星と天界の音楽と(星のソムリエのブログ)

こいぬ座
学名:Canis Minor
20時南中:3月11日

 

 この星座を宵の空に仰ぐようになると「春はすぐそこ」という感慨に浸ります。

 かつて石田五郎先生が

「シリウスの烈しい瞬きを寒風に凍てついた青氷とするならば、天の川の対岸左上方にやさしく輝くプロキオンは日差しにとけそめた薄氷にもたとえられよう」

  と表現した一節を思い出します(星の歳時記)。

 それほどオリオンやシリウスの瞬きから受けるイメージは、葉を落としきった木々の梢の間を渡る北風の冷たさと地上の風景と重なる寒々とした情景です。しかし僅かに天の川を挟んで穏やかに瞬くプロキオンの輝きを眺めていると、春の訪れを感じさせます。冬の到来をカペラのせわしない瞬きから感じるように、私はプロキオンのちょっと落ちついた輝きに春の足音を感じるのです。

 また、この星座の1等星プロキオンは、おおいぬ座のシリウス、オリオン座のベテルギウスと合わせて見事な正三角形を描き、冬の大三角を担っています。
 写真では右下のシリウスと共に収まっているこいぬ座ですが、見た目も性格も名前も、どれを取ってもおおいぬ座とシリウスと似ているというなんとも面白い星座です。

 おおいぬ座は、天の川に浸った暗い星々を結んでなんとか犬の形を想像できますが、こいぬ座にいたっては写真に写っている二つの星、α星プロキオンとβ星ゴメイサの二つしか目視することができず、このふたつの星から子犬の姿を想像することは、いくら想像力豊かな人であっても正直難しいでしょう(似たような星座にりょうけん座もあり、こちらも主星2つの星だけで二匹の猟犬を描いています)。しかし、他のページで何度も書いているように、"星座の目的は星座の絵姿に意味があるのではなく、あくまでも記憶の補助としての集合なので、その星座が、名前の通りの形になっている必要はないのです。

 とはいえ、この星座はプトレマイオスの頃から知られていた古い星座でした。というのも、このプロキオンという名前が「犬の前に」という意味のギリシア語で、これはまさしく犬星シリウスよりも先駆けて東の地平線から昇ってくることを差しています。

 当時、シリウスの昇りは酷暑の始まりである夏を告げる星として、忌み嫌われている星でした。これは、真夏の太陽が地上を焼き焦がすのは、太陽と同時にシリウスが昇ってきて、太陽の暑さを更に倍増させていると思われていたからで、そのためシリウス(焼き焦がすもの)という名前が付けられたぐらいです。そのため、シリウスよりも若干先に昇ってくるプロキオンを見て、近々訪れる夏という季節を知る重要な役割を与えられた命名でした。





晩夏の東天、シリウスに先駆けてプロキオン(「犬の前に」の意)が昇る
(2017/09/09 04h18m)

 こいぬ座はプトレマイオスの頃から知られていた古い星座でした。この星座の主星であるプロキオンという名前が「犬の前に」という意味のギリシア語で、これはまさしく犬星シリウスよりも先駆けて東の地平線から昇ってくることを意味しています。

 当時、シリウスの昇りは酷暑の始まりである夏を告げる星として、忌み嫌われている星でした。これは、真夏の太陽が地上を焼き焦がすのは、太陽と同時にシリウスが昇ってきて、太陽の暑さを更に倍増させていると思われていたからで、そのためシリウス(焼き焦がすもの)という名前が付けられたぐらいです。そのため、シリウスよりも若干先に昇ってくるプロキオンを見て、近々訪れる夏という季節を知る重要な役割を与えられた命名でした。



シリウスの青氷とプロキオンの薄氷
(2016/11/24 23h39m)
「シリウスの烈しい瞬きを寒風に凍てついた青氷とするならば、天の川の対岸左上方にやさしく輝くプロキオンは日差しにとけそめた薄氷にもたとえられよう」

 


ふたご星と並んで(2021/12/28)
 カストルとポルックスのようにβ星ゴメイサと仲良く並ぶ姿は微笑ましい春の風物詩となる



冬の大三角
(2022/10/21 01h10m)
Canon EOS 6D

〜 参考書 〜
透視版星座アルバム(藤井旭)
星座の神話(原恵)
星座の起源(近藤二郎)

★星座の結び方、絵図は藤井旭著『透視版 星座アルバム』を参考にしています。

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