Photo by Toshiharu Minagawa. |
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01. Skywriting (Mike Marshall) |
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1982年にバーバラ・ヒグビーとダロール・アンガーが制作した『TIDELINE』、1985年のマンドリンのマイク・マーシャルとヴァイオリンのダロール・アンガーの二人がウィンダム・ヒルからリリースした『CHIAROSCURO』、そしてその間に行われた『LIVE AT MONTREUX』(WH1036)。それらの活動が、今回紹介する『SIGN LANGUAGE』に発展したと考えるのは、想像に難しくありません。 メンバーがいつ、どこで知り合って意気投合したか、なんてルーツを辿っていくのも楽しみの一つです。しかも、ここに集まったメンバーは、今ではそのスジの大御所的存在になっているからなおさらです。 ウィンダム・ヒルからのデビューは『TIDELINE』の方が早いのですが、実際の活動としてはマイク・マーシャルとダロール・アンガーはデビット・グリシャムの門下生として、彼の1981年のアルバム『MONDO MANDO 』でのセッションまで遡る事が出来ます。その後、1983年にはダロールとマイクの名義で『THE DUO 』をリリースし、その後のウィンダム・ヒルへと繋がっていきます。いっぽう、バーバラ・ヒグビーもウィンダム・ヒルから1982年にダロール・アンガーとのデュオでアルバムをリリースしていますが、ゲストにマイクが参加し、すでにだんだんと広がりを見せつつあったのです。 「モントルー」といえば、ジャズフェスティバルで有名なスイスの都市です。行った事がないのでよく分かりませんが、せいぜいBSの番組でジャズフェスティバルを見た事がある程度。その時のお目当てはAudioslaveというロックバンドでした。また、このモントルーといったら個人的には涙なくして聴く事が出来ない1995年のクイーン(フレディ・マーキュリー在籍)ラストアルバム『MADE IN HEAVEN 』のジャケットが、まさにそのモントルーのレマン湖畔です。有名どころではディープ・パープルの“Smoke On The Water”がレマン湖の火事を扱っていることでしょうか。“♪We all came out to montreux〜”って。それから私の好きな作曲家、ストラヴィンスキーが『春の祭典』をここで書いています(想像もつかない!)。チャイコフスキーも、かの有名なヴァイオリン協奏曲をここで書いたとか。 話はいきなり脱線から始まりましたが、この地、モントルーこそが様々な音楽を受け入れ愛されている地という事でバンド名にしたのでしょう。彼等もひとつのジャンルに捕らわれる事のない音楽を演奏しています。なんとも不思議なカンジの音楽が詰まっています。バンドのメンバーがそれぞれ持ち寄った楽曲を様々な視点で料理。オープニングの“Skywriting”のカラリとした抜けるような青空を思わせる雰囲気に、このアルバムのコンセプトが全て凝縮されているかのようです。ヴァイオリン、マンドリン、ピアノ、そしてベースが一曲の中でソロを取り合う音楽など、そうめったに聞けるものではありません。 ジャズ・フュージョン系ではサックスなどのウィンド(管楽器)あたりがリードを取りそうな曲も、ここではヴァイオリンが受け持ち、時にはギターのようにマンドリンとユニゾンを奏でます。“Sweet Intentions”ではピアノを軸に、ヴァイオリンが夢を見るような旋律で歌い、もっともウィンダム・ヒルのリリカルな面を見せてくれます。そして次のアンディ・ナレルの万華鏡のようなパーカッシブな曲との見事なコントラストをつけています。 どの曲が誰の作曲かは上記の曲目を見てもらうとして、マイケル・マンリングも曲を提供しアルバムタイトルトラックと8曲目の“Circular Birds”でブイブイとフレットレスベースで自己主張している(笑)ので、ファンは要チェックの必要があります。 このアルバムには人気曲であるバーバラの“To Be ”のオリジナルが収録されています。ピアノが奏でるメロディの、なんと素敵な事か。これを聴くだけでも、このアルバムの価値はあると言っても良いかもしれません。名曲です。ライヴでは必ず演奏される曲で、彼女のピアノ・ソロアルバム『VARIATIONS ON A HAPPYENDING』ではリ・レコーディングされています。 |
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