星と天界の音楽と(星のソムリエのブログ)

マイケル・ティルソン・トーマスのマーラー

 マーラーの交響曲をSACDで探していたところ、このボックスを見つけました。演奏、録音共に評判いい様です。個人的にはライヴは好きじゃないのですが、SACDなら例外で、「ライヴの雰囲気を伝えてもらえる」かなと思いチョイスしました。嬉しいことにマルチチャンネル仕様! 一連のマーラーレコーディングではグラミー賞を受賞しています。

 とあるネットショップで時期を見計らい「◯パーセントオフセール」に合わせてずいぶんと安価な価格で購入することができました。購入して安心できたのは良かったのですが、目の前に広がるどーんとマーラーの広大(というか深遠というか悠久というか、とにかく…)な交響曲群を前にしてたじろいでいます。すでにさまざまな指揮者(全集となっている)でのマーラーは、図書館を利用してずいぶん聴いて来たのですが、手元においておくなら高音質、マルチ・オーディオでと選んでみました。そのあとも、様々な指揮者がこのフォーマットによる全集をリリースしてくれています。国内盤による解説や、オーディオファイル的な読み物がないのが寂しいところ…

 まぁ、あわてずゆっくりと聴いていこうと思います。

グラミー賞

 

 ケーゲル指揮/ドレスデンのベートーヴェンを聴いた後に、その80年後に作曲されたマーラーの交響曲を聴くと、時代の隔たりを嫌でも感じてしまいます。演奏時間は倍、演奏人数も倍、音の広がりも同じSACDマルチというフォーマットで聴いているのに、グンと広がって来ました。マーラーはオペラ指揮者としての経験を自らの創作にも反映させ、実に立体的なサウンドを設計し、時代はこのSACDに上手く反映されています。まさに「私の時代」の到来でしょう。

  第1楽章の森のさえずりも、それぞれのソロ楽器が飛び出て来る感じは何ともいえません。第三楽章のクラリネットの音色など、SPを枠を突き抜けて歌い出す様は、聴いていてゾクゾクして来ます。こんな体験はSACDならでは!ただ、最終楽章の18分過ぎのホーンセクションの頭がややつぶれ気味でしょうか?
(2014/12/21)


第1番:2001年9月19-23日ライヴ・レコーディング




 ディスク2枚に分けられて収録されていますが、それはマーラーが意図した「第1楽章のあとに5分休憩」を念頭に入れたパッケージでしょう。第2楽章以降は2枚目に収録されています。このボックスで、第8番の次に聴きたかったのが、この第2番で、私の最も好きなマーラーの作品です。

 第4楽章のメゾのソロ「原光」の厳かなメロディが奏でられると、いよいよ完結に向かう気持ちが強くなり、思わず身体が震えてしまいそうです。特にメゾの音域が低くければ低いほど。それと寄り添うようにラッバ(教会のラッパの雰囲気、まるでバッハのような)。私はこのシーンを聴くたびに、カール・セーガン博士が古代アレキサンドリアの図書館を案内してくれるシーンを思い浮かべてしまいます。なにやら、このトランペットの音色には、バロック(ヘンデルやバッハなどの作品)そうした古の時間を感じさせてくれる不思議な力があるのかもしれません。
 そして爆発して始まる終楽章。エンディングまでは感動、感動が幾重にも押し寄せてくる感じです。しかし音には押し付けがましさや、迫ってくるような洪水と言う感じではなく、あくまでもホールのなりの良さが実感できるような、少々思ったほどの迫力がないかな? と感じてしまいました。しかし、オケは前から、合唱には取り囲まれるような感じのエンディングには、やはりこの曲の愛着と相まって感動の涙です。

サンフランシスコ交響合唱団(San Francisco Symphony Chorus)
ソプラノ:イサベル・バイラクダリアン
Isabel Bayrakdarian
メゾ・ソプラノ:ロレーン・ハント・リーバーソン
(Lorraine Hunt Lieberson)

第2番:2004年6月23-26日ライヴ・レコーディング



 さすがにSACDでも、この長大な交響曲が1枚に収めきれなかったのか、Disk1に第1楽章~第3楽章まで、Disk2に残りの3楽章と『亡き子をしのぶ歌』が収録されました。冒頭のホルンの咆哮は、ジャケットに映る作曲者が聞いたであろう山の雄叫びであり岩山に取り囲まれた大自然の語らいであっただろうことは、けっして難しいことではなく、誰でも感じ取ることができるのではないでしょうか? ソロ楽器もオケに埋もれることなく、演奏している場所ですら手に取るような位置にいて音楽を奏でています。第5楽章の少年合唱の瑞々しい響き、アルトの荘厳な歌声… オーディオ的にもこれ以上の情報を臨む必要がないと思えるほどの迫力。

 カップリングは『亡き子を忍ぶ歌』。第3番のアルトでも歌っているミシェル・デヤング。マルチ・チャンネルと言っても第3番とは違って、ほとんど前からのみで、後にホールトーンが響く程度。

2003年度第46回グラミー
♪Best Classical Album

第3番:2002年9月25-29日ライヴ・レコーディング
亡き子を偲ぶ歌:2001年9月19-23日 ライヴ・レコーディング




 


第4番:2003年9月24-28日ライヴ・レコーディング




 


第5番:2005年9月28-10月2日ライヴ・レコーディング




 このレコーディングは2001年9月12日、つまり「9・11」の直後だとのこと。ちょっとしたレクイエムにも似たイメージとしてとらえてしまいますが、実際には最初からプログラムとしては決まっていた演奏会を、事件の直後とはいえ、中止にせず行ったというわけです。とはいえ、聴衆は深い悲しみと、厳戒態勢の中で緊張していたのではないでしょうか。楽譜通りのハンマーも強烈な印象を打ち込むようです。
第6番:2001年9月12-15日ライヴ・レコーディング




2006年度第49回グラミー
♪Best Classical Album
♪Best Orchestral Performance
第7番:2005年3月9-12日ライヴ・レコーディング




 このボックスで一番聴きたかったのが、この第8番。いったい宇宙がどのように鳴り響くのかと。ライヴ会場の雰囲気をパッケージというSACDお得意の音場がくたびれることないサウンドで鳴り響いてくれました。特に声楽のソロパートは、ステージの前面(指揮者の背後)に立っていることがはっきりと聞き取ることができるほどクリア。そして神秘の合唱の直前にようやく登場する、そしてもっとも短い出番の「栄光の聖母」は、ステージ後方に立っているのでしょうか?他のソリストとは違ってかなり遠方の方、やや左に寄った上の方から聞こえてきます。こうした位置関係もSACDマルチのなせる業ではないでしょうか?
2009年度第52回グラミー
♪Best Classical Album
♪Best Choral Performance
♪Best Engineered Album, Classical
サンフランシスコ交響合唱団(San Francisco Symphony Chorus)
パシフィック少年合唱団(Pacific Boychoir)
サンフランシスコ少女合唱団(San Francisco Girls Chorus)

ソプラノ、罪深き女:エリン・ウォール
Erin Wall, MagnaPeccatrix)
ソプラノ、贖罪の女:エルザ・ファン・デン・ヘーヴァー
Elza van den Heever, Una Poenitentium)
ソプラノ、栄光の聖母:ラウラ・クレイコム
Laura Claycomb, Mater Gloriosa)
メゾ・ソプラノ、サマリアの女:カタリーナ・カルネウス
(Katarina Karnéus, Mulier Samaritana)
メゾ・ソプラノ、エジプトのマリア:イヴォンヌ・ナエフ
(Yvonne Naef, Maria Agegyptiaca)
テノール、マリア崇拝の博士:アンソニー・ディーン・グリフィー
Anthony Dean Griffey, Doctor Marianus)
バリトン、法悦の教父:クイン・ケルシー
Quinn Kelsey, Pater Ecstaticus)
バス、瞑想の教父:ジェイムズ・モリス
(James Morris, Pater Profundus)

第8番:2008年11月19-23日ライヴ・レコーディング
第10番:2006年4月6-8日ライヴ・レコーディング




 トーマスの『大地の歌』の声楽パートは、かつてバーンスタインが最初のレコーディングで起用した男声による演奏です。テノールはスチュアート・スケルトン(Stuart Skelton)、バリトンはトーマス・ハンプソン(Thomas Hampson)。
大地の歌:2007年9月26-29日ライヴ・レコーディング




 
第9番:2004年9月29-10月3日ライヴ・レコーディング

グスタフ・マーラーマーラーのSACD

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|2024年1月3日更新|

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