8月8日 四街道自然同好会
 『以前から、あの追分の所にある古木の樹洞の中には、何者かが住んでいるに違いないと思っていたのですが、昨夜仕事帰りの母から「スゴイ望遠鏡とか、大きなカメラを構えた人が2〜3人いたわよ」と聞かされたので、「やっぱり何か住んでいるな」という確信を持ちました。
母が「何かしらねぇ…フクロウかなぁ」と、ワクワクするようなことを言うから、「フクロウかムササビでもいるんじゃないかなぁ。明日、朝早く行ってみる?」と僕。その夜は、梅雨明けでもしたかのように久しぶりに星空が町を包み込んでくれました。

 翌朝5時に起きて母を誘おうと思って寝室を覗くと、幸せそうな顔をして(「いい夢見てんな…」)ゴロンと横たわっていたので、何だか起こすのも悪いなぁと思い、ひとりで行くことにしました。まだ5時だというのに外は昼間のように明るく、時計の針が5時を指しているなんてウソみたい。
 車で10分。その古木はもう何百年もの間、人々の行き交う姿を見守ってくれていたのでしょう。その神々しいまでの姿には、ただただ感動するばかりです。太い幹や奇妙な枝ぶりに、この古木が見続けてきた歴史の重みを感じずにはいられません。そんな古木にフクロウやムササビにとって、なかなか魅力的と思われる樹洞がいくつかあって、見るからに何かが潜んでいそうな雰囲気が漂っています。僕はその古木の前に車を止めて、姿が見えなくてもいいから、せめて声ぐらいはと思ってエンジンを切りました。もうセミが鳴いています。

 まずその樹洞とその周辺を双眼鏡で覗きました。上から覗けるような角度なら、ハッキリと中を覗けるのに、下から仰ぐようだと、なかなかわかりません。 「入口まで顔を出してくんないかなぁ」などと勝手なことを考えながら、そこから伸びる枝を一本一本追いかけてみます。

 「うわぁ、いたぁ!」思わず声を出して叫んでしまいました。まっ黄色のまん丸の目が、じっと僕の方を見据えています。フクロウではなくアオバズクです。枝の上に座るようにしてとまっていました。フクロウ類は、メスが抱卵をしている間、オスは洞の外で見張りをするので、たぶんこいつはオスでしょう。きっと僕の行動の一部始終を、木の上の葉陰越しから、ずっと監視をしていたのではないでしょうか。するどい黄色のリングをした目が、眼光鋭く僕の方を睨んでいます。あの目を見ていると、なんだか心の中を見抜かれているような気がして、さすがに“森の番人”とか言われるフクロウの仲間だけあって、小さいくせに貫禄がありました。

 それにしても、こんなに車の往来の激しいところに住みついて、何だか気の毒。。。それでなくても増え続ける車の排気ガスとか騒音は、子育てに良くない環境なのに、これでは親鳥もノイローゼになってしまうのではないでしょうか。僕が双眼鏡で覗いている間にも、頭上を飛び交うカラスとかヒヨドリなんかに警戒しつつ、車が来ると驚いたようにそっちを見ていました。
 僕たちの言う“環境保護”という意味は、人間だけの価値で求めてはならないのです。人間にではなく、環境に育てられた自然を守るためには、これ以上環境を崩さないことです。
毎年、この古木に同じ一族のアオバズクが来ているのかどうかはわかりませんが、彼らがここら辺のバロメーターになってくれていることは確かです。親から子に受け継がれる永遠の生命の詩を、これから先もずっとここで迎えたいと思わずにはいられません。

 とかなんとかかっこいいことを言っていますが、そんな心配をよそに彼らも周りの環境に順応しているようです。時々走り抜ける車に気を使うぐらいで、ほとんど木漏れ陽の中で居眠りをしています。だから最初のうちは、僕の行動を眺めていたようですが、僕が位置を変えて木の下に行っても見向きもしてくれません。「それでも見張りをしているつもりなの?」と思わず尋ねてしまいました。

 家に帰り、再び母の寝室を覗くと、今度は向こうを向いてゴロリとしているので、起きたら報告をすることにして、僕も出勤まで時間がまだあるから、もうひと眠り…。』

---四街道自然同好会・8月16日号(1995)/一番星のなる木


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