星と天界の音楽と(星のソムリエのブログ)

 野尻抱影や稲垣足穂がそうだったように、妖怪趣味が高じて、妖怪学なるジャンルの本を読み始めました。よくよく考えてみたれば、私の母校を作った大先生が『妖怪博士』なのです。

 そんな妖怪ものでも、最初に最初に手を出しておきたいのが『稲生物怪録』でしょうか~

 2019年に文庫版『稲生物怪録』(東雅夫編/角川ソフィア)が出版され、手軽に文庫を鞄に放り込んで、電車の中で読み進めて行きましたが、面白い!もしも自分が主人公(平四郎)と同じ立場だったら、たまらんでしょうけど… 2021年には『まんが訳 稲生物怪録 (ちくま新書)』も出版されました。2022年には杉本好伸編による「吉祥院本『稲生物怪録』: 怪異譚の深層への廻廊」が出版されました。あっちこっちで引っ張りだこの作品です(笑)。

  いろいろ調べると絵本にまでなっているということで『平太郎のおばけやしき』も入手。これは絵本とはいっても、デフォルメされた妖怪絵などではなく、古来から伝えられている実際の絵巻を使っての絵本。なので、文庫本では小さな絵も大きくなってみやすくなりました(笑)。ちなみに絵本は14日目まで(怪異は30日間続く)、15日以降は続編『おばけの親玉』として出版予定なんだそうです(2023年現在予定なし)。

 最近、これを題材としたコミック(モノのケものぐらし 稲生物怪録異譚)があることを知りました。今度読んでみよう。
 
 
平田篤が説く稲生物怪録/ 荒俣宏(角川書店)
稲生物怪録絵巻集成/ 杉本好伸編(国書刊行会)
稲生物怪録絵/ 京極夏彦訳・東雅夫編(角川ソフィア文庫)
平太郎のおばけやしき/ (ロクリン社)

 江戸の大学者、平田篤胤(1776-1843)のような人物が、よもやこうしたジャンルに手を出していたなんて意外や意外でした。こうした人物が乗り出したとなると、あやかしといえども、かなりの信憑性を持って研究されたのでは?と彼の解釈が気になって気になって仕方ありません。たんなるお伽噺で終わらせない理由があったんでしょう。

 口絵として紹介されているのは『稲生平太郎物語』、『稲生妖怪実記』、『稲生物怪録』土木用の三本。




 江戸の大学者、平田篤胤(1776-1843)のような人物が、よもやこうしたジャンルに手を出していたなんて意外や意外でした。こうした人物が乗り出したとなると、あやかしといえども、かなりの信憑性を持って研究されたのでは?と彼の解釈が気になって気になって仕方ありません。たんなるお伽噺で終わらせない理由があったんでしょう。

 口絵として紹介されているのは『稲生平太郎物語』、『稲生妖怪実記』、『稲生物怪録』土木用の三本。




稲生物怪録絵巻集成
(国書刊行会/2004)
 「集成」とあるように、この『稲生物怪』には複数の絵巻、写本、絵本が存在しているそうです。それほど、この物怪物語は人気があったのでしょう。8本が収録され、それぞれにしか描かれていない作画もあったりして、どこかでいろいろな追加や削除などあったのでしょう。そういったことからも、この物語は創作されたものと感じてしまうのですが、純粋に絵や流れを楽しみ江戸時代に想いを馳せたいものです。

  なお、この物語の主人公が体験したと言われる時代は寛永二年(1749年)七月一日から七月三十日の間の出来事であると特定されていること、に興味は尽きません。

  なお、1749年という年は、暴れん坊将軍(天文将軍吉宗公)の在職も終わり、渋川春海(1639-1715)と麻田剛立(1734-1799)の間に起きた出来事と言うことになります。天文学など、多くの学問に西洋化を進めていた時代の片隅で、こういう出来事が起きていたということに非常に驚かされます。




民衆史の遺産 第七巻|妖怪
(大和書房/2015)
 この書籍の冒頭には堀田家本と言われる話が全話、巻頭オールカラーで収録されています。他にも、この本の副題になる通り『妖怪』を扱った記事が収録されました。

・妖怪談義 / 柳田國男
・妖怪学(抄)/ 井上円了
・日本妖怪変化史(抄)/ 江馬務
・山童伝承/円山学
・「ケンモン」と「ウバ」/金久正
・『稲生物怪録』絵巻 / 谷川健一編


妖怪への考察がまとめて読めるお得本です(笑)




平太郎のおばけやしき
(ロクリン社/2016)
 絵本として紹介されていますが、デフォルメされた妖怪絵などではなく、古来から伝えられている実際の絵巻(堀田家所蔵が底本になっていました)を使っての絵本。なので、文庫本では小さな絵も大きくなってみやすくなりました(笑)。

  ちなみに絵本は14日目まで(怪異は30日間続く)、15日以降は続編『おばけの親玉』として出版予定なんだそうです(2023年現在予定なし)。




稲生物怪録
(角川ソフィア文庫/2019)
 妖怪と言えば… じゃないですけど、遠野物語でもすっかり有名になったお二人、京極夏彦と東雅夫の二人がタッグを組んだ文庫サイズのもののけ。これを鞄の中に放り込んで私は電車の中で「もののけ」と伴に時間を過ごしました。最初にカラーページによる絵巻、上の絵巻集成にも収録されている「堀田家本」が掲載されています。同じく、主人公の平太郎が書き記したという『三次実録物語』と、その本人から聞き取りしてまとめた『稲生物怪録』の二編が収録され、隅から隅まで「もののけ」を堪能できます。三編とも元は同じもの。




まんが訳 稲生物怪録
(ちくま新書/2021)
 それにしてもいろいろな解釈(?)が編まれるもので、今回出版されたのは「まんが」。手に取るまでは、どなたか作家が新たに書き直したのかと思っていたのですが、ページをめくってみれば本物の絵巻からトリミングした作画を使ってました。これはナイスアイデア!ではないでしょうか? 

国際日本文化研究センター:稲生家妖怪傳巻物




 2022年7月出版。現在到着待ち〜





 稲生武大夫は享保二十年(1735)に生まれ享和三年(1803)に亡くなった実在の人物です。 この物語は寛延二年(1749)の七月という一月限定で、様々な物怪たちが武大夫の元を訪れています。とっぴな内容が多い日本の物語、例えば『竹取物語』にしても『浦島太郎』、『桃太郎』も何かしらの元ネタが存在したはずで、そこで登場するキャラクターたちは、同じように奇抜なものが多いような気がします。

 私の趣味範囲で考えるならば、麻田剛立が享保十九年(1734)から寛政十一年(1799)の人です。西洋ではバッハが『ロ短調ミサ』を、ヘンデルが『王宮の花火の音楽』をそれぞれ作曲していた年。

 そうした時代背景を考えても、この物語はいつ読んでも楽しめます。


 

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