オリオンは星座の代表的な存在であり、ホメロスが褒め称えたように全天でも屈指の星座であることは誰も疑うことはないでしょう。しかし、そのキャラクターである狩人オリオンの性格は現代人の感覚から言うと「?」と言わざるを得ないような逸話しか残っていません。その中にあって、詩人ホメロスのみが彼を唯一褒め称えた一節を歌い上げてくれています。 「それは神のごときオートスと、はるかにその名のとどろいているエピアルテースで、瑞穂の大地が育てたものの中でももっとも丈高く、誉れ高いオーリーオーンに次いで、その姿が遥かにすぐれていた オデュッセイア 第十一歌 (高津春繁訳/ 筑摩書房 ISBN4-480-20602-7 C0397)」 「神のごときオトスと遍く世に聞こえたエピアルテスだ。五穀をもたらす大地は彼らを、世に名高いオリオンに次いで最も巨大で、また飛び抜けて美しい男に育てた オデュッセイア 第十一歌 (中務哲郎訳 筑摩書房 ISBN978-4-8140-0422 5 C1398)」 英雄とか狩人などと紹介される割にはあまり褒められたような業績を残していないなのに、どうしてこの星の並びにオリオンがを架けたのでしょうか? これはあくまでも推測の域を出ませんが、神話や昔話などは戒め的な内容が多いので、特に星空の中で目立つオリオンに対して、そうした要素をあえて盛り込んだのではないでしょうか? なんに対しても威張り散らしたり、女性を追いかけたり(今ふうにいうならストーカー)、森の生き物を大事にしないとか… 相手が嫌がることをすると、必ずバチが当たる的なことをオリオンに語らせているのかもしれません。 特に有名(子供たちにも大人気)なのは「天下には自分よりも強い者はいない」と高慢なオリオンの態度に腹を立てたオリンポスの神の一人(ヘラ説、アテナ説いろいろ)が、それならばと小さな蠍(アテナ説は巨大な蠍)をオリオンの足元に解き放ち刺殺させたという伝説ではないでしょうか? 蠍の猛毒であっけなく息を引き取ったオリオンは、のちに星座に挙げられましたが、オリオンに一撃を喰らわせた蠍も、その功労で星座に挙げられることになりました。それを知ったオリオンは自分の命を奪った蠍から今でも逃げていると言います。つまり、さそり座が夜を横断している最中、夏の夜空からオリオンは姿を隠し、さそり座が西の空に沈んだのを見計らってから冬の夜空の東の空から昇ってくるようになったのです。特に昆虫は冬の間はじっとしていることが多いので、安心して冬の夜空を闊歩できるのかもしれません。そう言われて冬の明け方に東の空に姿を表したさそりの姿は、やや精彩にかけて小ぶりに見えてくるようです。そういうところまで計算して物語が出来上がってきたとしたら、星座を作った人たちの観察力と想像力には脱帽するしかありません。 これと良く似た話をもう一つ。それはオリオンがサソリの目を気にすることのない冬の夜空で毎夜繰り広げられている追いかけ伝説です。オリオン座の西隣に位置するおうし座は、オリオンの父の一人の候補にいる大神ゼウスがエウロパを攫う際に化けた時の牛がモデルになっています。事情を知らないと、オリオン対おうしの構図ですが、よく見ると、オリオンはおうしの方先にいるプレアデスという一群の星の塊を見つめています。 オリオンに追われているのはプレアデスの7人姉妹(別の神話では、姉妹のひとりメローぺのみ)が地上での逃亡に疲れ果て、女神ヘラが白い鳩に変え、その美しい姿を見たゼウスが星の集団として星に変えました。ようやくオリオンから追跡(今風に言えばストーキング)から逃れることができた7人でしたが、その後オリオンも星座に挙げられ、こともあろうにまさかの目の前に再びオリオンの姿が現れるとは予想だにしなかったはずです。再び、彼女たちは星空の中を逃げ回る羽目になってしまったわけです。 さて最後にオリオンと言う名前に関して… ゼウス、ポセイドン、そしてヘルメスが歓待を受けたボイオティアのヒュリエウスからの申し出によって、ヘルメスのかぶっていた帽子を地面に置いて、3人で放尿… そこから生まれたのがオリオンという伝説も存在するからです。つまりオリオンの語源は「ウーロン(尿)」からきているという説です。「これ」とは「おしっこ」つまり尿。ギリシア語で尿のことを「ウーロン」と言いますが、これが何世代にもわたって口承で語り伝えられてオリオンに変化していったとも言われています。 なお、ギリシア神話でのオリオンの呼び方(表記)ですが、 ☆オーリーオーン ☆オーアリオーン と、母音を伸ばすのが発音に近い表記で、ギリシア神話関連の専門書ではこの表記が多いようです。天文書ではその限りではなく、オーリーオーンならオリオン、へーラーならヘラといった具合です。 |
こちらを覗くオリオン
(2020/01/01 22h56m)
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