特に初期のソナタはハイドン、モーツァルトといった先輩たちの影響を受けた古典的な作風ですが、中期以降のソナタにはベートーヴェンにしかかけない作風へと変貌していきます。私が最初にベートーヴェンのピアノソナタに手を出したのはアルフレート・ブレンデルの録音でした(図書館でまとまって全集を揃えられそうだったから)。そのきっかけは「ジャケットの雰囲気に統一感があって興味を引いた」から、でした。しかし全曲に手が届かず。そのあとに、中道郁代さんのソナタ全集でした。こちらはあちこちの図書館を渡り歩いて全集となり(祝)、ピアノ協奏曲(P.ヤルヴィ)ともども全集としてそろいました。こちらはSACDというフォーマットで楽しませてもらいました。ブレンデルはラトルとの競演盤。そのあとはアシュケナージのソナタ全集、ショルティ/シカゴというデッカならではの組み合わせでレコーディングされた協奏曲全集と集まり出し、聴き比べる楽しみとともに楽聖の深みにはまっていく自分に気づきました。 しかしなんといっても私が興味をそそられたのが、バドゥラ=スコダのピアノソナタ全集。これはいきなりボックスとしてリリースされていますが、それもそのはず、ビクターが自信を持ってリリースするXRCDという高音質のフォーマットだからです(だからかなり高価)。しかしなによりも、星空の下で聴くことを考えると、これ以上ふさわしい全集があろうか、と思える企画で、ベートーヴェンが生きていた時代の、コピー楽器ではなくを、当時制作されたオリジナル楽器を奏でた全集なのです。
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「ピアノ・ソナタ全集」スコダ
ピアノ・ソナタ 第1番 ヘ短調 Op.2-1(1795) |
1790年頃 ヨハン・シャンツ |
ピアノ・ソナタ 第2番 イ長調 Op.2-2(1795)
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1790年頃 ヨハン・シャンツ |
ピアノ・ソナタ 第3番 ハ長調 Op.2-3(1795) | 1790年頃 ヨハン・シャンツ |
ピアノ・ソナタ 第4番 変ホ長調 Op.7(1796/97) | 1795/6年頃 ジョン・ブロードウッド |
ピアノ・ソナタ 第5番 ハ短調 Op.10-1(1796/98) | 1790年頃 ヨハン・シャンツ |
ピアノ・ソナタ 第6番 ヘ長調 Op.10-2(1796/98) | 1790年頃 ヨハン・シャンツ |
ピアノ・ソナタ 第7番 ニ長調 Op.10-3(1796/98) | 1790年頃 ヨハン・シャンツ |
ピアノ・ソナタ 第8番 ハ短調 Op.13(1798/99) | 1800年頃 アントン・ワルター |
ピアノ・ソナタ 第9番 ヘ短調 Op.14-1(1798/99) | 1795/6年頃 ジョン・ブロードウッド |
ピアノ・ソナタ 第10番 ヘ短調 Op.14-2(1798/99) | 1790年頃 ヨハン・シャンツ |
ピアノ・ソナタ 第11番 変ロ長調 Op.22(1799/1800) |
1795/6年頃 ジョン・ブロードウッド |
ピアノ・ソナタ 第12番 変イ長調 Op.26(1800/01) | 1800年頃 アントン・ワルター |
ピアノ・ソナタ 第13番 変ホ長調 Op.27-1(1800/01) | 1800年頃 アントン・ワルター |
ピアノ・ソナタ 第14番 嬰ハ短調 Op.27-2(1801) | 1800年頃 アントン・ワルター |
ピアノ・ソナタ 第15番 ニ長調 Op.28(1801) | 1810年頃 ヨハン・カスパール・シュミット |
ピアノ・ソナタ 第16番 ト長調 Op.31-1(1801/02) | 1810年頃 ヨハン・カスパール・シュミット |
ピアノ・ソナタ 第17番 二短調 Op.31-2(1801/02) | 1810年頃 ヨハン・カスパール・シュミット |
ピアノ・ソナタ 第18番 変ホ長調 Op.31-3(1801/02) | 1820年頃 ゲオルク・ハシュカ |
ピアノ・ソナタ 第19番 ト短調 Op.49-1(1797) | 1816年頃 ジョン・ブロードウッド |
ピアノ・ソナタ 第20番 ト長調 Op.49-2(1796) | 1816年頃 ジョン・ブロードウッド |
ピアノ・ソナタ 第21番 ハ長調 Op.53(1803/04) | 1816年頃 ジョン・ブロードウッド |
ピアノ・ソナタ 第22番 ヘ長調 Op.54(1804) | 1816年頃 ジョン・ブロードウッド |
ピアノ・ソナタ 第23番 ヘ短調 Op.57(1804/05) | 1816年頃 ジョン・ブロードウッド |
ピアノ・ソナタ 第24番 嬰へ長調 Op.78(1810) | 1820年頃 ゲオルク・ハシュカ |
ピアノ・ソナタ 第25番 ト長調 Op.79(1809) | 1820年頃 ゲオルク・ハシュカ |
ピアノ・ソナタ 第26番 変ホ長調 Op.81a(1809/10) | 1820年頃 ゲオルク・ハシュカ |
ピアノ・ソナタ 第27番 ホ短調 Op.90(1814) | 1820年頃 ゲオルク・ハシュカ |
ピアノ・ソナタ 第28番 イ長調 Op.101(1815/16) | 1824年頃 コンラート・グラーフ |
ピアノ・ソナタ 第29番 変ロ長調 Op.106(1817/18) | 1824年頃 コンラート・グラーフ |
ピアノ・ソナタ 第30番 ホ長調 Op.109(1819/20) | 1824年頃 コンラート・グラーフ |
ピアノ・ソナタ 第31番 変イ長調 Op.110(1820/21) | 1824年頃 コンラート・グラーフ |
ピアノ・ソナタ 第32番 ハ短調 Op.111(1821/22) | 1824年頃 コンラート・グラーフ |
パウル・バドゥラ=スコダ(ピアノ)
※()内の数字は作曲年
「ピアノ・ソナタ全集」スコダ パウル・バドゥラ=スコダ(ピアノ) |
現代のピアノは88鍵が当たり前ですが、ピアノが発明された当時は今よりも少ない数だったそうです。新し物好きのベートーヴェンは、ピアノの新作が発表されると、そのピアノの鍵盤の数にあわせた作品を作曲していったそうです。 最近は古楽でのレコーディングは多いものの、実際はレプリカが多く(作曲家自身の所有していた楽器などは、展示のための保存が主。重要文化財になっていたり。そうした楽器は演奏するできないから、レプリカが作られ、それを用いるのは当然と言えば当然)、解説とか読んでがっかりさせられることがあります。 このパウル・バドゥラ=スコダのレコーディングは、ピアノが製作された当時のオリジナルを選んで演奏しているので、古楽ファンとしては、どんなにギシギシとノイズが入ろうが、ビョ〜オオンといったような奇妙で狂ったチューニングに聞こえようが関係なく、それだけで時間を越えた感覚の気分になるので、オリジナルで演奏されたものを選びたくなります(で、それを聴きながら星を眺めるなんて、最高ですねー)。 |
「ディアッベリ変奏曲」ゲイリー・クーパー
ゲイリー・クーパー(ピアノ) |
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ピアノで変奏曲といったら、バッハのゴルトベルグが真っ先に上げられるかと思いますが、変奏曲にかけてはベートーヴェンも引けを取らぬ腕の持ち主であった様ようです。1820年代に作曲された「ディアッベリ変奏曲」。録音のために選ばれたのは1822年製のアントン・ワルターという銘器。 このアルバムの、わたし的な注目度は、この変奏曲が完成した年に併せて製作されたかのようなアントン・ヴァルターのフォルテピアノ(1822年製)。先のスコラの演奏しているピアノともかぶらずに、古楽ファンにとっては手を出して当然のアルバムと言えるでしょう(笑)。しかもSACD! |
「フランツ・リスト編曲のピアノ独奏版」ユーリ・マルティノフ
ユーリ・マルティノフ(ピアノ) ※(作曲年/リスト編曲年) |
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ベートヴェン崇拝者の一人だったフランツ・リストは、あまたあるオーケストラ作品をピアノ独奏、もしくは二台のため(こちらはおそらく出版を狙った?この当時、連弾がブームだったから楽譜は売れたらしい…)に編曲が行なわれました。その中でも、ベートーヴェンの交響曲は全曲がピアノ編曲されました。私が最初に聴いたのは「超絶技巧の持ち主」と讃えられたシプリアン・カツァリスの全曲集(テラークから順次リリースされていたのを思い出します)。それ以前にもグレン・グールドなどの演奏もありました。 パウル・バドゥラ=スコダのレコーディングは、ピアノ・ソナタが作曲された頃に製作された楽器を極力選んでくれているようですが、このリストが編曲した交響曲全集は、リストが1865年頃に編曲した辺りに制作されたピアノが選ばれています。 |
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