むような期待感を感じるかもしれません。
 ♪Gray Clouds 日常の、なんの変哲もない時間とともに流れていく青い空ばかりが空じゃない。空の表情は青空ばかりではなく、どんよりとした曇り空だって立派な空。ほとんどの人は曇り空に目を向けることはないと思いますが、クラウド・ウオッチャーとしての私にとっては違います(笑)。まりかさんとも共通しているのか、ここではどんよりとした雲の表情を描いてくれました。曲の配置が絶妙で、次に来る名曲(といいたい!)に繋ぐ良いアクセントとなってくれているようです。
 次の♪Remenbranceは、まりかさんの楽曲中、最高位に置かれて良い名曲ではないでしょうか? それを、あのユージン・フリーゼンが弾いている!
 どんな人にとっても大切な人の思い出は美しいものだと思います。その思い出は幾つぐらい思い出せますか?日記とか写真とか、自分とのかかわりのある品々を目の前にすれば、いろいろと思い出すことができるでしょう。しかし、この曲に耳を傾けると、その時の匂いや空気とか、ぬくもりまでが蘇ってくるようです。 8月のライヴで初めて聴かせてもらって依頼、この曲を聴くたびに父の面影を身近に感じています(今まではKeith Richardsの♪Sleep Tonightだった)。 
 ♪Ocean Wind どんなに海が凪いでいようとも、浜辺に立てば微かな風を感じます。地球誕生以来、荒々しさを見せつける反面、生命を育んできた懐でもあり、この曲のようにふっとした優しい表情を見せることがあります。ピアノと、共同プロデュースにも参加しているご主人のプログラミングによる、ピアノとシンセのシンプルなコラボ。
 ♪Nostalgia どんなことでさえ、一歩離れたところか見直してみると、客観的になれる分、良いところも悪いところも見えてきます。この曲はボストンへ移り住んだまりかさんが日本への様々な思いを描いた一片。古来から日本人が親しんできた祭り囃子のようなリズムがあり、全12曲中、異色な雰囲気を持っています。遠く幼いころの夏祭りの情景が浮かんでは消えてゆくよう。日本を遠く離れていても、心は日本人という証拠でしょう。
 ♪Into the Strom イマジナリー・ロード・スタジオで、数多くのミュージシャンたちのセッションに客演しているユージン・フリーゼンの演奏は、そのほとんどが彼の得意とするインプロビゼーションによる即興。しかし、このアルバムでは、作曲家としてのまりかさんの強い要望でレコーディングされました。そして、この1曲だけがユージンの即興でレコーディングされています。いかにもユージンらしいパッションが盛り込まれ、まりかさんの楽曲と融合して歌い上げています。
 ♪Sparkling Sky ピアノソロによる静かな詩情溢れる小品。こんなに優しいタッチの曲を聴きながら星空を眺めたらどんな気持ちで星空とつながるでしょうか
 ♪Colorful Mind 教え子たちの、無邪気なピアノあそびからヒントを得たという小品。聴いていてこちらまで童心に返った無邪気な心持ちになってしまう、そんな1曲。
 ♪Morning Light 朝の優しい陽光に包まれて、微風がそっとカーテンに触れ新しい空気を入れ替える。12篇のカラフルな情景は静かに幕を閉じ、悠久の自然がそうするように再び繰り返す…。

 このアルバムに描かれている音の風景は、聞くたびに新しい情景を生みだして、リスナーにとっても色とりどりの思い出となるでしょう。
Photo by Marika Takeuchi.