星と天界の音楽と(星のソムリエのブログ)



 歌劇の名前が、そのまま星座の名前のため、星座神話の中でも人気の高いアンドロメダをめぐる古代エチオピアの物語。しかし、オペラなど聴かない星ファンにも見つけやすいタイトルでありながら、ほとんど演奏、録音される機会の無い作品です。


Photo by Toshiharu Minagawa

 四季を通じて見上げる星空を見ていて気づくのは、秋の星空には明るい星が少ないこと。そのため「◯◯の大三角」が唯一存在しない季節になってしまいました。そのため、猛暑のあとの夜更け近くに東の空から昇って来る、これから紹介する物語の登場人物が勢揃いするにもかかわらず、視線はその先の明け方に顔を出す冬の星星へと目が移ってしまうのです。そんな寂しい領域だったからこそ、古代の星座を作り上げた職人たちは粋な計らいを残してくれました。すなわち、ひとつのエピソードに登場する人物が一堂に会する劇場のような設定で、星座を散りばめてくれたのです。ケフェウスカシオペア、その娘アンドロメダ、アンドロメダを人身御供の生け贄として人のみにしようとする化け物海獣、その現場に駆けつけたペルセウスと天馬ペガスス

 絵画の世界でも有名な題材な一つと成っている黄金の雨。ゼウスが天界から、ヘラの目を盗んで地上の女性たちを眺めていると、一人の美しい女性に目を付けました。アルゴスのアクリシオス王、一人娘のダナエです。父親から半ば幽閉された部屋に忍び込むためにゼウスが姿を変えたのが黄金の雨と言うわけ。なんなく思いを遂げたゼウスとダナエの間にはペルセウスと言う立派な男の子が生まれました。
 やがて孫に殺されるだろうと言うお告げに抗うために処置したはずの娘がいつの間にか赤ちゃんをあやす姿を見て驚いたのは言うまでもありません。二人は無情にも海に捨てられ波のまにまに、のちに凱旋するまでを古代エチオピアの物語と絡めて、星空に一大絵巻を繰り広げる英雄。カシオペヤとケフェウスの間に生まれた美しいアンドロメダとの間に沢山の子どもをもうけ、血縁的にはヘラクレスとも繋っています。大神ゼウスの血を引く半神(ヘロス)の物語で、ギリシア神話の中でも古い物語のひとつとされています。


アントニオ・ヴィヴァルディ(1578-1641)
 ガリレオと同郷、そしてガリレオが亡くなる前年に息を引き取った作曲家です。ヴィヴァルディで有名なのは、日本でバロック・ブームの火付け役となった『四季』

救出されたアンドロメダ
 1726年にヴェネツィアのオットボーニ枢機卿の主催によって初演された(とされる)セレナータ(祝祭的な題材によるオペラ)「救われたアンドロメダ」の世界初の全曲録音。 2002年の4月にヴェネツィアのベネデット・マルチェッロ音楽院の書庫から発見されたこの作品は、ヴィヴァルディの作曲であることが明らかなアリアが含まれているため、フランスの音楽学者オリヴィエ・フーレによって「ヴィヴァルディの未発見のオペラ」として発表されました。
 一方で、当時流行していた「パスティッチョ」(複数の作曲家の作品を題材に用いた「つぎはぎ」オペラ)である可能性もあり、その真の作曲者については現在も大いに論争を呼んでいるとか。(メーカーインフォメーション)

 このオペラは、ペルセウスがアンドロメダを救ったあとの 後日談のお話。



ミヒャエル・ハイドン(1737-1806)
 生前は兄のヨーゼフより絶大な人気を誇ったミヒャエル。

アンドロメダとペルセウス
 このミヒャエル・ハイドンのオペラは、ザルツブルクで初演後ほとんど演奏されなかったという秘曲。その曲は、想像を絶するほどのドラマティックなアリアとレチタティーヴォによっています。この演奏は、M・ハイドンが初演時に書いた、ドイツ語による台本によって演奏されています。ムジカ・アンティクァ・ケルンの創立者、バロック・ヴァイオリン奏者、指揮者でもある古楽のパイオニア、ラインハルト・ゲーベルが、ザールブリュッケン放送交響楽団(もちろんモダン・オケ)を指揮したライヴ録音。
(メーカーインフォメーション)




ジャン=バティスト・リュリ (1632-1687)
 イタリア人として生まれたリュリでしたが、「太陽王」ルイ14世と二人三脚、宮廷楽長としてフランスの社交界で人気を博したそうです。そのため1661年にフランス国籍を取得。国王の趣味もあってか、リュリはギリシア神話を代々とする作品を多数作曲しています。

ペルセウス
 クラゲを学名で「メドューサ」というのは、ギリシア神話の伝説からとられた名称。だからなかなかこのアルバムジャケットをデザインした人のセンスは良いですね(笑)

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