ウィンダム・ヒルの掲示板


Photo by Toshiharu Minagawa.


WHS C1011
SOLILOQUY / David Qualey
Produced by David Qualey.
All composed by David Qualey.

Side One ;
01.Opus 20
02.Homfeld Suite
03.Opus 21
04.Opus 19
05.Opus 18
06.Opus 22

Side Two ;
01.Norwegian's Fantasy
02.Slolo For Strings
03.Santa Cruz
04.Soliloquy
05.Sylvia's Waltz
06.Sunset

Windham Hill Records, 1976


クラシック・ギター(ガット弦)の名手でもあるデビッド・クォーリが、ウィンダム・ヒルに残した唯一のアルバム。たった一枚しかレコーディングを残しませんでしたが、レーベルの音楽性を左右するウィリアム・アッカーマンがデビッドの音楽性とスタイルに強く惹かれてレコーディングされたものなので、非常に興味深い楽曲が揃っています。
 何曲かはオーバーダビング(素人耳にはオーバーダビングしているとしか思えない)で、独特の音場をもつクラシックギターのソロ。個人的にはYesのスティーヴ・ハウあたりのスタイルを重なる部分と重ねながら耳にしています。
 アルバム両面で40分に満たない作品集ですが、アッカーマンが自らのレーベルからリリースさせているだけあって、初期のレーベルの匂いが強く漂っています。デビッドのスタイルはクラシカルですが、楽曲は自由に飛び回っていてカントリーに近いかもしれません。その点、アッカーマンの1stや、ロビー・ベイショとの共通性が見え隠れしてくるようです。そう考えるとデ・グラッシや、2nd以降のアッカーマンのスタイルは実にユニークで、この頃のレコードで聴く彼らのスタイルは、ウィンダム・ヒル・サウンドを確立していく途上段階なのかもしれません。

 デビッドは独自の音楽理論を持っていたようで、レコーディングは活動の拠点としていたドイツで行われ、アッカーマン他、レーベルの関係者はほとんど関わず制作されました(悪い言い方をすれば「わざわざ時間を掛けてアメリカへ行ってまで録音できない」という意味)。
 製作段階での関わりを探してみると、唯一アルバムのアートワークのみ。ジャケット写真はアッカーマンが撮影した写真で、アートワークとアーティスト写真をアッカーマン夫人だったアン・ロビンソンのコンビが携わっていることぐらいでしょう。ひょっとするとこれが「ウィンダムの丘?」などと思えなくもない写真に思いを馳せながら聴いています。ある夏の日と、秋風がそっと頬を撫でるようなことを思わせる情景です。なお、ここでアッカーマンはWill Ackermanとクレジットしています。

 ここで紹介したアルバムをリリースした後は、ウィンダム・ヒルのレーベルメイトとツアーに出かけることはあっても、次のアルバムを制作する前にレーベルを離れてしまいました(理由は音楽性の違いから)。
 ウィンダム・ヒルでの最後の仕事は『A WINTER'S SOLSTICE』のオープニング曲に収録されたバッハの“主よ、人の望みの喜びよ”です(1982年にジョージ・ウィンストンが『DECEMBER』に収録した“Joy”をアレンジしたのが、デビッド)。この曲のアレンジャーとしてのオリジナルをリ・レコーディングしてくれたことが最後だったのです。ちなみにジョージがレコーディングしたオリジナルアレンジは1977年に行われています(彼のオフィシャル・サイトではジョージがレコーディングしてくれたことによる「印税」に対して謝辞を述べている)。


 このアルバムは日本国内で発売されることもなく廃盤(海外ではCD化、現在は廃盤)になってしまいましたが、1992年にリリースされた『ONLY GUITAR PARABLES』というアルバムの中で全曲リ・レコーディングしているので、興味ある方は探して聴いてみるいいでしょう。また、このアルバムには追加レコーディングされた曲も含まれています(未聴)




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