星と天界の音楽と(星のソムリエのブログ)

遠野物語の周辺/水野葉舟/横山茂雄編
(株式会社国書刊行会/2001)
 著者である水野葉舟(1883-1947)は、遠野物語の作者である柳田国男に素材提供者となる佐々木鏡石(1886-1933)を引き合わせた事で知られています。「遠野物語」にまつわる事情を仲人である水野の目から見たもうひとつの「遠野物語」といって良いでしょうか。また、個人的に興味のあるところは、英文学者である野尻抱影(1885-1977)とも新興があったこと。あえて肩書きを英文学者としましたが、私を星座の世界へ連れて行ってくれる方。そんな星の世界から入った野尻抱影が、ここ遠野物語でつながっているとは面白いと思います。自分の興味の対象が実はつながっていたということで。なお、野尻抱影の『星三百六十五日』のなかで、成田に引っ込んだ葉舟氏とのやり取りがあります。


 平成11年に出版された本で、遠野物語に関して綴られているので手にした本です。ザシキワラシが「遠野物語」を通してイメージ化されたといった興味深い前書きから始まり、実は東北地方には「この手の」話が数多く残され、後世まで語り継がれているとのこと。





山深き遠野の里の物語せよ
菊池照雄(梟社/1989)
 遠野物語の魅力に取り憑かれた読者が、この本に辿り着いたとき「読まなきゃ良かった」といった現実を突きつけられるかもしれません(冒頭に紹介されるサムトの婆は、柳田の紹介よりも、ちょっと悲しいかも)。ここには驚きの事実が綴られています。私はこういう類いの本は大好きですが、「物語」と「現実」の差に、「物語」としての「遠野」をしまっておきたかったな、という思いも芽生えたのも事実です。

 新版になって表紙の写真も変わってしまいました。この変化は現在の遠野に吹いている風の影響かもしれませんね。



遠野物語をゆく
菊池照雄(梟社/1991)

 私が遠野を訪れた2年後に出版された遠野のガイドブック。ガイドブックと書くと旅行会社のパンフレットみたいな、軽い気持ちで「行ってみようかな」と思わせてくれるようなイメージがありますが、この書は、できれば『遠野物語』を読み、実際に遠野の地を歩き、遠野の人と同じ生活の空気を吸い、一夜を過ごした人が読むと、まるで何年も遠野の里と深く関わってきた感を強く感じさせてくれるかもしれません。私がそうだったように。




 私が遠野を訪れた2年後に出版された遠野のガイドブック。ガイドブックと書くと旅行会社のパンフレットみたいな、軽い気持ちで「行ってみようかな」と思わせてくれるようなイメージがありますが、この書は、できれば『遠野物語』を読み、実際に遠野の地を歩き、遠野の人と同じ生活の空気を吸い、一夜を過ごした人が読むと、まるで何年も遠野の里と深く関わってきた感を強く感じさせてくれるかもしれません。私がそうだったように。






遠野奇談
佐々木喜善(河出書房/2009/2020)
 遠野といえば、柳田国男の『遠野物語』を指すと言ってもあながち間違いではないかもしれません。私の手元には大和書房から出版された重厚なハードカバーに収められた遠野が全てでした。しかし、それでけでは終わらないのがこの物語。実際に訪れ、その空気を自分の肌で感じることで初めて物語の扉が開ける、そんな思いがします。

 柳田国男はその後、『拾読』などを出版しました。その柳田に遠野物語の説話を誠実に提供した、佐々木喜善の編纂した『遠野奇談』が2009年に出版(上のカバーは左が2009年で右が2020年の新装版)され、また新しい風が吹き込まれたような気がします。
  しかし、柳田に素材を提供した佐々木喜善が、大正時代のあちこちの雑誌に寄稿した文章を、遠野物語研究の第一人者である石井正己氏が編纂したものですが、『遠野物語』の前では色褪せてしまいそうです。 帯には「もう一つの」と書かれていますが、文体が『遠野物語』の拾読と同じ言葉で書かれているので、こぼれ話(実際、話を聞いているにもかかわらず削除しているであろう話もあるはずだし)として読むと、遠野の奥深い世界に踏み込めるような感じがしました。



聴耳草紙
佐々木喜善(ちくま学芸文庫)
 「日本のグリム」と讃えられた佐々木喜善の集大成的な作品。柳田と同じようなことをしているにもかかわらず、ほぼ忘れ去られてしまったような存在は時代のいたずらなのでしょうか?全183話が語られてしますが、遠野物語同様朗読CD(/)も出版され、ファンとしては嬉しい限り。




 『遠野物語』発刊110周年記念にあたり遠野市立博物館で開催された、令和2年度夏季特別展『遠野物語と怪異』に際して作成されたパンフレット。コロナ禍にあったため行くことはできませんでしたが、地元の国立歴史民俗博物館の書籍コーナーにて販売してくれていたので手にすることができました。博物館って、便利!

 

 佐々木喜善の『老媼夜譚』の現代仮名遣い版。これに本の表紙にもなっているザシキワラシに関する民話集。この出版に合わせて先の『遠野奇談』も新装版が出版されました。




 大の「おばけずき」でもあった泉鏡花は、柳田國男、喜多村緑郎、鏑木清方、芥川龍之介、長谷川時雨、水野葉舟、平山蘆江ら、同好の文人墨客名優らと相つどい、夜を徹した「百物語怪談会」に興じることを好んだ。(メーカーより)

柳田国男の「遠野物語」遠野物語を知る、考える本語り部

私の「遠野物語」まんが日本昔ばなし稲生物怪録

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