ウィンダム・ヒルの掲示板

Photo by Toshiharu Minagawa.

WH-1107 (01934-11107-2)
SUMMER / George Winston

 

 


Produced by Howard Johnston, Cathy Econom
       and George Winston.
   

Windham Hill Records, 1991

   


01. Living in the Country (Pete Seeger)
02. Loreta and Desire's Bouquet - Part 1
03. Loreta and Desire's Bouquet - Part 2
04. Fragrant Fields (Art Lande)
05. The Garden (Dominic Frontiere)
06. Spring Creek (Philip Aaberg)
07. Lullaby
08. Black Stallion (Carmine Coppola)
09. Hummingbird
10. Early Morning Range
11. Living Without You
12. Goodbye Montana - Part 1
13. Corrina, Corrina (traditional)
14. Goodbye Montana - Part 2
15. Where Are You Now
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2005 Special Edition Bounus Track
16. Old Friends

Windham Hill Records, 1991


 アッカーマンが1990年にウィンダム・ヒルを売却した関係で、レコードのカタログ番号にも影響が出始めた1991年。このアルバムにはアナログ(LP)盤にWH-1107、コンパクトディスク(こんな表現は今では死語?)にWD-1107と振られていますが、そのカタログも今では廃盤となり、01934-11107-2という数字の羅列になってしまいました。私はなるべく原盤を手元に置いておきたいので、LPを購入できず残念な思いをしたものです。ちなみにA面は1-8、B面が9-15でした。

 前作、『AUTUMN』『WINTER INTO SPRING』『DECEMBER』がベストセラーになったからこのアルバムを作ることになったわけでなく、他の季節の楽曲に混ぜてステージで描き(演奏し)、暖めてきた作品たち。「レコードに録音していない」だけで、どの曲もライヴでは違和感なく四季の調和されたハーモニーを奏でてくれていました。それは、1991年に、ようやくリリースにこぎつけたニューアルバムとしての『SUMMER』を初めて耳にしたとき、初めて聴く感じがしなかった、ということが如実に物語っていたと思います。

 1982年の『DECEMBER』以来、ステージの上では何度も本人の口から“next piece… from new album… called summer… na, natsu…”と紹介してくれていたアルバム。それが1991年(米国は10月8日)になってようやくリリースされました。特に、初めて日本に紹介された1983年の時点では、三部作はすでにリリース済みとなっていたので、これは初期からのファンにとって、四部作の完成が長いこと待たされた待望のアルバムということになります(1983年当時のレコード解説には次のアルバム、『SUMMER』の情報が入ってきていなかったので『四季三部作』と書いてあった)。

 ジョージの描き出す“夏”は、ギラギラとした汗ばむような日本のそれとは違い、暑さのピーク時に吹く「風」や、木陰に入ったときにホッとするような安堵感と一瞬の憩い。青く高い空。秋をつれてくる筋雲の便り… すべての曲、すべてのフレーズに風や木陰や、夏の雨、瞬く星空、雲を感じせずにはいられません。あるいは個人的な経験からは、高原に至るまでの長い道のりを終えて、草原に吹くそよ風が、体の中を通り抜けていくような瞬間に味わう清々しさを思い出させてくれます。

 それにしても、9年というブランクは日本では忘却のかなたに忘れ去られたり、音楽の雰囲気がガラリと変わり果ててリスナーが戸惑うこともあって、アーティストにとっては命取りとなりますが、ジョージの場合、ステージで温め、慣れ親しんでいる既存のアルバムの楽曲と一緒に演奏していただけあって、違和感もまったく無く『AUTUMN』の中に入っていてもおかしくないような雰囲気をもっています。

 あえてブランクの影響があったとするならば、『AUTUMN』と比べると大作がなく、ピート・シーガーの“Living In Country”(冒頭は、先日亡くなったミホール・オ・ドナールの妹、トリオナがThe Bothy Bandの1stで取り上げた“Do You Love An Apple”)に始まり、夏の詩情溢れる小品15篇が語られてゆきます。ウィンダム・ヒル・ファンとして興味深いのは、6の“Spring Creek”でしょう。ここでアーバーグが1985年のデビューアルバムで発表している曲を取り上げているので、聴き比べると両者のピアノスタイルの差が見えてきます(ライナーの中で、このアルバムが同朋のフィリップ・アーバーグの存在と、二人の故郷であるモンタナから大いに影響を受けたと語っているほどで、他にもフィルの曲を数多くレコーディングしています)。

 そのフィリップ・アーバーグは、ジョージのブランク中(1983-1990)に3枚のアルバムをリリースしています。 『HIGH PLAINS』(1985)、『OUT OF THE FLAME』(1988)、『UPRIGHT』(1990)。特にデビュー作となる 『HIGH PLAINS』には、ジョージが推薦のコメントを寄せるほどの気に入りようで、そのジャケットが語るように、アメリカの大らかな大地を感じさせるこのアルバムは、多くのリスナーに、ぜひ聴いていただきたい一枚です。

 オリジナルは8曲で、他人の曲こそ半数近くを締めていますが、それぞれがジョージのタッチに塗り替えられ、すべてがオリジナルのように聞こえてしまうのは、さすがとしか言いようがありません。また、ピアノソロという名義ですが、数曲でブラシ(ドラム)が入っています(よーく耳をそばだてないと聞こえませんが…)

 2005には『DECEMBER』を除く四季三作に、リサイタルの模様を収めたDVDがセットになった4枚組のボックスセットをリリースしました。後に単発でリリースされることになりましたが、このセットの中に『SUMMER』のスペシャルエディションが含まれ、ボーナストラックとして2006年時点では彼の新曲にあたる“Old Friends”が含まれています。楽譜は“Lullaby”が収録されました。


〜Discography〜

PIANO SOLOS(Ballads and Blues 1972)(1972)
AUTUMN (1980)
WINTER INTO SPRING(1982)
DECEMBER (1982)
COUNTRY(1984)
VELVETEEN RABBIT(1985)
SUMMER(1991)
FOREST(1994)
LINUS & LUCY : THE MUSIC OF VINCE GUARALDI(1996)
さだ子と千羽鶴(1997)
ALL THE SEASONS OF GEORGE WINSOTN(1998)
PLAINS(1999)
REMEMBRANCE(2001)
NIGHT DIVIDES THE DAY(2002)
MONTANA: A LOVE STORY(2004)
GULF CAST BLUES & IMPRESSIONS(2006)
LOVE WILL COME − THE MUSIC OF VINCE GUARALDI VOL.2(2010)
GULF COAST BLUES & IMPRESSIONS2: A LOUISIANA WETLANDS BENEFIT(2012)
SPRING CAROUSEL - APRING CANCER RESEARCH BENEFIT(2017)
RESTLESS WIND(2019)
NIGHT (2022)


 
Anniversary Edition
AUTUMN(2001)
WINTER INTO SPRING(2002)
DECEMBER(2002)
VELVETEEN RABBIT(2003)
PIANO SOLOS(Ballads and Blues 1972) (2003)
SUMMER(2005)