星と天界の音楽と(星のソムリエのブログ)

  冨田勲の音楽に最初に触れたのは、国民的番組『料理の時間』や『ジャングル大帝』でした。それから、天文に興味が行くようになり、友人に聞かせてもらった『宇宙幻想』という、いかにも星好きが手を出しそうなタイトルであり、宇宙っぽいサウンドを聴かせてくれたアルバムでした。その後、グッド・タイミングで作家の小松左京氏との対談番組「日本のトップ・アーティスト」がNHK-FM 五夜連続で放送(1980年12月1日~5日)され、私の中で一気にトミタ・サウンドに火がついたのでした(笑)




冨田勲の世界
パート1~トミタ・サウンドの秘密をさぐる
パート2~驚異の拡がり
 

 冨田勲の音楽に最初に触れたのは、国民的番組『料理の時間』や『ジャングル大帝』でした。それから、天文に興味が行くようになり、友人に聞かせてもらった『宇宙幻想』という、いかにも星好きが手を出しそうなタイトルであり、宇宙っぽいサウンドを聴かせてくれたアルバムでした。その後、グッド・タイミングで作家の小松左京氏との対談番組「日本のトップ・アーティスト」がNHK-FM 五夜連続で放送(1980年12月1日~5日)され、私の中で一気にトミタ・サウンドに火がついたのでした(笑)

 このアルバムに収録されているのは、普通の音楽レコードというよりは、ドキュメンタリーに近い内容で、パート1は「素材から音楽のできるまで」としてラジオでも紹介していました。当時は最新作だったラヴェルの『ダフニスとクロエ』を素材に使ったプログラムです。ただ、ラジオと違って、氏本人からの解説もなく、淡々とパートに音のふくらみがついて完成に至るプロセスを聞くことができます。よほど興味のある方以外は、1回聞いたら「もういいや」状態になるのではないでしょうか。

 このアルバムのみでしか聞くことの出来ない音源が3曲が収録されています。『銀河鉄道の夜』は2016年にリリースされたSACD『スペース・ファンタジー』に収録されました(ただし、この曲は通常のCDフォーマットなので、マルチ・チャンネルとして編集されていません)が、もう1曲ドビュッシーの『沈める寺』の ニュー・アレンジはビクターのCMのため。そして先の小松左京氏との対談でオン・エアされたストラヴィンスキー作曲のエディット版『火の鳥』は、フル・アルバムの編集版です。





01. 雪は踊っている
02. 夢
03. 雨の庭
04. 月の光
05. アラベスク第1番
06. 沈める寺院
07. パスピエ
08. 亜麻色の髪の乙女
09. ゴリウォーグのケークウォーク
10. 雪の上の足跡
※トラックは1986年に初CD化された時の表記です。

  「記念すべき… 」という言葉をよく使われるアルバムで、冨田氏のクラシック・シンセサイザー・シリーズの第1弾。本人の著作やラジオなどのコメントでは、日本のレコード会社のほとんどが「レコード屋の置き場がわからない」といった理由から販売を見合わせ、アメリカに横取りされた格好になった作品。それがビルボードのチャート、クラシック部門で1位になったから「さあ大変!」(笑)。私がそのことを知ったのは、ずいぶん後になってのことですが、今でも語り草になっている(本人が「してやったり!」的な意味合いでかどうかはわかりませんが、あっちこっちでしゃべるので有名な事件です、日本はどこまでも保守的な民族であると…。

Billboard 200(レギュラーなアルバムチャートにもランクインしました)
最高位57位(1974年12月7日付)※この週のTop10も合わせてどうぞ!

 このアルバムに収録されているドビュッシーの曲は、冨田氏の好きな曲、というよりは視覚的インスピレーションの沸く曲として、選曲したようです。このころはまだクラシック音楽を聴いていなかった小学生だったので、ラジオなんかを聴いたり、おこずかいでレコードを買ったりして、シンセサイザーで慣れ親しんが曲のオリジナルを聴いて違和感を感じたりして楽しんでいました。

「なんてドビュッシーのピアノ曲って(単色で)つまんないんだろうなぁ」なんて。

このアルバムはのちに、他のアルバムに収録されていた♪「牧神の午後への前奏曲」を加えた盤や、2012年にUltimate EditionとしSACDというフォーマットにサラウンド化されたバージョンが存在していますが、昔慣れ親しんだ雰囲気を楽しむなら、断然アナログ。冨田氏の思い描いた音像を楽しむならSACDでの4チャンネルがなんといっても楽しいです! しかもサラウンド盤には、1977年12月16日に日生劇場でライヴレコーディングされたの『天守物語』でしか聞くことができなかった(私はラジオで聞いた)♪夜想曲が収録されていています。





展覧会の絵(1976)
01. プロムナード/こびと
02. プロムナード/古城
03. プロムナード/チュイルリーの庭
04. ビドロ
05. プロムナード/卵のからをつけたひなの踊り
06. サミュエル・ゴールデンベルグとシュミュイレ
07. リモージュの市場
08. カタコンブ
09. 死せる言葉による死者への話しかけ
10. バーバ・ヤーガの小屋
11.キエフの大門
※トラックは1986年に初CD化された時の表記です。
 プロムナードを奏でる音… 少女たちのハミングなのか… シンセサイザーの神秘的な音なのか… 初めてこの曲を聴いたときの感覚は、今もって忘れられません。いつもこの曲を聴くたびに、その時に感じた感覚を思い出させてくれます。特に小松左京氏との対談番組では、長大なオンエアで、全曲こそ流れませんでしたが、キエフの大門までよく流してくれました。そして、このアルバムでは、モーグを手なずけたとしか言いようのないほどのアレンジにあふれています。特に♪「卵のからをつけたひなの踊り」から♪「リモージュの市場」に掛けてのアレンジは、まるで絵画を見ているように、目の前に情景が広がってきます。

 そしてこの作品も2014年にSACDへのサラウンド化されたUltimate Editionが制作され、ドビュッシーの時とは違って(♪「はげ山の一夜」が収録されると思っていたのに!)、未完に終わった♪「シェエラザード」の一部と、『宇宙幻想』の中から♪「ソラリスの海」が収録されました。

Billboard 200
最高位49位(1975年7月5日付)※この週のTop10も合わせてどうぞ!





火の鳥(1977)
バレエ組曲『火の鳥』
01. イントロダクション
02. 火の鳥とその踊り
03. 火の鳥のヴァリエーション
04. 王女たちのロンド
05. カスチェイ王の魔の踊り
06. 子守歌
07. フィナーレ
08. 牧神の午後への前奏曲 (ドビュッシー)
09. 交響詩「はげ山の一夜」(ムソルグスキー)
 3枚目にしてオーケストラ作品をアレンジ。もっとも、前作の『展覧会の絵』も、オリジナルはピアノ曲とはいえ、ラヴェル編曲版のアレンジだったから、厳密には初のオーケストラ作品とは言えないのかもしれません。それにしても手塚治虫氏手掛けたジャケットといい、アルバム全体に漂う雰囲気と言い、まさに「音が絵になり、絵が音になり」と言えるのではないでしょうか? 特に『火の鳥』の後半、具体的には♪「カスチェイ王の魔の踊り」以降のスリリングな展開には、手に汗握るといえるでしょう。生のオーケストラでは及ばないアレンジには脱帽です。その他、ドビュッシーにしてもムソルグスキーにしても絵画的なサウンドに酔いしれてしまいます。

  晩年にシリーズ化されていた《Ultimate Edition》のSACD化の対象とはならず(氏の構想の中にあったのかもしれません、幻に終わった『春の祭典』と絡めて…)、ストラヴィンスキーだけがサラウンド化されていませんでしたが、2019年にDutton Vocalionから、『ダフニスとクロエ』に引き続きSACD化が発表されました。

Billboard 200
最高位71位(1975年3月20日付)※この週のTop10も合わせてどうぞ!




惑星(1977)
01. 火星
02. 金星
03. 水星
04. 木星・土星
05. 天王星・海王星
 
 
 
 

 アレンジ、リリース共に問題の多かったホルストの『惑星』。私が初めて聞いたのは、日曜喫茶というNHK-FMのお昼の番組。流れてきたのは火星のイントロが始まる直前までのロケット打ち上げのシーン。だから厳密にはホルストの『惑星』とは言えないのですが、まさに星や宇宙の音楽を探してきた者たちにとってはたまらないサウンドでした。しかも、これぞアレンジと言わんばかりの木星以降の楽曲群。どうやら当時のレコーディング事情によるもとの言われていますが、もう脱帽ものです。そういった事情を踏まえれば、これで楽曲に忠実な展開でのあれんじだったら、もしかしたら違う結果になっていたのかもしれません。かえって面白い答えが出て、それが正解だったのではないでしょうか?最初のオルゴールが最後に鳴り響くあたりなんかも…

Ultimate Edition》のサラウンドかも、やはりこのアルバムから始まりました。

Billboard 200
最高位67位(1977年2月5日付)※この週のTop10も合わせてどうぞ!





宇宙幻想(1978)
01. スペース・ファンタジー
02. パシフィック231
03. 答えのない質問
04. スター・ウォーズのテーマ
05. アランフェス
06. ソルウェーグの歌
07. ホラ・スタッカート
08. ソラリスの海

  『惑星』に続くスペース・サウンド。今回はオムニバス形式によるアレンジで、冨田氏の得意な現代音楽が占めています。例外はバッハでしょうか?ワーグナーあたりも珍しい気がします。そして、アメリカナイズされた最初のアルバムで、アメリカ盤のCDではタイトルも『KOSMOS』(CではなくKで始まる)1曲目が♪「スター・ウォーズのテーマ」で、日本盤とアレンジまで異なっています。また、このアルバムからはカール・セーガンの『コスモス』で、♪答えのない質問、♪ソラリスの海が印象的なシーンで選曲されています。

 2015年の《Ultimate Edition》のサラウンド化では、すでに♪ ソラリスの海はの『展覧会の絵』に収録されているので外されてしまいました。

Billboard 200
最高位115位(1978年4月8日付)※この週のTop10も合わせてどうぞ!





01.銀色の光を発しながら下降する丸い宇宙船~UFOの飛来と謎の電波
02. 強力磁波
03. 次元の異なった世界
04. バミューダの海底に沈む巨大なピラミッドと古代人たち
05. 蛍光色に光る宇宙服を着たヴィーナス~UFO再来
06. 地底王国アガルダで遊ぶ子供たち
07. 地球という空洞の器~どろろ
08. ヴィーナスの唄
09.ミューダの夜明け~謎の電波
10.シベリアのツングースに激突したことのあるまばゆく光る円筒形の物体
11.古代人の奏するハープそしてヴィーナスと宇宙の子供たちの未来への唄
12.牛飼い座1448星雲団への幻想飛行~UFO去る~ヴォコーダー

私が最初に買った冨田氏のレコード。当初、曲目の意味が分からず、のちに冨田氏の創作によるタイトルで、オリジナルのクラシック音楽をカモフラージュさせたものでることが判明(笑)安心して購入しました(笑)。このころ、ラジオに出演する番組を欠かさず聴いていましたが、このバミューダについてはほとんど触れていなかったので、手を出す際「クラシック音楽のシンセサイザーじゃない?」と購入をためらったことを思い出します。
 原曲はプロコフィエフがメインで、オリジナルのオーケストラではあまり感じなかった宇宙的な雰囲気が、前作の『宇宙幻想』より色濃く表現されているのではないでしょうか? 曲と曲の間もほとんどなく、まさにメドレーといった感じで、そのあたりの繋ぎが本人の作品だったり(『惑星』オープニングのような)、なかなかドラマチックな展開を聞かせてくれます。

 このアルバムはサラウンド化されませんでしたが、オリジナルの音源は、当時4チャンネルをうたっていたビクターのオーディオシステムに合わせたのか、5チャンネル方式でした。 2019年に、次作の『ダフニスとクロエ』が、オリジナル通りの4チャンネルでSACD化されることが決定しているようなので、今作もそのフォーマットでのリリースを期待したいところです。
 小松左京氏との対談番組のエンディングとして流れていたのは、このアルバムに収録されているシベリウスの♪悲しきワルツです。

Billboard 200
最高位152位(1979年3月31日付)※この週のTop10も合わせてどうぞ!





ダフニスとクロエ(1979)
01.「ダフニスとクロエ」組曲第2番
02. 亡き王女のためのパヴァーヌ
03. ボレロ
04. マ・メール・ロワ

このアルバムが、冨田勲を聴き始めたころにニューアルバムとしてリリースされたばかりでした。特にラジオスペシャルの松本零士のドラマでは、♪マ・メール・ロアが頻繁に使われていました(銀河鉄道999、千年女王 etc.)。ただ、惑星のレコーディングの時にもあった、レコーディング上の制限(収録時間)で、ボレロが最後まで演奏されず。とはいえ、そこはそれ、アレンジによって終わることなく彼方に飛んでいくというオチが用意されていました。 
 それまでのサウンドとは異なり、かなりシンセサイザーぽい音(オーケストラの音のようでオーケストラの音じゃないところを目指していたようです)が、ラヴェルにあっているのか?個人的には『展覧会の絵』『火の鳥』のような音で聴きたかったなぁ、と思ってしまいます。

 なお、2019年には、当時のレコーディング・フォーマットを生かした4チャンネルステレオでのSACD化がDutton Vocalionからリリースされました。

Billboard 200
最高位174位(1980年2月23日付)※この週のTop10も合わせてどうぞ!





大峡谷(1983)
01. 日の出
02. 赤いさばく
03. 山道を行く
04. 日没
05. 豪雨
 
  このアルバムの前に、ベスト盤として『VOYAGE』があり、その中にルロイ・アンダーソンの♪シンコペーデット・クロックがニュー・レコーディングされていました。1982年にリリースされた『大峡谷』のCD化の際、追加で収録されました。同じアメリカ人作曲家の楽曲だけあって、雰囲気を壊すことなく聞くことができます。




DAWN CHORUS(1984)
01. ドーン・コーラス
02. ホイッスル・トレイン
03. ペガサス
04. パルサーからの呼びかけ
05. 天界のアダージョ
06. コズミック・コラール
07. ヴォカリーズ
08. 三星のカノン
 
 

 

 天界の音楽、というのはこういうことなんだろうなぁ、という一つの回答というのでしょうか? 星からの電波をとらえ、視覚的に光度変化を波としてプロットすると、楽器の奏でる音の波形に似ていると気づいたことから、国内の電波天文台から様々な星の波形を収集してオーケストラを結成しました。こうした変換作業で生まれた音色のほかにも、実際に聞くことのできるドーン・コーラスの音が効果的に使われています。これらの試みは、この一作で終わってしまったのが残念なところ。





バッハ・ファンタジー(1996)
01. 早起き鳥
02. アヴェ・マリア
03. 電気仕掛けの兵隊の行進
04. 時計の幻想
05. 主よ、人の望みの喜びよ
06. 惑星ソラリスの海
07. 笛を吹く少年
08. 砂漠の大旋風
09. G線上のアリア
10. トッカータとフーガ ニ短調 BWV.565

 

 なんとオールバッハ! しかもまったくワルター(あるいはウェンディ)・カーロスとも違う冨田のバッハ… どういう経緯での制作なのかはわかりませんが、シンセサイザーの作品集としてはNHKのドキュメンタリー『蒼き狼』以来の作品集となります。これまでのクラシックの作品をシンセサイザーで演奏したシリーズとは、若干感触が違うと感じたのは私だけでしょうか? 音色は冨田氏らしいものから、他のアーティストが使っている音色まで使われていますが、過去の作品の再編成(?)もあり、できたら今まで演奏されなかった曲をアレンジしてほしかったなぁ、と思います。具体的には♪主よ、人の望みの喜びよと♪惑星ソラリスの海。このあと、クラシック作品をシンセサイザーで演奏するというスタイルはなくなってしまいました。



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