ウィンダム・ヒルの掲示板


Photo by Toshiharu Minagawa

GUITAR SAMPLER / Windham Hill Artists
Produced by William Ackerman and Dawn Atkinson.



   

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01. On The Way / David Cullen
David Cullen ; Guitar

02. Prelude From The Bridal Suite(ブライダル組曲) / Eric Tingstad
Eric Tingstad ; Guitar

03. Sun And Water(太陽と水) / Danny Heines
Danny Heines ; Guitar / Eugen Friesen ; Cello

04. Night Crossing / John Doan
John Doan ; Harp Guitar

05. No City Lights(暗い街角) / James Gordon
James Gordon ; Guitar

06.The Empero's Choice(皇帝の選択)/ Chris Proctor
Chris Proctor ; Guitar / Paul Machlis ; Synthesizer

07. The Handing Down / Edward Gerhard
Edward Gerhard ; Guitar

08. Blue Ridge / Bruce BecVar
Bruce BecVar ; Guitar

09. The Silver Plume Waltz / Bill Mize
Bill Mize ; Guitar

10. Andecy / Andrew York
Andrew York ; Guitar

11. Cheyenne / Peter Maunu
Peter Maunu ; Guitar, Guitar Synthesizer

 


 1985年に味気の無いタイトル『PIANO SAMPLER(邦題は「翔」としてリリースされたオムニバスの姉妹作となる今作はピアノからウィンダム・ヒルの顔のもう一つの顔とも言うべきギターを特集しています。タイトルも原題は『WINDHAM HILL GUITAR SAMPLER』で、ピアノ版と同じように邦題がつけられています。その名も『響』。
 ファーストプレスでは原盤に合わせて、ギターという楽器のクローズアップのポートレイトが使われていました。レコード会社が元気なときは日本独自によるオリジナルジャケット(街角をあしらったモノクロ)でもリリースされていましたが、それだけでもかなりイメージが違ったと思います。

 ピアノサンプラーとは違って、このアルバムに登場するギタリストたちはくの新人ではなく、すでに活動歴のあるアーティストたちが揃っていることでしょうか。この中から(ウィンダム・ヒルから)ソロ・アルバムが制作されることはありませんでしたが、今でもアッカーマンと活動を共にしているアーティストや、ソロやバンド活動を行っているアーティスト、開花したアーティストなどの演奏を聴くことができます。それぞれのアーティストのホームページを訪ねてみるのも楽しいかもしれません。ここからグラミーを受賞したアーティストが半数以上いるのも特筆すべきかもしれません(グラミーだけが評価の対象というわけではありませんが)。

 また、全曲をアッカーマンとアトキンソンがプロデュースを行っていますが、個性のあるアーティストたちばかりなので、アルバム一枚としての統一感(あくまでも音にこだわると)がないのは仕方のないことでしょう。ギターといっても、いわゆるアコースティック・ギターにもガット弦を張ったクラシカル・ギターとフォーク・ギターでは音色や、その奏法(スタイル)が異なるし、エレキギター(2、5、11)を奏でるアーティストが収録されバラエティに富んでいるから当然といえば当然。ハープ・ギターのJohn Doneも、マイケル・ヘッジスとはまったく異なるスタイルで、このギターの音色で聴き手を魅了してくれます(というか、マイケルの方が独創的なのかもしれません)。収録されている曲のほとんどは、ソロですが、3や6のようにゲストプレイヤーを迎えてレコーディングされている曲もあり、相変わらず型にはまっていません(笑)



 この頃(1980年代中頃)のポピュラーミュージックシーンでも、アコースティック・スタイルが一種のトレンドとなり、MTVアンプラグドでは人気が頂点に達しました。しかも、ボブ・ディランがMTVアンプラグドに登場したときは意外な事と思いました。というのは、もともとがフォーク(ブルース)シンガーとしてデビューしたディランが、なにも今更、という感じで。ディランもコンサートでは合間や、アンコールでフォークギターを使うことが多かったのですが、ここでは全曲アコギ(エレアコ)でやってくれています。でも一人でステージに立ってもらいたかった(ファンとして~)

 そのアンプラグドブームに火が付く前、特にメタルシーンではボン・ジョヴィがアウトローのイメージで歌った「Wanted Dead Or Alive」(シングルのボーナストラックに収められたアコーステックヴァージョンがカッコイイ)が火付け役となり、その後、ちょっとしたアコースティックブームになりました。
 ステージでも1980年代後半から“アコースティックセット”をウリにするアーティストも数多く存在していました。U2、メタリカ、モトリー・クルー、デフ・レパード、パール・ジャム etc.←見に行ったアーティストはみんなアコースティックセットを演ってくれました。
 しかし、その反面で、このアコースティックは(あくまで個人的な見解で)アーティストの服を剥ぎ取った演奏だと思っていたので、バンドの演奏力を露わにしてしまう恐ろしいパフォーマンスだと思います。荒っぽい書き方をすると「下手なバンドはアコースティックサウンドでばれる」です。エレキと違って、アコギは表現の幅がエレキギターと違ってとても狭く感じるからです。

 特に私が好んで聞いていたのがロックバンドで、エレキをかき鳴らしているギタリストほどゾクゾクしながら聴いていました。作曲や、デモがアコースティックギターで、というアーティストが多いのもその理由の一つです。
 当時は、(稀に今でも)通常のシングルカットのB面には必ずと言っていいぐらい「アコースティックヴァージョン」なるものが付いてきました。そのほとんどの場合はデモ・ヴァージョンの事が多かったのですが、まれに本気でアコースティックにアレンジした演奏もありました。



~ポピュラーチャートでヒットしたアコースティックな曲~

Wanted Dead Or Alive(シングルのボーナストラック版) / Bon Jovi(1988)
Patience / Guns 'N Roses(1988)
When The Children Cry / White Lion(1988)
Every Rose Has Its Thorn/Poison(1989)
More Than Words / Extreme(1991)
To Be with You / Mr.Big(1992)
一連のMTV UNPLUGGED



 ジョージ・ウィンストンを始めとするアコースティックサウンドの旗頭として、「静かなる」ブームの先頭に立ってきたレーベルが、世間がアコースティックサウンドへ目を向けるようになった頃、アッカーマンはウィンダム・ヒルをBMGに売却していたというのも、歴史を語る上では重要かもしれません。

 最近テレビで見たBBCのドキュメンタリー『みんなロックで大人になった』に、ローリング・ストーンズのキース・リチャーズがアコギをかき鳴らしていましたが、いやぁ、しびれてしまいました。彼は1985年のライヴ・エイドで、ボブ・ディランのバッキングとして、ロニー・ウッドと三人でアコースティックトリオで登場。そのスタイルでU2のボノと「Silver And Gold」をレコーディングし、アコギによる弾き語りの素晴らしさを世界に知らしめました。(演奏は目茶苦茶でしたが、それがまた通用するロックの世界もまた凄い)


 なお、2006年にAdam Werner、Will Ackerman、Kelvyn Evansらが新たに設立したレーベルNew Land Musicからリリースされたアコースティックギターコレクション『WOODSONGS』は17組のギタリストが新曲を持ち寄って編まれたコンピレーションです。まさに新時代の『ギター・コレクション』に仕上がっていて、アッカーマンもこのアルバムが編まれたことを高く評価しています。詳細は別項に譲ることにします。



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