130年ぶりの珍事に合わせ、会社も休んで、これで見られなかったら、ここ最近のできごととして、かなり悔やまれるところだった。幸い、雲の切れ間から覗く太陽に望遠鏡を向けると、水星などとは比べものにならないぐらいの、存在感のある金星が、太陽の前を横断中だ。
太陽の見かけの30分の1という大きさの金星も、水星と同じく太陽の前にいると言うだけで、空中に浮いているように見える。宇宙の広大な奥行きと、それぞれに働く力を感じることが出きた。人間の想像力を遙かに越えた、見ることのできない力。それをある人は「神のなせる技」と言うのかもしれない。
しかし、この現象をただ黙って見ていると、そういった不確かなものに頼るのではなく、人間の存在を越え、超然とした大自然の摂理を感じる。それは、人間が考え出したときから端を発する「自然」への畏怖であり、畏敬の念である。
自然を理解し、観察し始めても、その恐れは何ら変わることはなかった。それを目の当たりしているのである。平面に映し出された太陽の前を、黒い影が重なっているだけなのに、浮かんでいるように見える。
残念ながら第一接触は雲に阻まれてしまったが、その20分後ぐらいからは、雲に邪魔されながらも16時前まで見ることができた。
大樹も「オヒサマノホクロ」と呼んだそれは、122年、8年という周期で起こる。