ピアノ、作曲:深町純(*岡野貞一/**ベートーヴェン) |
私は、このミュージシャンの音楽性をあまり理解していなかったようです。かつて、従兄から録音してもらったクラシック・メドレーが収録されていたシンセサイザーのレコード(当時は青の透明なレコードだったのが印象に残っている)がすべてだと思っていました。他に、松本零士原作のアニメーションを題材にしたイメージアルバム(宇宙戦艦ヤマトとかクイーン・エメラルダスなど)ぐらいしか知らなかったのです。こうしたシンセの音がすべてだと思っていたら、今回のピアノ・ソロ・シリーズを制作していたことを最近知り、さっそく触手を伸ばしたわけです。私が手にしたのは『月』。これは『花・鳥・風・月』という四部作の最後に当たるアルバムです。ピアノはスタインウェイ。 こうした「ピアノソロ」と銘打たれたアルバムには何度か騙されていて、独奏のつもりで手を出したら単にピアノがフューチャーされただけのイージーリスニングだったりして、がっかりした思い出が何度となくあるので、今回も実は聴くまでドキドキしてしまいました(これは久しぶり)。こうした気持ちをずいぶん前に拭ってくれたのがウィンダム・ヒルなのです。 聞いていて、自分でも面白いなぁ、と思ったのが、彼のメインだと思っていた顔である「シンセサイザー作品」では、似たような音色ばかりで、冨田勲のようなカラフルな色彩を期待してレコード針を下すたびに、途中で飽きてしまうことが多々ありました。今回はピアノというピアノの音しか出ない(当たり前)楽器を弾いているのに、なんと豊かな楽想、そしてカラフルな色彩なんだろうと思えたからです。 「月とサボテン」には、そのジャズっぽいフィーリングから、スヌーピーの兄、スパイクがコヨーテを相手に荒野で一人、サボテンに話しかけているシーンを想像してしまいました。 |
|月のアルバム| |