RAIN STORIES -2014-

Produced by Marika Takeuchi & Andreas Bjørck.
Mixing, Mastering Engineer: Andreas Bjørck.
All Compositions by Marika Takeuchi.

Marika Takeuchi

 


♪ ♪ ♪

01.Rain in the Park
Marika Takeuchi ; Piano
Yuji Kano; Flute / Miri Kudo; Oboe / Juan Ruiz; Clarinet
Jesse Irons, Emily Dahl, Natalie Calmai ; 1st Violin
Asuka Usui, Lilit Hurtunitan; 2nd Violin
Jason Fisher; Viola
Jacques lee Wood, Sassan Highighi; Cello

02.Misty Night
Marika Takeuchi ;Piano

03.Tears
Marika Takeuchi ; Piano
Yuji Kano; Flute / Miri Kudo; Oboe / Juan Ruiz; Clarinet
Jesse Irons, Emily Dahl, Natalie Calmai ; 1st Violin
Asuka Usui, Lilit Hurtunitan; 2nd Violin
Jason Fisher; Viola
Jacques lee Wood, Sassan Highighi; Cello

04.Lost in Darkness
Marika Takeuchi ;Piano

05.Alone in Dream
Marika Takeuchi ; PianoMarika Takeuchi ; Piano
Yuji Kano; Flute / Miri Kudo; Oboe / Juan Ruiz; Clarinet
Jesse Irons, Emily Dahl, Natalie Calmai ; 1st Violin
Asuka Usui, Lilit Hurtunitan; 2nd Violin
Jason Fisher; Viola
Jacques lee Wood, Sassan Highighi; Cello


06.Raindrops
Marika Takeuchi ;Piano

07.Koyo
Erhu: Steve Chieh-Wei Chiu

Yuji Kano; Flute / Miri Kudo; Oboe / Juan Ruiz; Clarinet
Jesse Irons, Emily Dahl, Natalie Calmai ; 1st Violin
Asuka Usui, Lilit Hurtunitan; 2nd Violin
Jason Fisher; Viola
Jacques lee Wood, Sassan Highighi; Cello

08.Memories
Marika Takeuchi ;Piano

09.Snowflake
Marika Takeuchi ; Piano
Yuji Kano; Flute / Miri Kudo; Oboe / Juan Ruiz; Clarinet
Jesse Irons, Emily Dahl, Natalie Calmai ; 1st Violin
Asuka Usui, Lilit Hurtunitan; 2nd Violin
Jason Fisher; Viola
Jacques lee Wood, Sassan Highighi; Cello

10.After the Rain
Marika Takeuchi ;Piano

11.Into the Sky
Marika Takeuchi ; Piano
Yuji Kano; Flute / Miri Kudo; Oboe / Juan Ruiz; Clarinet
Jesse Irons, Emily Dahl, Natalie Calmai ; 1st Violin
Asuka Usui, Lilit Hurtunitan; 2nd Violin
Jason Fisher; Viola
Jacques lee Wood, Sassan Highighi; Cello


 

 2014年の秋は短いシーズンでした。そろそろ寒さも厳しくなり、冬の訪れが目に見えてやって来た頃。まりかさんのニューアルバムは雨脚の強い日に届きました。偶然と言えば偶然、とはいえあまりにもピッタリな日に届いたサウンドスケッチ。まりかさんの存在を知ったのはDamonのコンピレーション『ROADS』でしたが、そこから立て続けにまりかさんの作品を聴かせていただき、改めてスケッチのうまい作曲家だなぁと思っています。

 今回のアルバムも私の趣味にピッタリ。雨男である私は、それこそ同業者(星のソムリエ連中)からは白い目で見られていますが、雨ほど自然の景観を作り出す芸術家はいないと思っているので、雨は大好きです。旅先でも、ガイドブックでみられるような景色を見ないといけない、なんて使命はみじんもないから、雨が降ったら雨の景色を楽しめばいいし、しかもガイドブックでは見ることのできない「普段着」の旅先を楽しめるから、逆に雨降ってラッキー!などと考える天邪鬼なのです。

 アルバムとは関係ない話から入ってしまいましたが、このニューアルバムのコンセプトは雨の公園に始まって、雨が去って行くまでの、何気ない日常の雨の風景を描いてくれています。
科学的に見れば大気の循環システムであり、大地からの恵みであり、私たちの生活に変化をもたらせてくれる大自然の営みなのです。

 自然の景観を作り出すアーティストである雨を、このアルバムではどんなスケッチとして聴かせてくれるでしょうか?

 雨というと暗ーい、陰鬱としたイメージがあるかもしれません。確かにそうです。しかし、視点を変えてみることによって、光の加減は変わってくるし、キラキラと光を屈折させて、まるで万華鏡のような光芒を見せてくれることもあります。何より、晴天に見せる景色よりも、ずっと表情が豊かになるのです(←雨好きの戯言か?)。そうした情景を、まりかさんのピアノは、一曲一曲のサウンドスケッチとして雨の物語としてを描いてくれているのです。

 雨だれを思わせるピアノの調べから始まる♪Rain in the Parkは、あちこちの雨情のスケッチではなく、公園での一日の情景ではないでしょうか。身近な公園の、何気ない風景。朝から雨が降っていたという、いつもの雨の風景から始まる。そこでは公園が今まで見てきたこと、ここにやってきた人たちの記憶が、チェロ、クラリネット、オーボエなどのソロで回想されていくのです。たえず降り注ぐ雨はしずくとなって、木々を伝わり、あるいはブランコや鉄棒などから滴り落ちてゆく。

 私は、雨の降る景色を自分の部屋から眺めると、今まで自分が訪れたことのある旅先や風景のことを考えてしまいます。そして、今、まさにこの瞬間にも、葉ずえにたまった雨のしずくがこらえきれずに、レントよりも速く一滴一滴と足元に戻っていく姿はどんなだろうと考えるのです。
このアルバムを聴くと様々な雨の日の思い出が、ひとしきり思い出されたあと、最後は誰もいない、独りぼっちになった公園の姿が浮かんでは消える光景を思い起こさせてくれました。

 霧をテーマにした♪Misty Nightは、前作の♪Morning Mistの続編にあたるのでしょうか?朝霧は清々しくもありますが、夜の霧は、その奥に潜む「何か」を感じてしまいます。アニミズムという世界… もっともそれを強く感じたのはフランスのドビュッシーでした。同じテーマでも作曲者の視点や環境が変わることで、このなんとも捕えがたい霧の運動を聴くことができるのです。まりかさんのそれは健康的ではっきりとした粒々が際立つような感じで、ドビュッシーのそれは、不健康でモヤモヤしていて、一度捕まると中毒になりかねない危うさがあります。

♪Tearsというタイトルを目にしたとき「 確かに」と思いました。良く雨模様の空をさして「空が悲しんでいる」とかいいますからね。ペルセウス座流星群も別名を「聖ローレンスの涙」なんていいます。しかし、ここでまりかさんが選んだのは純粋に人の目から零れ落ちる涙でしょう。公園は悲しい出来事も見てきたはずですから。シンプルで短い曲ながら見えてくる涙の風景はたくさんあったことでしょう。

♪Lost in Darknessはミニマル的要素が強く終わりのない曲。ピアノソロ。

Rain in the Parkのメロディが回想されるAlone in Dreams。一遍一遍のサウンドスケッチと言いながらも、こうした構成の曲が中間にあると、アルバムの流れというものを強く意識できそうです。

「アジアの美しさを描いた曲」とコメントをいただいた♪Koyoでは、中国の伝統楽器である二胡(Erhu)とチェロという東と西の弦楽器の饗宴が醸し出すハーモニーを、しみじみと味わうことができます。後者は平均律の中で調律されたなじみの音。二胡はここ数年、コマーシャルなどにも登場する中国の伝統楽器で、日本でも演奏するアーティストが多くなってきたようです。そうした東西の微妙な調律のズレを味わうとともに、何やら懐かしい情景が目の前に広がってくるようです。
 なお、この曲は作曲のみ(たしかにピアノの音が聞こえてきません)。私には近所の公園を離れ、遠い記憶の中にしか存在しない、幼少のころの記憶を思い出す本能に刺激を与えてもらっているようです。アルバムの中で異彩を放っています。

Tearsに通じる♪Memories天から降ってくる冬の使者が、まるでそれを喜んで走り回る子供のように嬉々とした表情に描かれ、一片のおとぎ話のような♪Snowflake… どれも短い小品ながら聴いているだけで情景が浮かんでくるメロディやリズムが心地よく通り過ぎていきます。

雨の降り始めから始まった『RAIN STORIES』も、♪After the Rainで雨後のスケッチが描かれるところまでやってきました。公園の雨もそろそろ雨雲が去り、一筋の光が空のあちこちから漏れています。虹の予感もします。ストリングスが空の彼方に去って行く雨雲のように、クラリネットやフルートといった音色はそれを送る風でしょうか?お天気雨のようなピアノのフレーズ。もう少しで晴れ上がりそうです。

ラストの♪Into the Skyでは、雨も上がって「雨上がりの青空」が大きく広がってくる予感がします。もう少ししたら虹もかかるのではないでしょうか?真っ青な空に向かって上昇するような、アルバムの中では最も活発な曲です。雨雲が去って、気持ち晴れ晴れといったところでしょう。天候と、自分の気持ちを重ね合わせて聴けば、きっと爽やかな解放感に浸れると思います。

 今回からはセルフ・プロデュースであることをクレジットし、Andreas Bjørckの協力を得て、♪Koyoのように作曲のみに専念するという、今までとは違った試みで臨んだ3rdアルバムとなりました。そしてアルバム構成も全編に関わるストーリーを持たせるという内容になっています。ピアノ好きや雨好きはもちろん、雨嫌いの方もこのアルバムを聴くべきでしょう。なぜなら、今まで雨に抱いていたイメージが一新するでしょうから。

以下MRG Recordingsに掲載されているプロフィールを転載

 日本出身の作曲家、ピアニスト。三歳よりクラシックピアノを始め、その他幼少期にはバイオリンとホルンを演奏。尚美ミュージックカレッジにて作曲を勉強し、在学中からNHK−FMや日本放送、ユニバーサルミュージックなどに楽曲提供。クラシック音楽と映画音楽に強い影響を受けつつ、New Ageやイージーリスニングにも強い関心を示し独自のサウンドを探求し続けている。
 2009年に渡米、バークリー音楽院にて映画音楽作曲を専攻し、これまでにノルウェーの風景写真家TSO Photographyの「The Arctic Light」や貧しい子供達のための教育プログラムHorizonをテーマにした「Horizons: 50 years」、数々のフィルムフェスティバルでベストファンタジー賞を受賞している「Finding Ambrosia」など数々のショートフィルムの作曲を手がけている。
 2011年にはデビューアルバム「Night Dream」をリリースし、同年にリリースしたシングル「The Arctic Light」はこれまでにオーストラリアのCurtain UniversityのTVコマーシャル「Make Tomorrow Better」やノルウェーのオフィシャル観光サイト「Visit Norway」、その他ショートフィルムや広告に多様使用されている。
 2012年にバークリーを首席で卒業した後もボストンに在住し、作曲家、編曲家、ピアニストとして幅広く活動中。去年夏にリリースした2ndアルバムImpressionsは10th Zone Music Reporter music AwardsにてBestNeo-Classical Albumにノミネートされるなど高い評価を受けている。今年2014年11月11日には、ピアノソロから室内楽、中国の伝統楽器二胡を使った斬新なオーケストラ曲まで幅広い作品を収めた最新アルバムRain Storiesをリリースした。」

 

Marika Takeuchi
IMPRESSIONSNIGHT DREAMCOLORS IN THE DIARY


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アルバムのインスピレーションとなった写真を、まりかさんから提供していただきました。

まりかさん、いつもありがとうございます。