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邦題に『女王の吟遊詩人』と名づけられた、ウィンダム・ヒルの中でも特に異彩を放っているこのアルバムの主役はゴシック・ハープとソプラノ・ヴォイス。最初に彼女の存在を知ったのは、やはりウィンダム・ヒルからリリースされている『ウィンター・コレクション・2』で、そこでもハープ、フルートそしてヴォカリーズによるアンサンブル(とは言っても彼女1人による演奏)。アルバムの中でも1、2を争う美しさを放っていました。早速ソロ・アルバムがリリースされていたので、当時は輸入盤で買い求めたのは言うまでもありません。しかし、まだこのアルバムの良さがわかっていなかったために、すぐに手放してしまい(Datでは手元に残していたものの)、今になってネット・オークションで買い求めた次第。
実はその前にも、あるサイトでこのアルバムを掲示板に載せたところ「海外で買い求めた」といううしお様から連絡を頂き、晴れて音源を手にすることができました。その後「オークションに出品されてますよ」というメールを再びうしお様から頂き、落札を私に譲ってくれたのです。そして再び手元に戻ってきました。しかも今回は日本盤で1曲多い(Jesu dulcis memoria)から、喜びもひとしお。 ここまで私を魅了して止まないこのアルバムは、“中世ヨーロッパの弦楽器の研究家”というテレーズ・シュローダー・シェーカーが、たった一人で演奏をこなすというマルチタレントぶりを発揮し、ハープとヴォーカルをメインに、リコーダー、フルート、ドラム、ベルetc. それらすべてを演奏し多重録音によってアルバムを完成させています。 ウィンダム・ヒルにはこうしたマルチ・タレントを発揮するアーティストが多く、アルバムの雰囲気は、見事に邦題が歌っているように中世の吟遊詩人の歌になっています。ゴシック・ハープの、なんと美しい響きでしょうか。それを見事に伝えてくれるレコーディングも素晴らしさ! このアルバムでは、テレーズが中世の音楽の断片(6小節とか数小節だったり)や全体のテーマを結合させ、1曲として完成させるという、中世の作曲家と共作し当時の曲を蘇らせているのです。 私がこのアルバムを再認識するきっかけとなったのは、同じ中世にその名を残すヒルデガルド・フォン・ビンゲン(1098-1179)という女性作曲家の楽曲です。テレーズのアルバムでは演奏されていませんが、まさにハープとヴォーカルによるスタイルは、共に相手を思い起こさせてくれました。 彼女は、ウィンダム・ヒルからこのアルバムを1枚残すのみでしたが、彼女にとっては2ndアルバムにあたり、1984年に1st『SELEBRANT』を発表しています。ウィンダム・ヒルを離れた後は、CELESTIAL HARMONIESというレーベルから、ハープと彼女の美しい声による弾き語りでクリスマスアルバムなどをレコーディングし、地道に活動を続け、2枚のアルバムをリリースしています。 最近は彼女の音楽体験を生かして、モンタナにある聖パトリック病院でCHALICE OF REPOSE PROJECTを通じ、死を間近にした患者の枕元でハープを奏で、患者に少しでも安らぎを与える活動をしています。 |
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