2020年の『HIDDEN FLOWERS』に続き、世界中に蔓延しているCOVID-19中、リモートなどを駆使して完成させたという、異例の（？）、それとも新しいスタイルが確立されたきっかけとなるアルバムではなかったのではないでしょうか？　このリリースには様々な意味で、遠く離れた日本のファンも安心させてもらったアルバムなので、いつもと違った「待ちに待った」作品集なのです。

　 Masakoさんとウィル（Imaginary Road Studios）とのコラボも2012年から始まりましたが、驚異的なスピードで、すでに6作目となり、 Kathryn Kaye（8作）、Ann Sweeten（7作） に続くアーティストになりました。

　オープニングの短いピアノ・ソロのあとに続く曲から、様々な楽器が織りなすタペストリーのような色彩が時には単色になり、重なりあい、混ざりあい、次々に表情を変えて聴き手を大海原へと誘ってくれます。逆光の光彩、波越しに映る雲の色空の色…　おおらかなピアノの奏でる音色にヴァイオリン、チェロ、ヴォーカルが重なりあいます。

　こうしたアンサンブルが、実は「せーの」と、顔を合わせてのレコーディングではなく、リモートだったり、別録りだったりという過程を経て製作されたそうです。コロナ渦という逆境にあっても、力を合わせて素晴らしい創作物が完成させることが出来たという経験と一体感が、ミュージシャンシップをさらに深めていったそうです。 そういう裏話を聴いたあとにこのアルバムに耳を傾けても、今まで通りに行なわれたとしか思えないような、完璧なアンサンブルを聴かせてくれるとは、さすがはウィルのプロダクションのもとに集まったミュージシャンの熱い思いがつまり、そしてファンにとって、これほど嬉しいアルバムはありません。