ここに紹介するヒルデガルト・フォン・ビンゲン(1098-1179)を意識し出したのは
ウィンダム・ヒルからリリースされた
テレーズ・シュローダー・シェーカーのアルバムからです
(女王の吟遊詩人)
ヒルデガルトの作品は「天体のハルモニア」と呼ばれ
ピュタゴラス(B.C.582 - B.C.496)の「天球の音楽」という
聞くことのできない音楽よりも
天体からのハーモニー(ハルモニア)として捉え
「鳴り響く現実の音楽こそが最もすばらしい」
というアリストクセノスの思想に近い感覚で
(彼女自身の言葉を借りるなら)
天啓を受け
産み落とした祈りの音楽なのです
アンティフォナ、レスポンソリウムなどの宗教曲を書き残しています。
|Tapestry.com| |
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長いこと親しんでいたビンゲンの作品集。わずか4名の女声によるシンプルなハーモニー。このアルバムの国内盤には『天空の光』というタイトルがつけられています。私がもっとも惹かれたのは、このころ興味を持っていたビンゲンの作品が収録されていたことです。また、彼女の書いたテキストを基に1952生まれのロバート・キアという作曲家が書いた曲も違和感無く挿入されています。
このページで紹介するアカペラ曲ではもっとも古い曲で、それだけで星空との仲介を果たしてくれているような気がしてなりません。特にビンゲンは幻視者というだけあって、中世の星空から何かの天啓を受けて作曲をしていたと考えています。 |
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米国のTapestryは4人組の女声グループです。『天空の光(CELESTIAL LIGHT)』は国内盤がリリースされましたが、2ndはレーベルも変わってしまったためか、国内盤がリリースされていません |
11,000の処女殉教者 / アノニマス4 |
アカペラのグループのなかでは最も親しんでいる4人組、アノニマス4によるビンゲン。しかもSACDです。神秘的な空間(教会)を体験するには持ってつけのフォーマットでは無いでしょうか。他に「ラス・ウエルガスの写本の聖歌集」なんかもSACDになっていて、澄んだ声がリスニング・ルーム(っても畳4畳半)にとけ込み、独特の時間を過ごすことができます。ジャケットに選ばれたのは「神の御業」生命の輪のヴィジョン。 |
火のみなもと / アノニマス4 |
ジャケットに描かれたヒルデガルトは有名な絵画です(女性幻視者ヒルデガルト「スキヴィアスの第一葉」)。これもSACDだったら良かったのに、とつくづく思います。 |
キャスリーン・シュローダー -1995- |
ヒルデガルド・フォン・ビンゲン(1098-1179)は歴史上最も古い時代の女性作曲家でだったそうです。先のアルバムでは彼女を“幻視者”と紹介しましたが、この頃の人たちは、ピタゴラスやプトレマイオスの宇宙観で事象を考えを持っていた人たちですから、天変地異による世の中の事象はすべて天啓として受け止めていたに違いありません。アルバムの雰囲気もまさに、作曲家が感じていた当時の思想を反映しているような感じです。ジャケットには、「卵形または火焔太鼓形の宇宙像」(スキヴィアスより)が使われました。 このアルバムは、キャサリン・ボットのアルバム同様基本はたった一人による歌唱ですが、時にはソプラノの二重唱になったり、ヴィオールなどの伴奏がついたりして、一辺倒になりそうな流れにアクセントをつけてくれています。ただ、実際には何人の歌唱という指定はなかったのかもしれませんが、当時は単旋律が主流でしたから、こうした様々な形態で聴くことができるのは嬉しいものです。(しかも同じ曲が々に聞こえなかったり…) |
エクスタシーの歌-1984- |
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おお、エルサレム(献堂式の宗教作品集)-1997- |
SAINTS-1997- |
「天体のハルモニア」と呼ばれる(呼んでいる?)シンフォニア。「オルド・ヴィルトゥトゥム」でも取り上げられていましたが、このアルバムでは全曲「天体のハルモニア」です。 |
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「エクスタシーの歌」から「シンフォニア」までの6枚のアルバムをボックス化。ファンにとってうれしい廉価盤ですが、さすがに解説なし、ジャケットがみな同じ… といったところがつらいかも。 |
2013年に突如として9作目の作品集が届けられました。まさに私が天界の音楽についての講座を行おうと考えていた矢先のリリースです。なんというタイミング! |
かつてのタペストリーを思わせる編成。こちらも2013年にリリースです。ジャケットのロゴにあるとおり、ベルリン・クラシックからのリリース。昔では考えられないようなジャケット(笑)。今までなら宗教的な絵画ばかりでしたが、こういったジャケットは内容は二の次でジャケ買いのリスナーもいらっしゃるのではないでしょうか。かくいう私も、ジャケットに惹かれて立ち止まった口ですが、ビンゲンを取り上げてくれていたのでついついポチッと。 |
典礼劇「オルド・ヴィルトゥトゥム(諸徳目の秩序)」-2013- |
私の中では、ジャズのイメージの強かったレーベルECMからのリリース。個人的にはヒリアード・アンサンブルやペルトは、ECM以外で聴いたことがないので、ビンゲンのリリースもすんなり。この典礼劇はセクエンツィアのレコーディングで聴いてきましたが、劇の途中で男声のレチタティーヴォのような声が入って臨場感がありました。ここには女声のみでまとめられ、神秘感(特に女声には!)が漂っています。 |