RAIN STORIES -2014-
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01.Rain in the Park 02.Misty Night 03.Tears 04.Lost in Darkness 05.Alone in Dream 07.Koyo 08.Memories 09.Snowflake 10.After the Rain 11.Into the Sky |
2014年の秋は短いシーズンでした。そろそろ寒さも厳しくなり、冬の訪れが目に見えてやって来た頃。まりかさんのニューアルバムは雨脚の強い日に届きました。偶然と言えば偶然、とはいえあまりにもピッタリな日に届いたサウンドスケッチ。まりかさんの存在を知ったのはDamonのコンピレーション『ROADS』でしたが、そこから立て続けにまりかさんの作品を聴かせていただき、改めてスケッチのうまい作曲家だなぁと思っています。 雨だれを思わせるピアノの調べから始まる♪Rain in the Parkは、あちこちの雨情のスケッチではなく、公園での一日の情景ではないでしょうか。身近な公園の、何気ない風景。朝から雨が降っていたという、いつもの雨の風景から始まる。そこでは公園が今まで見てきたこと、ここにやってきた人たちの記憶が、チェロ、クラリネット、オーボエなどのソロで回想されていくのです。たえず降り注ぐ雨はしずくとなって、木々を伝わり、あるいはブランコや鉄棒などから滴り落ちてゆく。 霧をテーマにした♪Misty Nightは、前作の♪Morning Mistの続編にあたるのでしょうか?朝霧は清々しくもありますが、夜の霧は、その奥に潜む「何か」を感じてしまいます。アニミズムという世界… もっともそれを強く感じたのはフランスのドビュッシーでした。同じテーマでも作曲者の視点や環境が変わることで、このなんとも捕えがたい霧の運動を聴くことができるのです。まりかさんのそれは健康的ではっきりとした粒々が際立つような感じで、ドビュッシーのそれは、不健康でモヤモヤしていて、一度捕まると中毒になりかねない危うさがあります。 ♪Lost in Darknessはミニマル的要素が強く終わりのない曲。ピアノソロ。 ♪Rain in the Parkのメロディが回想されるAlone in Dreams。一遍一遍のサウンドスケッチと言いながらも、こうした構成の曲が中間にあると、アルバムの流れというものを強く意識できそうです。 Tearsに通じる♪Memories、天から降ってくる冬の使者が、まるでそれを喜んで走り回る子供のように嬉々とした表情に描かれ、一片のおとぎ話のような♪Snowflake… どれも短い小品ながら聴いているだけで情景が浮かんでくるメロディやリズムが心地よく通り過ぎていきます。 雨の降り始めから始まった『RAIN STORIES』も、♪After the Rainで雨後のスケッチが描かれるところまでやってきました。公園の雨もそろそろ雨雲が去り、一筋の光が空のあちこちから漏れています。虹の予感もします。ストリングスが空の彼方に去って行く雨雲のように、クラリネットやフルートといった音色はそれを送る風でしょうか?お天気雨のようなピアノのフレーズ。もう少しで晴れ上がりそうです。 ラストの♪Into the Skyでは、雨も上がって「雨上がりの青空」が大きく広がってくる予感がします。もう少ししたら虹もかかるのではないでしょうか?真っ青な空に向かって上昇するような、アルバムの中では最も活発な曲です。雨雲が去って、気持ち晴れ晴れといったところでしょう。天候と、自分の気持ちを重ね合わせて聴けば、きっと爽やかな解放感に浸れると思います。 今回からはセルフ・プロデュースであることをクレジットし、Andreas Bjørckの協力を得て、♪Koyoのように作曲のみに専念するという、今までとは違った試みで臨んだ3rdアルバムとなりました。そしてアルバム構成も全編に関わるストーリーを持たせるという内容になっています。ピアノ好きや雨好きはもちろん、雨嫌いの方もこのアルバムを聴くべきでしょう。なぜなら、今まで雨に抱いていたイメージが一新するでしょうから。 |
以下MRG Recordingsに掲載されているプロフィールを転載 |
|Marika Takeuchi|
|IMPRESSIONS|NIGHT DREAM|COLORS IN THE DIARY|
アルバムのインスピレーションとなった写真を、まりかさんから提供していただきました。 まりかさん、いつもありがとうございます。 |