星と天界の音楽と(星のソムリエのブログ)

ベートーヴェンは星空に何を求めたのか(交響曲編)
 ここではベートーヴェンの交響曲を紹介します。マーラーと同じで、全曲を順番通りに聴くと、作曲家の実像が、何を思い作曲に及んだのかが見えてくるのではないでしょうか。なので、ベートーヴェンにハマッてからは、(図書館で)全曲揃っている指揮者を優先的に借りていき、揃わない場合は複数の図書館でという具合にして探しまくっています。ここまでくると、自分でもオタクの領域に踏み入れてしまったのではと思ってしまいます(きっとそうなんだ)。

 とある作曲家の先生が大学の授業の中で「ベートーヴェンって、本当に凄いんです」と言葉を詰まらせるようにしてお話をされていました。それを聞いていた私は「そうそう!その言葉しか出てこない」と思いました。だから授業が終わって思わず「先生のおっしゃること、よくわかります」と言って、しばしベーとヴェン談義に花を咲かせたほどです。本当に言葉が出てこない。

 

1800

★♪交響曲第1番初演(ベートーヴェン)

1801

★ケレス(小惑星第1号、のちに準惑星)の発見(ピアツィ)

1803

♪交響曲第2番初演(ベートーヴェン)

1805

♪交響曲第3番初演(ベートーヴェン)
1807 ♪交響曲第4番初演(ベートーヴェン)
1808 ♪交響曲第5番、第6番初演(ベートーヴェン)
1809 ♪ハイドン没
1814 ♪交響曲第7番、第8番初演(ベートーヴェン)
1821/1822 ♪ピアノソナタ第32番作曲(ベートーヴェン)
1824 ★ヴェガの年周視差を発見、公表せず(ストルーベ)
1824 ♪ミサ・ソレムニス/交響曲第9番初演(ベートーヴェン)
1827 ♪ルードヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェン没

 


ジョン・エリオット・ガーディナー/オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティーク

交響曲 第1番 ハ長調 Op.21(1993/Live)
交響曲 第2番 ニ長調 Op.36(1991)
交響曲 第3番 変ホ長調 Op.55(1993/Live)
交響曲 第4番 変ロ長調 Op.60(1993)
交響曲 第5番 ハ短調 Op.67(1994/Live)
交響曲 第6番 ヘ長調 Op.68(1992)
交響曲 第7番 イ長調 Op.92(1992)
交響曲 第8番 ヘ長調 Op.93(1992)
交響曲 第9番 ニ短調 Op.125(1992)

 リューバ・オルゴナソヴァ(ソプラノ)、アンネ・ソフィー・フォン・オッター(メゾ・ソプラノ)
 アンソニー・ロルフ・ジョンソン(テノール)、ジル・カシュマイユ(バス)
 モンテヴェルディ合唱団

 初めてベートーヴェンの交響曲全集に手を出したのが、オリジナル楽器の響きに興味を持ちはじめた頃に図書館で見つけた(しかも全集で!)ガーディナー盤。キビキビとしたテンポと、オリジナル楽器特有の響きに星空に神の存在を見ようとしたベートーヴェンの思いに触れたような気がしたものです。なんでも1、3、5番には「どうしても聴衆の存在が不可欠」として、公開録音(1番、3番)と、ライヴ収録(5番)を行っているとか。その後、オリジナル楽器の響きに魅了された私は、ブリュッヘンと18世紀オーケストラの響きを発見し、モダンでは体験できない追体験を星空を眺めながら楽しめるようになりました。

 実際、星を眺めながら当時の楽器で奏でられる第九を聴いていると、今にして思えば、個人的にボイジャーに搭載したかった「第九の合唱部分のメロディ」が星と星の間から聞こえてくるようで、深い感動を覚えます。

 

パーヴォ・ヤルヴィ/ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメン

交響曲 第1番 ハ長調 Op.21(2006)
交響曲 第2番 ニ長調 Op.36(2007)
交響曲 第3番 変ホ長調 Op.55(2005)
交響曲 第4番 変ロ長調 Op.60(2005)
交響曲 第5番 ハ短調 Op.67(2004)
交響曲 第6番 ヘ長調 Op.68(2007)
交響曲 第7番 イ長調 Op.92(2004)
交響曲 第8番 ヘ長調 Op.93(2004)
交響曲 第9番 ニ短調 Op.125(2008)

クリスティアーネ・エルツェ(ソプラノ)、ペトラ・ラング(アルト)
クラウス・フローリアン・フォークト(テノール)、マティアス・ゲルネ(バリトン)
ドイツ・カンマーコーア (合唱)
交響曲第1番/第2番


 破竹の勢いのあるパーヴォ・ヤルヴィ(ネーメ・ヤルヴィ息子)のベートーヴェンは、ペーンライター版を使用、ベートーヴェンが生きていたころのオケを想定して小編成です(MTトーマスがロンドン交響楽団を指揮してレコーディングした編成も小編成でした)。そして古楽奏法と一部に古楽をを取り入れているので、錆てんじゃないかと思えるようなミョウチクリンな管楽器の音なんかがして、最近聴いた中ではもっとも面白い演奏、というよりも面白い音だなと思いました。そしてスピード感もあって、きびきびとした溌剌感がありました。でも来日した演奏会ではそうでもなかったようです(2006年〜2008年録音)

 そして2009年にはヴァイオリン協奏曲をジャニーヌ・ヤンセンとレコーディングを行い、ピアノ・ソナタ全集を完結し、名実ともに「ベートーヴェン弾き」となった仲道育代とピアノ協奏曲全集を完成させ、序曲を除けばベートーヴェンの主要オーケストラ作品は網羅し、ヤルヴィの描くベートーヴェン像が見えてきました。オーケストラはすべてドイツ・カンマーフィルです。

 同一アーティストが連作してくれていると、どうしても揃えたくなっちゃう悲しい性… 協奏曲は、交響曲で描き出したヤルヴィのベートーヴェンの延長線上にあって、ムラなく聴くことができます。この中で一番新しいヴァイオリン協奏曲だけがSACDじゃないのが恨めしいです(ヤンセンのキリリとしたジャケットがかっこいい)。


金聖響/オーケストラ・アンサンブル金沢

交響曲 第1番 ハ長調 Op.21(2006)
交響曲 第2番 ニ長調 Op.36(2003)
交響曲 第3番 変ホ長調 Op.55(2003)
交響曲 第4番 変ロ長調 Op.60(2009)
交響曲 第5番 ハ短調 Op.67(2004)
交響曲 第6番 ヘ長調 Op.68(2006)
交響曲 第7番 イ長調 Op.92(2003)
交響曲 第8番 ヘ長調 Op.93(2009)
交響曲 第9番 ニ短調 Op.125(2009)

森麻季(ソプラノ)、押見朋子(メゾ・ソプラノ)
吉田浩之(テノール)、黒田博(バリトン)
大阪フィルハーモニー合唱団


 まさかベートーヴェンの交響曲全集を求めるに当たり、日本人指揮者金聖響の録音にまで手を伸ばすとは思ってもみませんでした。それは西洋音楽の表現を、土壌も異なる東洋人にできるわけがないと、勝手にきめてかかってしまっていたからで(最近は古楽の世界で日本人アーティストの良さを理解しつつあります)、なんとももったいないことをしていたと反省しきりです。

 そんな目を向けるきっかけを与えてくれたのが、金聖響著(玉木正之共著)の『ベートーヴェンの交響曲』という一冊の本でした。指揮者自らが語るベートーヴェンとは。少なからず演奏論なんかも語っているのだろうと思っていたら、目からうろこが落ちっぱなしで、こうした解説が学校の教科書でも使われていたら、もっと早くからベートーヴェンが好きになっていたかもしれません。というわけで、真っ先におすすめが金聖響の全曲録音で、できることなら本と一緒に進めて聴くといいです。
 さて、そんな金聖響の振ったベートーヴェンですが、オーケストラ・アンサンブル金沢というローカルなオーケストラの表現力を最大限に生かしつつ、随所に古楽奏法を取り入れて新鮮なベートーヴェンとなっていると思います。本の中で鬼才ロジャー・ノリントンが「なんでそんなに遅いんだ?」と質問するやり取りが書かれていて、読みながら聴く、聴きながら読むことをしてあっという間の金ワールドを過ごすことが出来ました。

 CDも本も、資料はすべて図書館を利用していますが、CDを借りて気づいたのがソリストに森摩季さんが参加していること。先日ブリテンの『戦争レクイエム』でソリストとして舞台に立つ姿を拝見してから、なんとなく注目していた歌手です。さすがに人気歌手だからなのか、声量のちがいなのか、ソプラノだから声が通るのか、最終楽章では際立って良く通る声を披露しています。単に私が森さんだけに注目していた、と言えるかもしれませんが(笑)。




ギュンター・ヴァント/北ドイツ放送交響楽団

交響曲 第1番 ハ長調 Op.21(1986)
交響曲 第2番 ニ長調 Op.36(1988)
交響曲 第3番 変ホ長調 Op.55(1984)
交響曲 第4番 変ロ長調 Op.60(1988)
交響曲 第5番 ハ短調 Op.67(1987)
交響曲 第6番 ヘ長調 Op.68(1985)
交響曲 第7番 イ長調 Op.92(1987)
交響曲 第8番 ヘ長調 Op.93(1987)
交響曲 第9番 ニ短調 Op.125(1986)

 イーディス・ウィーンズ(ソプラノ)、ヒルデガルト・ハルトヴィヒ(アルト)
 キース・ルイス(テノール)、ローラント・ヘルマン(バス)
 ハンブルク国立歌劇場合唱団 & 北ドイツ放送合唱団

 エソテリックのSACDボックスとしてリリースされましたが、この頃、私はまだSACDに縁がなく、またヴァントがベルリン・フィルとライヴ録りしていたブルックナーしか知らなかったので、このセットは最近図書館で借りて視聴したものです(ありがたや図書館)。
 全ての曲に言えることですが、ヴァント、なんと若々しく重厚(ゴリゴリ感がショルティ/シカゴを思わせる)なんでしょうか。そのゴリゴリ感もSACDなので押しつげがましいところがなく、リスニングルームの空気になじんでいました。同じくSACDのヤルヴィ盤ともことなる空気感です。こういうのは持っていたいディスクですね(オークションなんかでは高値が付けられてます)。



ヘルベルト・ケーゲル/ドレスデン・フィルハーモニック


交響曲 第1番 ハ長調 Op.21(1986)
交響曲 第2番 ニ長調 Op.36(1988)
交響曲 第3番 変ホ長調 Op.55(1984)
交響曲 第4番 変ロ長調 Op.60(1988)
交響曲 第5番 ハ短調 Op.67(1987)
交響曲 第6番 ヘ長調 Op.68(1985)
交響曲 第7番 イ長調 Op.92(1987)
交響曲 第8番 ヘ長調 Op.93(1987)
交響曲 第9番 ニ短調 Op.125(1986)

 アリソン・ハーガン(ソプラノ)、ウテ・ヴァルター(コントラルト)
 エバーハルト・ビュヒナー(テノール)、コロシュ・カヴァトシュ(バス=バリトン)
 ベルリン放送合唱団 & ライプツィヒ放送合唱団

私はSACDを視聴していないので、その音場を体験していませんが、今回2014年にリリースされるブルーレイ・オーディオ盤でSACDと同じサウンドにプラスして5.1chを味わうことが出来ました。ショルティの『リング』が一枚に収まるのに、このセットは2枚に分けているのは、2ch PCMと4ch DTS、5.1ch DTSという音声を収録しているからでしょうか。ともかく、このメディアでのベートーヴェンは初の体験。

 第1番の最初の音に包まれた瞬間、いったいこの録音はいつものもなんだろうと驚いてしまいました。パッケージには1982から1983年にかけてとしか表記されていませんが、一応はデジタル初期の音のようです。せっかく5.1が作られたので、私はそれで聴いていますが、冨田氏の全方向性のシンセならそれでも良いのでしょうが、4chと5.1chの双方を聴き比べてみたら、私には後者(5.1ch)の方がしっくりきました。
 それにしても、このフアーッとした浮遊感、音以外の雰囲気はとてもオーディオという感じがしませんでした。

 ついでながら私が所持している名盤ガイドの本には、この演奏に関して誰も推薦していませんでした。

 

リッカルド・シャイー/ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

交響曲 第1番 ハ長調 Op.21(2007)
交響曲 第2番 ニ長調 Op.36(2007)
交響曲 第3番 変ホ長調 Op.55(2008)
交響曲 第4番 変ロ長調 Op.60(2009)
交響曲 第5番 ハ短調 Op.67(2009)
交響曲 第6番 ヘ長調 Op.68(2009)
交響曲 第7番 イ長調 Op.92(2008)
交響曲 第8番 ヘ長調 Op.93(2009)
交響曲 第9番 ニ短調 Op.125(2008)

カテリーナ・ベラノーヴァ(ソプラノ)、リリー・パーシキヴィ(メゾ・ソプラノ)
ロバート・ディーン・スミス(テノール)、ハンノ・ミューラ=ブラッハマン(バス・バリトン)
ゲヴァントハウス合唱団、ゲヴァントハウス児童合唱団、MDR放送合唱団

 いきなりボックスでリリースしてきたリッカルド・シャイーのベートーヴェン。全体的にテンポが速く、全曲をまとめて聴いてもあまり疲れることなく聴ききってしまうのはその個性的な演奏のせい?

 


レナード・バーンスタイン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

交響曲 第1番 ハ長調 Op.21(1978)
交響曲 第2番 ニ長調 Op.36(1978)
交響曲 第3番 変ホ長調 Op.55(1978)
交響曲 第4番 変ロ長調 Op.60(1978)
交響曲 第5番 ハ短調 Op.67(1977)
交響曲 第6番 ヘ長調 Op.68(1978)
交響曲 第7番 イ長調 Op.92(1978)
交響曲 第8番 ヘ長調 Op.93(1978)
交響曲 第9番 ニ短調 Op.125(1979)

ギネス・ジョーンズ(ソプラノ)、ハンナ・シュヴァルツ(アルト)
ルネ・コロ(テノール)、クルト・モル(バス)
ウィーン国立歌劇場合唱団

 

クラシック音楽を聴きはじめた頃、まだまだお小遣いを「音楽」に回せなかった(もっぱら、星とかアウトドア関連へと流れ…)ので、店頭に置いてあるレコードの無料カタログをもらって、眺めて音楽を楽しんでいました。そんな中で印象的なジャケットは今でも良く思い出しては、当時の環境などを思い出したりして聴く以外の楽しみを味わったりしています。
 そんな中でも印象的だったベートーヴェンの交響曲シリーズはなんといってもカラヤンの数字だけのジャケットシリーズ。当時はこうした一連のシリーズが多かったから、視覚的にも楽しめた時代でした。 バーンスタインのベートーヴェンもしかり。とくに同じグラモフォンからカラヤンVSバーンスタイン的な構図で、ベルリン・フィルVSウィーン・フィルといった対決(笑)もありました。まぁ、当時はそんなところまで木が回っていませんでしたけど。

 そんな昔の音源が、2017年には5.1chで、しかもBD1枚に収まってしまうとは驚き(ニーベルングの指輪以来)。このボックスは2018年がバーンスタインの生誕100周年に当たることからの企画のようです。

 

ジョス・ファン・インマゼール/アニマ・エテルナ

交響曲 第1番 ハ長調 Op.21(2007)
交響曲 第2番 ニ長調 Op.36(2006)
交響曲 第3番 変ホ長調 Op.55(2006)
交響曲 第4番 変ロ長調 Op.60(2005)
交響曲 第5番 ハ短調 Op.67(2007)
交響曲 第6番 ヘ長調 Op.68(2006)
交響曲 第7番 イ長調 Op.92(2006)
交響曲 第8番 ヘ長調 Op.93(2005)
交響曲 第9番 ニ短調 Op.125(2007)

アンナ・クリスティーナ・カーボラ(ソプラノ)、マリアンネ・ベアーテ・シェラン(アルト)
マルクス・シェーファー(テノール)、トーマス・バウアー(バス)
アニマ・エテルナ合唱団
 このベートーヴェンは古楽奏者ジョス・ファン・インマゼール が率いるアニマ・エテルナによる全集で、こつこつとCDがリリースされ、ボックス化されました。

私にとってはフランス・ブリュッヘン、ジョン・エリオット・ガーディナーに次ぐ古楽のベートーヴェンです。

 インマーゼルはCDボックス(KDC-5044/49)の解説の中に以下のように記しています。

「ベートーヴェンは西洋文明の重要な作曲家として周知されている。1977年、宇宙探査衛星ボイジャー1号と2号は宇宙に飛び立つにあたり、地球外文明と遭遇した時コミュニケーション手段になるかもしれないと、彼の音楽を積みこんだのだった!多くの人びとが考えるベートヴェンとは「近代」で一番の作曲家であり、ナポレオンさえわき役に回すヒーローであり、また、絶対的な天才であり、スーパーマンである
(翻訳:高橋祐司)」

 インマーゼルの言う「彼の音楽」とは、1977年にNASAから相次いで打ち上げられた惑星探査機ボイジャー1号と2号に搭載された『ゴールデン・レコード』のことです。これはOZMA RECORDSから2017年に40周年を記念して復刻されました。ちなみにボイジャーに積み込まれた「彼の音楽」は、オットー・クレンペラーの指揮した交響曲第5番第1楽章です。

「フランツ・リスト編曲のピアノ独奏版」ユーリ・マルティノフ

交響曲 第1番 ハ長調 Op.21(2012)/ 1837年製エラール
交響曲 第2番 ニ長調 Op.36(2011)/ 1837年製エラール
交響曲 第3番 変ホ長調 Op.55(2013)/ 1867年製ブリュトナー
交響曲 第4番 変ロ長調 Op.60(2014)/ 1867年製ブリュトナー
交響曲 第5番 ハ短調 Op.67(2014)/ 1867年製ブリュトナー
交響曲 第6番 ヘ長調 Op.68(2011)/ 1837年製エラール
交響曲 第7番 イ長調 Op.92(2012)/ 1837年製エラール
交響曲 第8番 ヘ長調 Op.93(2013)/ 1867年製ブリュトナー
交響曲 第9番 ニ短調 Op.125(2015) / 1867年製ブリュトナー

ユーリ・マルティノフ(ピアノ)
 古楽でのレコーディングは多いものの、実際はレプリカが多く(作曲家自身の所有していた楽器などは、展示のための保存が主で、演奏できないからレプリカが作られ、それを用いるのは当然と言えば当然)、解説とか詠んでがっかりさせられることがありますが、このレコーディングは、ピアノが製作された当時のオリジナルを演奏しているので、古楽ファンとしては、どんなにギシギシとノイズが入ろうが、ビョ〜オオンといったような奇妙で狂ったチューニングに聞こえようが関係なく、それだけで時間を越えた感覚の気分になるので、オリジナルで演奏されたものを選びたくなります(で、それを聴きながら星を眺めるなんて、最高ですねー)。

 

フランス・ブリュッヘン/18世紀オーケストラ

交響曲 第1番 ハ長調 Op.21
交響曲 第2番 ニ長調 Op.36
交響曲 第3番 変ホ長調 Op.55
交響曲 第4番 変ロ長調 Op.60
交響曲 第5番 ハ短調 Op.67
交響曲 第6番 ヘ長調 Op.68
交響曲 第7番 イ長調 Op.92
交響曲 第8番 ヘ長調 Op.93
交響曲 第9番 ニ短調 Op.125

レベッカ・ナッシュ(ソプラノ)、ウィルケ・テ・ブルンメルストローテ(メゾ・ソプラノ)
マルセル・ビークマン(テノール)、ミヒャエル・テーフス(バス)
ラウレンス・コレギウム&カントライ

2011年Liveレコーディング(ロッテルダム)

 ブリュッヘン最晩年のベートーヴェン。最初のは1984年から8年掛けてレコーディングされたフィリップス盤でしたが、今回は全曲2011年10月6日〜10月16日という短期間でのレコーディング、しかもSACD!2013年4月に、初めて生のブリュッヘンを聴く機会がありましたが、すでに彼は自身で経つことも歩くこともできず、介助と車いすでステージに登場しました(演目はショパン)。私がベートーヴェンを聴きはじめたのがガーディナーからでしたが、同じピリオド演奏として、このブリュッヘンやホグウッドの演奏をあちこちの図書館で借りて楽しんでいました。

 

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以下、個別な番号で…

カルロス・クライバー/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
交響曲 第7番 イ長調 Op.92(1976)

 ベートーヴェンにのめり込むきっかけを作ってくれたのは、何を隠そうカール・セーガンの『コスモス』で唯一、全楽章が使われていたのが交響曲第7番でした(とはいえ、他のベートーヴェンの曲は一切使われてはいないのです)。しかし、誰の演奏を使用していたのかわからなかったので、とりあえずカタログなんかでは大絶賛のカルロス・クライバー盤をチョイス。それがまた大正解で(番組に使われていたものではなかったのですが)、「ベートーヴェンってこんなに面白いかったのか!?」と認識させてくれたレコードだったからです。

 

カルロ・マリア・ジュリーニ/シカゴ交響楽団
交響曲 第7番 イ長調 Op.92(1976)

 で、結局『コスモス』の中で使われていた演奏を探し当てたときにはすでに遅く、答えは既に廃盤になっていたジュリーニの振ったシカゴ交響楽団のレコードでした。そしてSACDとして復活した頃には、この曲のベストとしてクライバーの演奏が能にこびりついてしまった後だったのです。発見したときは嬉しかったのですが、ちょっと複雑な心境…

 

クラウディオ・アバド/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
交響曲 第9番 ニ短調 Op.125(1986)

 ガブリエラ・べニャチコヴァー(ソプラノ)、マルヤーナ・リポヴシェク(メゾ・ソプラノ)
 エスタ・ヴィンべルイ(テノール)、ヘルマン・プライ(バス)
ウィーン国立歌劇場合唱団

 まだアナログが主流だった時代のジャケットは、本当に芸術的なデザインがたくさんありました。特にドイツ・グラモフォンのシリーズは結構音楽以上(笑)に思えるものもあって、アバドのベートーヴェン・シリーズもクリムトの作品をうまく取り込んだ飾っておきたくなるようなデザインでした。
 アバドとウィーン・フィルがまだうまくいっていた頃の全集からの一枚で、このあとベルリンに移ってしまって以降、一度として共演がなくなってしまいました(ウィーン・フィルから「有名になって勉強をしなくなったから」呼ばなくなったそうです。中野雄著『指揮者の役割』に詳しい)。
 そのベルリンとの共演盤としてリリースされたのが、ウィーンからちょうど10年後の1996年にレコーディングされたアバドの誇らしげなジャケットが良い ソニー盤。珍しく新譜で、国内盤で買っちゃいました。買っちゃいましたというのもおかしな表現ですが、このあとにアバドは2度ベルリンと全集(ビデオ版を含めると都合3回も)をレコーディングしていますが、このソニー盤は単発でのレコーディング。ジャケットでいえば2000年以降にアバドのモノクロのポートレイト(まるでアントン・コービンが撮ったと思えるほど)をあしらったシリーズが好きですね。

 

ヴィルヘルム・フルトヴェングラー/バイロイト祝祭管弦楽団
交響曲 第9番 ニ短調 Op.125(1951)

 エリザベート・シュヴァルツコップ(ソプラノ)、エリーザベト・ヘンゲン(アルト)
 ハンス・ポップ(テノール)、オットー・エーデルマン(バス)
バイロイト祝祭合唱団

 海外ではベートーヴェンの第九は、何か記念(祝祭)的な催しのときでしか演奏しないとか。確かにこの曲の持つ芸術的観点からいえば、日本で毎年年末にあちこちで繰り広げられる「お祭り的」とは異なる意味を持っているのもうなづけます。私も、このフルトヴェングラーの演奏に関しては年末のトリとして聴くことが多く、この盤はめったやたらと掛けることはありません。「ここ!」という時にだけとっておきたい特別な演奏だからです。
  第4楽章の大詰め、指揮者もオーケストラもソリストも合唱団も聴衆も、そしてそれを時代を超えて聴いている私も、何がなんだかわからぬ興奮に包まれて涙を流している、そんな感動を、おいそれと毎日の生活に加えられないのです。

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