ウィンダム・ヒルの掲示板

THREE PART INVENTION
improvisations on Bach
AABERG FRIESEN SILVERMAN -2009-


Mixed and edited by Tracy Silverman.Mastered at Mastermix, Nashville, by Hank Williams.
Recorded at The Bin, Chester, Montana, by Tracy Silverman & Philip Aaberg.

All composed by Johann Sebastian Bach

Sweetgrass Music, 2009

   




01. Arioso (Cantata No.150)
02. Air On A Six-String (Suite No.3 for Strings)
03. The New Orleans Concerto (1st Movement of The Italian Concerto)
04. Honesty (Largo, 2nd Movement from The Double Concert)
05. Betrayal (Prelude No.2 in Cm from The Well Tempered Clavier I)
06. Oath (Prelude No.3 in C Major from The Well Tempered Clavier II)
07. Wheelworks (Prelude No.5 in D Major from The Well Tempered Clavier I)
08. Secret ("Wachet auf, Ruft Uns Die Stimme" from Cantata Cantata No.140)
09. Candlelight (Prelude No.8 in Ebm from The Well Tempered Clavier I)
10. Seduction (Three-Part Invention No.15)
11. The Soul In Stained Glass (Largo, from Sonata No.3 for Violin)

 


l to r ( Eugene Friesen ; Cello / Philip Aaberg ; Piano / Tracy Silverman ; Violin, 6 String Viola
)

 フィリップ・アーバーグ、ユージン・フリーゼン、トレーシー・シルヴァーマン。この三人が組んで真面目なバッハなどあり得ないと思っていましたが、まさかこんなになっているとは想像もしていませんでした。ウィンダム・ヒルの中でも、叙情的な演奏が多く、いかにもレーベルの看板をしょっている面々だなと思っていましたが、まさかの大バッハ!
 昨年までは、三人の『THREE PART INVENTION』というタイトルから想像して、持ち寄ったオリジナル作品をレコーディングするもんだと思っていました。フィリップのHPを見ていると、Piano Big Bandという表現をしていたから、かなりブルージーに、ジャージーに迫ってくるかなと思っていました。だから叙情的もありかなと。

 しかし、リリースが予告され、ジャケットが解禁になったので、見れば『improvisations on Bach』の文字が踊っていました。目につくのは『Bach』でした。それから音源が届くまで「ぜ〜ったい一筋縄ではいかない」と思っていたので、最初の音がスピーカーから流れてきたときは、期待通りの衝撃度がありました。 それほどバッハに詳しくないので、オリジナルの曲目の英語を調べつつ、下に私にとって親しみやすいオリジナル表記を併記しておくので、わかる人はどんな感じに料理されているのか想像してもらいたいと思います。一番良いのは、やはりこのアルバムを聴いてみることです。

 有名な旋律が何曲か含まれていますが、2曲目の「Air On A Six-String」、すなわち「G線上のアリア」など破壊されてます(笑)。しかし、だからといって不快な破壊ではなく、新たな発見を認識させてくれる「破壊」です。そもそも完璧な楽曲だからこそ耐えうるのではないでしょうか。ユージンの深い祈りのようなチェロが登場したときは「ほっ」としてみたり。それも束の間だったり。この曲はジャズのテイストがフィリップのピアノからぷんぷん漂ってきます。フィリップのピアノがそんな感じで、ユージンのチェロは、弓でこする曲よりも、ピチカートを多用しています。いわゆるウッドベースの役割が多いです。そして、もっともバッハらしくないのがトレイシー・シルヴァーマンのヴァイオリン。いやいや、驚かされることあちこち。まるでグールドの演奏を聴いているかのような興奮さえ感じます。
 ウィンダム・ヒルとバッハと言えば、やはりこのアルバムがリリースされる秋のシーズンが始まると思い出してしまうのが『ウィンター・コレクション』シリーズでしょう。また、丸ごとバッハのアルバムもあり、どれもクリスマスというか、祝祭的なムードをバッハの楽曲から感じられました。今回のトリオでレコーディングされたこのアルバムは、今までの型を破るバッハの新しい姿を見せつけてくれます。きっと、ライヴだとまた違ったフィーリングに満ちていることでしょう!

01.カンタータ第156番「わが片足、すでに墓穴に入りぬ」よりシンフォニア
カンタータがオリジナルのメロディですが、有名な編曲として、やはりバッハがメロディを転用したチェンバロ協奏曲(BWV.1056)より第2楽章;ラルゴでしょう。こちらは「バッハのアリオーソ」と呼ばれています。この曲はメロディが美しいだけに、様々な楽器による演奏が行われているので、「誰の曲」か知らずに、このメロディを聴いているのではないかと思います。

02.管弦楽組曲第3番(BWV.1068)の第2楽章「アリア」
「G線上のアリア」と言い換えた方がメロディが頭の中を流れるのではないでしょうか?

03.チェンバロのためのイタリア協奏曲(BWV.971)の第1楽章。

04. 2つのヴァイオリンのための協奏曲第2番(BWV.1043)より第2楽章、もしくはチェンバロ協奏曲第3番(BWV.1054)

05.平均律クラヴィーア曲集第1巻より第2番「前奏曲 ハ短調」(BWV.847)

06.平均律クラヴィーア曲集第2巻より第3番「前奏曲 嬰ハ長調」(BWV.872)

07.平均律クラヴィーア曲集第1巻より第5番「前奏曲 ニ長調」(BWV.850)

08.カンタータ第140番「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」とくに有名なメロディで、クリスマスと直接関係はありませんが、暮れとかそうした時期をイメージしてしまいます。誰しも、このメロディに厳かな雰囲気を感じることでしょう。

09.平均律クラヴィーア曲集第1巻より第8番「前奏曲変ホ短調〜嬰ニ短調」(BWV.853)

10.三声のインヴェンション第15番ロ短調(BWV.801)

11.無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第3番ハ長調(BWV.1005)より第3楽章ラルゴ
Photo by Toshiharu Minagawa.

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