世界3大ピアノといえば…

「フランツ・リストの激しい演奏に耐え抜いた」 ことで知られるベーゼンドルファー(1828、墺)をはじめ、

「神々の楽器」と呼ばれるスタインウェイ(1853、米)、

「ピアノのストラディバリウス」と異名をとるベヒシュタイン(1853、独)だそうです。

 ジョン・フィールドの『ノクターン』を漁っている間に気がついたのが、様々なピアノメーカーがあり、それぞれ特徴のある音色を持っていることでした。そして、私が求める“天界の音楽”として「作曲者が活躍していた時代に制作された楽器で奏でる音」は、まさに時を隔てて届く星の輝きのように、作曲家が耳にしたであろう音と、時代の空気を吸い込んだ何百年も前の音色を再現し、夜の静寂(しじま)から聞こえてくるよう感じて楽しんでいます。

ここでは、ドビュッシーの楽曲を、彼が聴いていたであろう同時代の楽器(コピーでなくオリジナル)で演奏しているディスクにスポットを当てて、紹介していきます(主にピアノがメインです)。

2019年7月12日更新


前奏曲集(1990)/ベヒシュタイン(1900年製)
映像、版画(1992)/ベヒシュタイン(1900年製)
ベルガマスク、子どもの領分他(1994)/ベヒシュタイン(1898年製)
練習曲集他(1995)/ベヒシュタイン(1898年製)


ドビュッシー生誕150周年に併せて上記アルバムがボックスになっています

ドビュッシーをして、このベヒシュティンを

“ピアノ音楽はベヒシュタインのためだけに書かれるべきだ”

とまで褒め称え、このメーカーのピアノの音色に傾倒していた様子が窺われます。そう思えば、ドビュッシーはベヒシュタインの音色で弾かれることを想定して楽想を考えていたのかもしれません。それに応えて1962年生まれのカッサールは、ドビュッシーのピアノ作品を、ベヒシュタインで全曲レコーディングしてくれました。

 私がそのエピソードを知ったのは、カッサールのこのアルバムがリリースされてからのことですが、ドビュッシーがこだわった音色を再現してくれるこのアルバムを手にせず、ドビュッシーのピアノ音楽は語れないと言っても過言ではありません。まさにドビュッシーが弾き、聴き、この音色のために作曲した音楽が、カッサールの演奏で蘇ったのです。

 第一弾としてリリースされたのは、前奏曲集全曲で、日本ではNECアベニューが代理店となって販売されましたが、しばらくして廃盤となり、本国でもレーベル移籍に伴い、廉価盤になってジャケットなども差し替えられています。

 カッサールのこのシリーズはピアノ・ソロ全作品に及び、第二弾は『映像』『版画』『1904年の3曲』。第三弾から国内発売は見送られますが、『子どもの領分』『ベルガマスク』他、第四弾に『練習曲集』他がレコーディングされました。


前奏曲第1巻、忘れられた映像 (1993)/ Jos Van Immerseel

 アニマ・エテルナという古楽オーケストラの指揮者としての活躍が目立ちますが、もともとはケネス・ギルバートらに師事した鍵盤楽器奏者だったインマゼールが、「曲に合うピアノがエラールだった」との理由から、本人所有の1897年製のエラールでレコーディングした1枚。これは2006年にリリースされたピオーの伴奏にも使用されたピアノで、この2枚のアルバムの録音も10年以上の隔たりがあり、約100年前の、ドビュッシーが生きていた頃の「音」と「空間」を楽しむことができます。


歌曲集(2006)/ Sandrine Piau & Jos Van Immerseel
 前奏曲集の他、ドビュッシーのピアノ音楽では重要な性格をもつ『忘れられた映像』も収録されていますが、他の作品にも手を出して欲しいところ。
 いささか、古さの目立つ響き(特に速いパッセージの曲)に、ちょっと息苦しいところも見受けられますが、それがあってのピリオド楽器の楽しみなので、ピアノ以外の音も楽しみましょう。柔らかい音色や音の温もりが感じられる演奏です。
忘れられた小唄
抒情的散文
ステファヌ・マラルメの3つの詩

 たった1枚だけレコーディングされた『前奏曲集』『映像』に引き続き録音されたのは、ピアノ作品集ではなく、ソプラノのサンドリーヌ・ピオーの透きとおった歌声の伴奏でした。このハーモニーは得もいわれるほどの美しさです。

 エラールはフランスのピアノメーカーで、1796年、初めてグランド・ピアノを作ったメーカーとして知られています。また、1821年には鍵盤を下まで押し込まないでも連打できるダブル・エスケープメント・アクションを開発し、早いパッセージが弾けるようになりました。そのことからフランツ・リストもフランスのエラールを好んだと言われています。




歌曲集(1993)/ Thierry Felix & Stany David Lasry

 インマゼールと同じエラールを弾いていますが、ラスリーは更に古いピアノを用い、バリトンのフェリックスの伴奏で1874年のエラールを弾いています。保存状態がよほどよかったのか、あまり古臭さを感じません。また、レコーディングホールの影響か、残響もほとんどなく、ドビュッシーの書いた音符がコロコロと音を立てているようで、かえって新鮮に聞こえます。

 彼のシリーズ(?)のジャケットを見る限り、下記に紹介しているピアノ・アルバムは第1集、第2集とクレジットされていますが、2014年現在、この3枚しかリリースされず、すでに長い歳月が流れてしまいました。

 この2枚のアルバムで、ドビュッシーの主要作品はだいたい収録されていますから、まずまずなのかもしれませんが、ちょっと中途半端感があります(ドビュッシー・ファン、古楽ファンとしては)。
 ピアノ作品の2枚目では 「前奏曲集」のほかに“レントよりも遅く”が1巻と2巻の間に置かれています。レコーディングの順番でいくと、バリトンのシエリー・フェリックスとの歌曲集が第一弾(アルバムタイトルには第1集とか書いていませんが)、第二弾は『ピアノのために』他、そして第三弾が『前奏曲集』という感じでしょうか。

 使用楽器を見ると、歌曲集と前奏曲集のアルバムがエラール1874年製で、第二集が1921年のエラール。作曲家死後に製作されたピアノなので、ドビュッシーが耳にしていない音色、ということになります。


Stany David Lasry
ピアノ作品 第2集(1995)
ピアノのために、版画、喜びの島、映像第1集、第2集、子供の領分


エラール(1921年製)

ピアノ作品 第3集(1997)
前奏曲集第1巻、レントよりも遅く、前奏曲集第2巻

エラール(1874年製)
 




前奏曲集(1999) / Alain Plannes

前奏曲集第1巻、第2巻

ベヒシュタイン(1897年製)

 それまで「印象派の作曲家」として聴かれることの多かった中で、ここまで明確なタッチで奏でてくれるとは思ってもみませんでした。まるで霧が晴れたような音楽。それはピエール・ブーレーズ率いるアンサンブル・アンテルコンタンポランに在籍していたことが大きく影響しているのかもしれません。今回二度目の全集をレコーディングしていましたが、第二弾ではドビュッシーが生きていた時代の楽器を弾いています。
 カッサールの演奏と比べてもわかるとおり、音色やタッチが、それまで私が思っていた「くすんだ音色」とは違い、(使ったピアノの保存状態にもよるのかもしれませんが)とてもクリアな音で驚きました。


ピアノ作品集/Alain Plannes
ベルガマスク組曲、映像第1集&第2集、子供の領分他

ブリュトナー(1902年製)
 ベルガマスク、映像、子どもの領分、アラベスクなど、ポピュラーどころを集めたアルバムで、今度はブリュトナーを選んでいます。ブリュトナーはベヒシュタインと同じドイツのメーカーで、ピアノの世界では「西(ライプツィヒ)のブリュートナー、東(ベルリン)のベヒシュタイン」という風に言われていました。ともにドビュッシーを虜にさせたくすんだ音色が特徴です。



前奏曲集 / Elaine Greenfield

前奏曲集第1巻、第2巻

ブリュトナー(1853年製)

 ピアノの世界では「西(ライプツィヒ)のブリュートナー、東(ベルリン)のベヒシュタイン」という抗争(笑)があったそうですが、いずれもドビュッシーがドイツのピアノの音色を好んだというのは面白いです。ここでは第2巻にブリュトナーの音の特徴を聴くことができます。特に「花火」のラストの音の響きは、今まで聴いたことがありません。

 米国のピアニストグリーンフィールドは、ベヒシュタインの対抗馬であるブリュトナー(1853)を選んで前奏曲集をレコーディングしています。このピアノは高音域に共鳴弦を加えた独特の響きを表現できるピアノですが、おもしろいことに創業がスタインウェイ、ベヒシュタインと同じ1853年ということです。


四手ピアノのためのフランス作品集(2010) / Elaine Greenfield & Janice Meyer Thompson
小組曲(ドビュッシー)
子供部屋(ビゼー)
マ・メール・ロア(ラヴェル)
6つの古代墓碑銘 (ドビュッシー)
ドリー(フォーレ)

エレガントエラール(1877年製)
 2000年にブリュトナーで『前奏曲第1巻、第2巻』をレコーディングしてくれたグリーンフィールドが、今度は(エレガントエラール1887年製)を、Janice Meyer Thompsonと4手のためのフランス作品をレコーディングしてくれました(4手連弾なのでピアノは1台)


見える笛、見えない笛(2005)/Arthur Schoonderwoerd


エラール(1907年製)
 『見える笛、見えない笛』というタイトルで編纂されたアルバムの中心に、ドビュッシーの『6つの古代の墓碑銘』が1曲づつ、他の曲を挟むようにして収録されています。

 このアルバムはサンサーンス、ゴダール、ピエルネ、ルーセル、カプレらがヴィクトル・ユーゴーの“ほら!目には見えないけれども…”という詩にインスピレーションを受け作曲した曲を集めて演奏しています。ここでのエラールは1907年製、インマゼールの弾くピアノよりも後の、20世紀に入ってから製作されたもので、明るく(いささか堅く)響くのが特徴です。


白と黒で、海、牧神の午後への前奏曲(2007)/Jan Michiels & Inge Spinette
牧神の午後への前奏曲
リンダラハ
舞曲

6つの古代墓碑銘
白と黒で

Jan Michiels:スタインウェイ(1873年製)

Inge Spinette:スタインウェイ(1875年製)
 Jan Michielsは1873年製、Inge Spinetteは1875年製という、意外にも2台のスタインウェイを奏でながら、ドビュッシーが生きていた時代の音を再現してくれています。今から100年以上も前に制作された楽器のため、現代のピアノと違って、調律に難のある音かもしれませんが、ドビュッシーが生きていた時代に制作され、もしかしたら、このピアノの音を耳にしていたかもしれないと考えると、音の美しさばかりを追求しなくても、音楽は楽しめるのかもしれません。
 古楽を奏してのドビュッシーのピアノデュオというのも珍しく、ましてや牧神や、海といったオーケストラ作品が、普段でも2台のピアノでも珍しい選曲はファンとしては嬉しい企画です。古いピアノによる演奏は、オーケストレーション前の草稿を聴いているようで興味は尽きません

英雄の子守歌(ドビュッシー)
レント(マリピエロ)
練習曲集 第1巻より第1番、第2番、第3番(ドビュッシー)
牧神のはるかな嘆き (デュカス)
練習曲集 第1巻より第4番、第5番、第6番(ドビュッシー)
ハンガリー農民の歌による即興曲 第1番(バルトーク)
負傷者の服のための小品(ドビュッシー)
エレジー(ドビュッシー)
ミューズたちのもてなし「ドビュッシーの思い出に」(ルーセル)
練習曲集 第2巻より第7番、第8番、第9番(ドビュッシー)
ドビュッシーの墓碑銘のための賛歌 (ファリャ)
練習曲集 第2巻より第10番、第11番、第12番(ドビュッシー)

ドビュッシーの墓碑銘:管弦楽のシンフォニーズよりの断章 (ストラヴィンスキー)
燃える炭火に照らされた夕べ(ドビュッシー)


エラール(1872年製)
 Jan Michielsは「ドビュッシーへのトンボー」と題したアルバムもレコーディングしてくれていました。しかも、演奏に選んだのはエラールの1872年制作のエラール。先の2台の作品集ではスタインウェイを奏でていましたが、今回は1892年生のエラールを選んでくれました。古楽ファンとしてはいろいろな音が楽しめてとてもうれしく思います。アルバムジャケットも、ドビュッシーが絵画から影響を受けただろうと思わせるおもむき(北斎とかじゃないんだ)。クラシックのアルバムジャケットで、こうした日本画が使われて、なんの違和感もないのがドビュッシーですね。


牧神のはるかな嘆き (デュカス)
ミューズたちのもてなし「ドビュッシーの思い出に」(ルーセル)
ミラージュ Op.70-1 ドビュッシーの思い出に(シュミット)
ドビュッシーの墓碑銘(ストラヴィンスキー)
クロード・ドビュッシー(マリピエロ)
ドビュッシーへのオマージュ(無題)(グロッセンス)
ドビュッシーの墓碑銘のための讃歌(ファリャ)
ハンガリー農民の歌による即興曲 Op.74 第7番(バルトーク)
第1番「牧神」(サティ)
水の戯れ(ラヴェル)
・・・
映像第2集(ドビュッシー)
スケッチブックから(ドビュッシー)
マスク(ドビュッシー)
喜びの島(ドビュッシー)

ブリュトナー(1907年製)

 1907年製のブリュトナーで、前半はドビュッシーへのオマージュ作品を、後半にドビュッシーの作品を聴くことができます。ドビュッシーの作品に関しては、なんだか中途半端な選曲の印象がありますが、使用ピアノが作られた1907年に注目すると、なかなか凝った選曲であることが浮かび上がってきます。「映像第2集」がまさに作曲された年だからです。



映像第1集、第2集(ドビュッシー)
版画(ドビュッシー)
2つのアラベスク(ドビュッシー)
ドビュッシー・バスティーシュ(グランド)
クロード・ドビュッシー(ガッセラ)
牧神のはるかな嘆き (デュカス)
牧神の映像


ベーゼンドルファー
1924年製

 ここで奏でられているのは、パウル・スコダ氏から借り受けた1924年製のベーゼンドルファー。たしかチッコリーニが二度目の全集で用いたのがベーゼンドルファーでした(しかもEMIは音が悪いので、ベーゼンドルファーの良さが全然聞き取れてない)。すでにドビュッシーは亡きあとに製作されたピアノです。先のJan Michielsと同じようにドビュッシーへのオマージュとして編まれたアルバムで、数曲だけ同じ曲が収録されていますが、使用楽器が異なるので、それだけ違った音色で楽しめようというもの。また、ここではピアニストであるが作曲した「ドビュッシー・バスティーシュ」をはじめ、20世紀に入ってからの作品が半数を占めているというもも興味深いです。

 

前奏曲集 / Alexei Lubimov

スタインウェイ(1913年製)& ベヒシュタイン(1925年製)

 アレクセイ・リュビモフ氏というピアニストは、サティの『星の息子たち』(1899年製ベヒシュタイン)で初めて存在を知ったのが最初。現代音楽からハイドンまで、ディスコグラフィを見ると、幅広い選曲をこなしているようです。

  ここで演奏しているピアノのこだわりをみると、ドビュッシー・ファン、古楽ファンとしては嬉しくなってしまう弾き比べを行ってくれています。
 前奏曲集の他に、2台ピアノのために編曲された「牧神の午後への前奏曲」「夜想曲」も収録されています。相手は弟子のアレクセイ・ズーエフ。1925年製ベヒシュタインと1913年製スタインウェイを弾き分けて、音色の違いを楽しめます。

  前奏曲集はベヒシュタイン(1925年製)で、2台のための作品をベヒシュタインと、弟子にはスタインウェイ(1913年製)を任せるという極端に音色の異なる2台で演奏するという面白い試みのアルバム。

  くすんだ音色がドビュッシーの心をつかみ、はたしてきらめくようなスタインウェイの音はドビュッシーは好んだのか? 興味が湧かないはずはない一枚。

 

ピアノソナタ第2番(ラフマニノフ)
前奏曲集第2巻(ドビュッシー)

スタインウェイ(1925年製)

 1925年製のスタインウェイなので、すでにドビュッシーは没しているため、彼が聴くことの出来なかった響きです。カップリングされているのはラフマニノフのピアノソナタで、ドビュッシーよりも遅い生まれの作曲家だから、ニューヨークとかで聴いていたかもしれません。しかし、なんで「前奏曲全集」としてくれなかったのでしょうか? 選曲は、両曲が作曲された1913年にこだわっている様です。

 上野氏は、特にオリジナルのピアノにこだわってレコーディングを続け(ベートーヴェン では、1816年製のブロードウッドと1820年製のシュタインとのフォルテピアノ、ショパン でも2台で弾き分けて1846年製ブレイエルと1852年製エラール)てくれているので、今後の活躍も楽しみです。

 

前奏曲集 / 佐々木宏子


前奏曲集第1巻、第2巻

プレイエル(1873年製)

 1873年製のプレイエル。ジャケットに映し出されているのは、まるでバロック時代の装飾されたチェンバロのようなたたずまい。しかし、聴こえて来るのはピアノの香り… この楽器でドビュッシーを聴くのは初めてだったので、とてもドキドキしてしまいました(笑い) 

 


 リリアナ・ファラオン:ソプラノ
 マガリ・レジェ:ソプラノ
 マリー=アンジュ・トドロヴィッチ:メゾ・ソプラノ
 ジル・ラゴン:テノール
 フランソワ・ル・ルー:バリトン
 アントニン・ロンドピエール:声

ジャン=ルイ・アグノー:ブリュトナー(1905年製)

ドビュッシーの歌曲集と言ったら、古くはEMIが作り上げた全集がスタンダードでした。ぽつり、ぽつりと代表曲を納めた歌曲集がレコーディングされてきましたが、EMIの金字塔があるためか、なかなかそれに次ぐ全集はレコーディングされていませんでした。未発表の歌曲などのニュースもあり、そろそろ新しい全集が欲しいなぁ、と思っていた矢先、飛び込んできたのがこの4枚組、EMI盤よりも42曲も多く、初レコーディングが14作品という「全集」という名にふさわしいアルバム。改訂版や第2版も存在する場合、両方を収録し、また、未出版のものが収録され、しかも伴奏に使っているピアノが、ドビュッシーが使っていたというブリュトナー。今まで「古楽ならドビュッシーはベヒシュタイン」と思っていたので、ブリュトナーは意外でした。

 ブリュトナーでのレコーディングは
Randall Love(1907)、Elaine Greenfield(1853)、Alain Plannes(1902)

とあり、決して珍しいことでもないのですが、やはり目玉は「ドビュッシー所有の」という価値でしょう。
 


Debussy with Bluthner/谿 博子


前奏曲集第2巻、ベルガマスク組曲、エレジー

ブリュトナー(1905年製)

 ブリュトナーはドビュッシーが好んだ音色(あれ?ベヒシュタインじゃなかったの?と、いつも思う)で、今回の使用楽器もブリュトナーが選ばれました。先の歌曲全集のところでも触れましたが、Randall Love(1907)、Elaine Greenfield(1853)、Alain Plannes(1902)、そしてJean-Louis Haguenauer(1905)と、この谿さんは5例目となります。そしてレコーディングに使われたのは1905年の製作で、創業50周年モデル

。このピアノでレコーディングされた曲のうち、前奏曲集第2巻、ベルガマスク組曲は先出のピアニストで聴くことができますが、エレジーのみ初録音。

 


♪ワーグナー/リスト編:イゾルデの愛の死
♪ドビュッシー:喜びの島
♪ドビュッシー:『映像』第2集
♪スクリャービン:ピアノ・ソナタ第5番
♪ラヴェル:夜のガスパール
♪シェーンベルク:3つのピアノ曲 Op.11

ベヒシュテイン(1906年製)

 ピリオド楽器として初めて意識したのはベヒシュテイン(カッサール)だったから、今回の上野氏が選んだこの銘器の名を見ると安心します(笑)。
 上野氏は今回もドビュッシーだけを取り上げるのではなく、 その周辺の作曲家も取り入れたプログラムを仕掛けてくるので、まるでドビュッシーを小出しにしているようです(いずれ全集に発展か?)ただし、今回興味深く眺めたのは、以外と演奏されないラヴェルの作品が含まれていること。しかも、かなりピアにスティックなガスパールです。

 


01. 水の反映(映像 第1集より)
02. 版画/塔
03. 版画/グラナダの夕べ
04. 版画/雨の庭
05. 亜麻色の髪の乙女 (前奏曲集 第1巻より)
06. 雪の上の足跡 (前奏曲集 第1巻より)
07. ハイドンを讃えて
08. ヒースの茂る荒地 (前奏曲集 第2巻より)
09. オンディーヌ (前奏曲集 第2巻より)
10. 沈める寺 (前奏曲集 第1巻より)
11. アラベスク 第2番
12. コンクールのためのピアノ小品
13. 喜びの島
14. レントより遅く

スタインウェイ(1887年製)

「音の絵」とタイトルが付けられたアルバムは、ドビュッシーのいいとこどり、というよりはかなりマニアックな選曲になっています。ポピュラー的な曲を避けているのか、有名どころは敢えて外してある感があるのではないでしょうか。ドビュッシーが好きだからと言っても、普段、こうしたアルバムを聴くことはないのですが、2003年にリリースされた『巨匠たちの伝説』というアルバムと同じ楽器を使用しての音色に興味津々(あれからまた15年近くの時を経ているので)でした。

 

前奏曲集第1巻、ベルガマスク組曲 /上野 真


♪ドビュッシー:ベルガマスク組曲
♪ラヴェル:水の戯れ
♪ラヴェル:ソナチネ
♪ドビュッシー:前奏曲集 第1巻


エラール(1927年製)

 すでに前奏曲集第2巻をスタインウェイ1925でリリースされているので、今回のエラールで「前奏曲全集」となりました(パチパチパチ〜)。 ちなみにこれまでのレコーディングは以下のとおりです。

♪前奏曲集第1巻:スタインウェイ(1925年製)
♪喜びの島、映像第2:ベヒシュテイン(1906年製)
♪前奏曲集第2巻、ベルガマスク組曲:エラール(1927年製)

 前回からジャケットの雰囲気が似ているので、楽器紹介も全面に出しながらのシリーズとなりそうな気配です。

 

前奏曲集第2巻、海/アレクサンドル・メルニコフ & オリガ・パーシチェンコ*


♪前奏曲集 第2巻
♪交響詩「海」*


エラール(1885年製)

 このアルバムでの注目は、ドビュッシー本人の手による4手版の『海』でしょう。以前もJan Michiels & Inge Spinetteの2台ピアノのための録音がありましたが、それ以来ということになります。また、前奏曲集第2巻から始めるというのも注目すべきことかもしれません。

 

前奏曲集第1巻/ヴェロニク・ボンヌカズ


♪前奏曲集 第1巻
♪月の光
♪喜びの島
♪ 映像 第2集
♪ レントよりおそく


ベヒシュタイン(1900年製)

 曲目を見ると、ずいぶん中途半端な感じが否めませんが、1900年製のベヒシュタインというのは、やはり魅力的です。

 

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