星と天界の音楽と(星のソムリエのブログ)

このページではハイドンが鍵盤楽器のために作曲した作品を紹介します。


 4台のオリジナル楽器を奏でていますが、コピーではなく、4台のスクエア(四角)・ピアノを弾き分けています。(レビュー




 Vol.1と同じくコピー器ではなく、ジャケットにもクレジットがあるように1823年製作のStodartを奏でています。Vol.2と銘打ってあるので、シリーズとして続くのかと思っていましたが、2011年に彼女が逝去したことを受けて、この2枚で終わってしまったのは残念でなりません。(レビュー




 廉価盤のボックスを次々とリリースしてくれるブリリアントから、それまでの廉価シリーズとは違って、このレコーディングのために集まったピアノ・フォルテ奏者がハイドンのピアノ・ソナタを分けあってくれました。15と17は含まれていません。

 時折、カタカタという鍵盤の弾く音や、弦の金属的な共振音が聞こえ、そんな音に古のハイドンに思いを寄せています。ここでは故小島芳子さん(レプリカ/オリジナル)が、日本のレーベル(デンオンのアリアーレ)でレコーディングしたものとは別に録音した音源や、オーボエ奏者からフォルテ・ピアノに転向した福田理子さん(オリジナル)という二人の日本人ピアニストも加わっていて、日本の古楽演奏が世界的にも活躍していることを伺わせてくれます。

 Disk4のみSteinway D Concert Grand No.413330, Hamburg 1969とクレジットされている以外は、当時のオリジナル(いわゆる歴史的楽器)、もしくはレプリカ(中には制作者はわかっているものの、製作年代が記載されていないピアノ)を奏して当時の音色を再現してくれています。

 というわけで、このボックスで当時の響きを聴くことができるのは…
 Hob.XVI:4/6/8/9/14/20/21/26/28/31/36、Hob.XVI:50/52/51、Hob.XVII:D1


*ブリリアントは廉価で手に入るのが魅力的ですが、しばしば「大事な情報源」となるクレジットにミスプリントが見受けられるのが難点…(今回はDisk6のピアノ情報がDisk5の丸写しだったので、Discogsにて、おそらくオリジナルプリントのクレジットを引用させてもらってます)



Disk1:アントン・ワルター製作のモデルに基づくクリス・マーネ製作(2000)
Forte Piano: Bart van Oort

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Disk2; 01-11:アントン・ワルター製作のモデルに基づくクリス・マーネ製作(2000)
Disk2; 12-13:ジョセフ・キックマン 1798年製作のフォルテ・ピアノ
Forte Piano: Bart van Oort
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Disk3; 01-11:ヨハン・シュハンツ製作のモデルに基づくトーマス&バーバラ・ウルフ製作(1983)
Disk7 ;04-14:アントン・ワルター製作のモデルに基づくポール・マクナルティ製作(1996)
Forte Piano: Ursula Dütschler
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Disk4; Steinway D Concert Grand No.413330, Hamburg 1969
Piano: Ursula Dütschler
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Disk5; 01-06: アントン・ワルター製作のモデルに基づくクリス・マーネ製作(2000)
Disk5 ;07-12: アントン・ワルター製作のモデルに基づくクリス・マーネ製作(1996)
Disk5 ;13-15: ブロードウッド 1794年製作
Forte Piano: Stanley Hoogland
Disk6; 01-03: アントン・ワルター製作のモデルに基づくクリス・マーネ製作(2000)
Disk6 ;04-12: アントン・ワルター製作のモデルに基づくクリス・マーネ製作(1996)
Disk6 ;13-14: ブロードウッド 1794年製作
Forte Piano: Stanley Hoogland
Disk7; 01-03: 作者不明 1785年頃製作
Disk7 ;04-14:アントン・ワルター製作のモデルに基づくポール・マクナルティ製作(1996)
Forte Piano: 小島 芳子
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Disk8; アントン・ワルター製作のモデルに基づくポール・マクナルティ製作(1996)
Forte Piano: 小島芳子
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Disk9/10;作者不明 1785年頃製作, ウィーン
Forte Piano: 福田理子
 
 

 


(アントン・ワルター製作のモデルに基づく、クリストファー・クラーク製作のフォルテ・ピアノ)
♪ピアノ・ソナタ第37番 ニ長調Hob.XVI-37
♪ピアノ・ソナタ第32番 ロ短調Hob.XVI-32
♪ピアノ・ソナタ第49番 変ホ長調Hob.XVI-49
♪ピアノ・ソナタ第50番 ハ長調Hob.XVI-50
♪アンダンテと変奏曲 ヘ短調 Hob.XVII-6
 有田正広のフルート演奏を専門にリリースするために立ち上げられたレーベルから、小島芳子さんの演奏はベートーヴェンとハイドンの2枚がレコーデンングされています。ブリリアントでのレコーディングとはダブらない選曲が憎いです(笑)

 

ヴァーチャル・ハイドン[Blu-ray Audio/CD+DVD]
 そのタイトルをひも解いてみると、ハイドンが活躍していたであろう場所の音響を測定して、無響室で録音した鍵盤楽器の響きに測定値を付け加え、あたかもその場所で演奏しているかのようなリアリティを追求した企画です。オリジナル楽器ではなく、ブリリアントの企画と同じように、当時の楽器のコピーが使われているとはいっても、演奏者であるトムのこだわりが全ての演奏に反映されています(ドキュメンタリーを見ないと伝わってこないので、まずはドキュメンタリーを見ることをお勧めします) 。

 当初我が家にはブルーレイ・オーディオを再生できる環境もなかったし、「バーチャルはいいや」なんて思っていましたが、今や再生環境が整うと、どうしても仮想空間の音が気になって手に取ってみました。他にもブルーレイの恩恵にあずかったディスクを聞いてみて、そのサラウンドに感激してしまったという理由もあります。

 あくまでもヴァーチャルなので、実際にその場所で響く音をレコーディングしているわけではないので、まさに企画の勝利といった感があります。トムがグスタフ・レオンハルトに音場測定の打診を行ったところ、この企画に賛同しかねる意味の返信と盗まれる思いがして断って来たのも、なんとなくうなずけます(実際、レオンハルトは「盗む」という言葉を使ったらしいです←ドキュメンタリーより)。

 さて、演奏の方ですが、ハイドンのシンプルな音宇宙がトムのこだわった楽器と相まって、全体的に瑞々しい音で広がります。CD(もしくはBD)の音だけだったら、いつものハイドンの楽曲のように、さらっと空気のような存在で聞き流してしまいそうだったのですが、ドキュメンタリーや、レコーディング風景などを見た後では、製作者側の熱意も伝わって「聴き流し」は非常にもったいなく感じられました(笑)。