Damon Buxtonの編んだ『
ROADS』にまりかさんの名前を見つけたのは2年前。その間、ニューアルバムのリリースや、次作をウィルのプロデュースで予定しているといったやり取りをしていましたが、まさかこんなにも早くご本人の演奏が生で聴ける日が来るとは思っても見ませんでした。ウィンダム・ヒル系の音楽を聴きに行くのは、実に13年ぶり(2006年6月3日のジョージ・ウィンストン以来っぽい)だったから、ワクワクしながら六本木へ。
木目調のヤマハのピアノが部屋の一番奥に置かれた『SOFTWIND』、小林克也似のマスターが席を案内してくれました。店内は20席ほど。
「たぶんお母さんだな」と思わせる女性が前の方にいます。パッと見た時は「あれ?まさかご本人(なんと思ったかは秘密)」と思ってしまうほどそっくり。しばらくして「おそらく旦那さんだな」と思わせる男性がカメラを手に入ってきました。
SOLD OUTとなった店内の5人がけのカウンターで、あれこれ眺めながら待つこと15分、まりかさんたちがすぐ後を通り抜けて登場し、MCなく3曲演奏。ピアノの竹内まりかさん、ヴァイオリンの中島優紀さん、ヴィオラの糸永衣里さんの息のあったアンサンブルが始まりました。
日本でのライブは4年ぶりだということでしたが、レコーディングとは異なるアレンジは、よりシンプルに自然の風景や、自分の中に描かれる映像が見えてくるようでした。
いつも以上にまりかさんの楽曲が心にしみ込んできたのは、遥か海を越えて、この小さな同じ空間で演奏されている瞬間に立ち会って肌で直接感じるからでしょうか? それだけではないと思います。同じ日本人という土壌も音楽の感じ方に関係あるのでしょうが、渡米して、そこで吸収した自然観や人々とのふれあいと、それを表現する豊かなサウンドが、過去の自分を見せてくれたり、忘れていた記憶などを鮮明に思い出させてくれるからです。
今回はピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラという、いわゆるクラシックの世界で言うところのトリオ編成でしたが、華のあるヴァイオリンよりも、潤いのあるヴィオラにまかせるパートが多く、それが心の琴線に触れるのかもしれない、と思いました。
たとえばドヴォルザークなんかの郷愁のある旋律は、ほとんどヴィオラに歌わせているし、そうした効果が中音域にはあるのではないでしょうか? それを意識的にパート分けして作曲しているのであれば、今後も、もっと素敵なメロディを耳にすることができると思います。
帰国後、さっそくバーモントにあるImaginary Road Studioで、ウィル・アッカーマンのプロデュース、まりかさんのご主人であるアンドレアス・ビョークがエンジニアを務める『COLORS IN THE DIARY』のレコーディングが始まるとのこと。ますます、そのアルバムの完成が楽しみでなりませんが、そのアルバムから新曲が6曲も披露してくれました。これサプライズでした。
時折MCを挟みつつ、曲の紹介をしてくれましたが、まりかさんは音に色を感じ、色に音を感じると説明してくれました。確かスクリャービンやリムスキー・コルサコフなんかも音(調性)と色の関係を持っていた作曲している、ということに興味を持っていたので非常に興味深いMCでした。
この時に演奏されたのは♪Remembalanceという新曲。私には穏やかな緑色、そして暖かいオレンジに変色していきましたが、果たしてどうでしょうか?今度あったら聴いてみようと思います(→オレンジ、暖色系と言ってました)。
アットホームな雰囲気があって、楽しく美しい音楽に触れたひとときでした(わずか1時間だったのが惜しかったのですが、アンコールも1曲、♪Underwaterを再演してくれました)。