『遠野物語』って、いったいどんな物語なのでしょうか。私の第一印象は、現代と何ら変わらない、ある意味ワイドショーで取り上げられるネタと同じ類のドロドロした人間関係が目につきました。

「これは実話なのかな?」

  といったところです。そこにカッパやザシキワラシなどの物の怪が唐突に登場します。柳田は怪談とかオバケ・妖怪などの表現をしていませんが、それがかえって現実味を増し物語では当たり前の出来事として語られているので、不思議な魅力にとりつかれてしまうのです。

「これがは一体 何?」

そう思いました。1910年に出版された当時の不思議集。とでも紹介しておきましょう。



遠野物語/ 柳田國男
(大和書房)
 現在、この本の最も重厚な体裁の一冊。

 最近、この本が成立する過程を読みました(「物語の世界へ」石井正己著)が、そこには柳田國男と佐々木喜善との意外なやり取りが書かれていて、なにやら新たな魅力というものを感じ、再び遠野物語にとりつかれてしまいました。

 たとえば、著者である柳田は佐々木と違って、遠野物語が出版された際、おおっぴらには語られない遠野の話が多数含まれていたために「遠野の人々に読まれることを恐れていた」ことや、本書では敢えて表現しなかった“怪談”とか“お化け話”を二人の時は、それを「お化け会」と呼んでいたということ。そして佐々木を「お化け問屋」とからかったといいます。

 なんの予備知識もない読者が、遠野物語を手にした時、そこに書かれている物語が、あまりにもリアルな人間関係だったり、突然カッパが出てきたり、天狗の話にかわったりして驚愕するでしょう。ややもすれば柳田が(敢えて避けた)表現しなかった怪談というジャンル(いわゆる創作)ととられても、何らおかしくないのに、本編では“伝説”と最初に断るだけで、「創作ではなく遠野で語られる事実」と思わせるための、そこには柳田の策略があったようです。つまり『妖怪談議』で論じているとおり、昔話は「作り話」で、伝説は「今でも若干は信じるものがある」と分け、「遠野の人が平地人を戦慄せしめる」伝説として、組み替えたというのです。

 おもしろいのは、遠野物語を出版する前に出版された『石神問答』の広告文。

「西洋の学者に手を下されると悔しいからちよいと先鞭を着けて置くとのこと也」

というところ(明治43年5月28日付読売新聞)。
そしてその一文が、その直後(6月)に出版された『遠野物語』の冒頭に書かれた

“此書を外国に在る人々に呈する”と繋がるのです。

 石井氏の著作により、今まで知り得なかった遠野の魅力を伝える最大の源である遠野物語の意外な一面を突きつけられた感じになりましたが、かといって私の遠野熱が冷める訳ではありません。また、最近では『遠野物語』が伝えきれなかった面を、鈴木サツさんをはじめとする語り部のによる遠野の再発見、ひいては日本民話の世界に浸ることが最大の楽しみになっています。それが遠野の原風景に戻る近道になっているのかもしれません。





「柳田國男全集第1巻」より
(東京AVセンター)
 遠野物語は活字になっている姿から受け取る印象が、もっともインパクトが強いかもしれません。とはいえ、文体が難しいので、何を意味しているのか分からず立ち止まってしまうこともありました。そこで、朗読している音源がないのかなぁ、とを探してみたら、東京AVセンターから出版されている朗読ライブラリーの中の「柳田国男作品集」の第1巻に「遠野物語」全話を朗読している音源がありました。

 朗読をしているのは瀬能礼子さん。カセットテープで2本、全158分の作品で119話目に収録されている「橋ほめ」の歌以外、全部朗読してくれています。
 癖のない声質のため、どことなくフィクション化された「小説」っぽい雰囲気を強く感じるかもしれません。つまり、この作品のもつ遠野のおどろおどろしさが感じらないので、野物語を読んでいない人にはお勧めしません。遠野物語を活字この読み終わった人向けかもしれませんね。ちなみに私は自宅での仕事中とか、寝るときに掛けたりしています。

 とはいっても「遠野物語」ファンはぜひ、聴いておきたいところではないでしょうか。ちなみ2014年現在もCD化されていません。ネットから検索を掛けたら、なんと近所の図書館に所蔵していることを知り、即座に借りに行ったのは言うまでもありません。実家からカセットデッキ(ナカミチ)を復活させて、念願の音源を聴くことが出来ました。

 なお2020年現在、瀬能礼子さんの朗読以外に遠野物語の朗読は2本あります。俳優の根本泰彦さんと、でじじという朗読専門で取り扱っている会社の朗読版。




 遠野物語を現代において解釈した解説書。ぼんやりと幻だったような話でさえ、ここでは聞き取りから考証し、場所を割り出し、といった注釈を読み手に提供してくれます。遠野物語に魅せられ読者なら、原本と共に並べておきたい一冊といえるかもしれません。出版元である遠野物語研究所では、のちに出版された『拾遺』の注釈本の出版を告知していますが、まだ出版されていません。
 先の木瀬氏の本の中ではコラム104(2010年8月20日)の中で「2011年1月に出版されている予定」となっていますが、2020年11月現在、まだ未出版。





“一人出版社”の異名をとる岩田書院から出版された限定500部の遠野物語。2011年に東京の八重洲ブックセンターの棚に、奇跡的にひっそりと残っているのを発見!別の本を探していましたが、そちらをやめてこちらを購入。だって500部しか出ていないし。

 出版元の岩田書院は、地方史や民俗学の書籍を数多く出版していますが、これは私にとってはバイブル的一冊になりそうです。原書である『遠野物語』から外へ出ることのない事典なので、更に深みにはまっていきそうです。



 遠野物語が出版される前の2年間、当事者である柳田国男、佐々木喜善、水野葉舟にスポットを当てています。





注釈遠野物語拾遺
遠野物語研究所の出版情報を待ちましょう。

と楽しみにしていたのですが、1986年に発足した研究所も、会員の高齢化で継続することができず、2014年3月31日をもって解散となりました。今後は遠野文化研究センターが中心となって継承していくそうです。


遠野物語を知る、考える本遠野物語の周辺の本語り部

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