私を星の世界にのめり込ませたのは、ここで紹介する藤井旭さんの著作です。誠文堂新光社や河出書房から村山定男さんとの共著で出版した一連の天文シリーズの影響が大きかったのです!でも、ただそれだけでは単なる星好き、星に詳しくなっただけですが(基礎にはなっている)、実は最も影響を受けたのがここで紹介しようとしているチロとの関わりを綴ったエッセイ群なのです。特に1976年に出版された【ふじい旭の新星座絵図】は、私が書くエッセイのスタイルの手本となったショートストーリー集です。

 藤井旭さんと直接お会いしたのは1986年の『星空への招待』の時に遡ります。残念なことにチロとは本の中でしか一緒に星を見ることはできませんでしたが、エッセイを読むたびに、またラジオドラマに耳を傾けるたびに、チロと星を見上げている気分にさせてもらっています。

【ふじい旭の新星座絵図】NDC440
誠文堂新光社(1976年12月25日発行)

 この本は小学生の時に、誕生日プレゼントとして友だちからプレゼントされた本。買っていたインコ(ジャッキー)の見事な嘴さばきにより表紙の一部分が切り取られてしまいました。当時は腹が立ちましたが、今となっては懐かしい思い出。
 88星座に対して、星座とは関係のない星空のエッセイが楽しい一冊。もともとは『天文ガイド・1969年9月号』に初掲載されたものを、88のエッセイと共に完成させたもの(「あとがき」より)。この文体、雰囲気。僕の『一番星のなる木』が最も影響を受けた本。プレゼントしてくれた友だちに感謝。





【星座アルバム】0044-3854
誠文堂新光社(1972年10月5日発行)

 星座のガイドブックの本の中で、未だにこの本を越えるものは出版されていないのではないでしょうか。それほどこのアルバムは良くできています。藤井さんが撮った星座写真に自身で描かれた星座絵を透明のフィルムに描き、古代人が描いた姿と肉眼で見ることのできる星座の姿とを見比べることができます。星座を覚えるにはこれ以上のガイドブックはありませんでした。
 現代ならインターネットによって簡単に星座線を出したり消したりすることが容易になりましたが、紙媒体の当時としては透明フィルムを挟むことで画期的な体裁になっています。

 現在は春夏編と秋冬編に分けられていますが、出版時は一冊にまとまっていました。ハードケース入り。

【星空の四季】0044-3854
誠文堂新光社(1973年9月25日発行)

本の帯に抜き書きされた一節、

“カエルの鳴き声の賑やかな田舎道を歩いていると大きな大きなさそり座のS字のカーブが、向こうの森の上にいてびっくりさせられることがある”

 という文を読んで、今までに体験したことのない星空の情景に触れることができたのを思い出します。私が藤井さんのエッセイに触れた最も最初のもので、この本の中には後に“新星座絵図”として発売されたエッセイ集の先駆けとなった“私の星空”が巻末に掲載されています。

“十月も中旬を過ぎてナス連峰に初雪が降ると、それまでとろんとしてさえなかった星空が急に輝きを増して私の星空の季節が始まる”

 これらのエッセイを読んで、遠い福島の星空へ思いを馳せたものです。「氷の中の星空」「怪談ばなし」「地震」「動物たち」「山火事」の五篇のうち三篇にチロも登場します。

【星の旅】0044-067611-0961
河出書房新社(1976年9月14日発行)

 前出の書籍に書かれた内容が白河観測所を中心とした日本各地が舞台なら、こちらは海外編。当然チロは出てきませんが、藤井さんの巧妙な語り口の旅行記が楽しめ、あっという間に世界一周をしてしまいます。こちらは旅行記としても、かなり本格的なボリュームです。当時は硬いイメージのあった河出書房より出版。





 私が中学生のときチロが亡くなり、「犬の天文台長」という珍しさもあって、メディア各誌でも大きく報じられました。新聞では朝日新聞が社会面で写真入りで報じられショックを受けたのを覚えています。“満月の夜、チロは星になった” 天声人語でも取り上げられました。その後、以下のラジオにてドラマが放送されました。幸いにもエア・チェックしたテープが現存し、今ではCDに焼いて、時々偲んでいます。
ラジオスペシャル【星になったチロ】
放送;1982年1月9日
出演;草野大悟/村松克己/山西みちひろ/笠原広子/南二郎(チロ)
効果;イメージ・ファクトリー
技術;井口みきお
演出;上山ゆうきち
脚本;林千秋
音楽:後藤秀夫

 犬の天文台長チロの死はテレビや新聞の社会面で大きく取り上げられ、ひと頃大きな話題となりました。このラジオ番組もその一つですが、ここで描かれている飼い主である藤井さんは、あまり“いい人”に描かれていません。

【スーパーウェーヴ・ネットワーク〜星空への招待】
放送;1983年8月14日
出演;草加英明、久保田早紀、
音楽;COSMOS

 星空への招待席会場の浄土平よりの生中継番組。ペルセウス座流星群の母天体となっているスイフト・タットル彗星が120年ぶりの回帰ということもあって開かれた『星空への招待』。白河天体観測所の面々が出演。藤井さんのエッセイの登場する人物に会うことができました。ここで大野裕明さんが「8/13を星の日にしました」という発言をして、のちの大論争を巻き起こすことになります(笑)。柳家小ゑんさんなどの出演後、会場は大いに盛り上がりました。
 番組中、『犬の天文台長チロの物語』を俳優の熊倉和生さんの語りで聴くことができます。また、B.G.M.を担当していたのはCOSMOS、ゲストには歌手の久保田早紀が出演。その後、彼女はラジオ短波の『Viva! スカイウォッチング』の初代パーソナリティを務めることになり、しばらくは聴いていました。その次が国立天文台の磯部秀三先生、そして大野裕明に引き継がれました。





【星になったチロ】8095-122012-7764
誠文堂新光社(1984年4月発行)

 天体写真家藤井旭さんの助手であり白河天体観測所の所長でもあったアイヌ犬チロのまとまった活躍を読むことができる待望のエッセイ集。あちこちに散らばっていたエッセイを1984年の出版では一般向けに書き直していますが、藤井さんの文章はあいかわらずの口調で、ファンである私にとっては様々なところで読んでいるエッセイではありますが、新しい口調で読むことがで非常に嬉しかったことを思い出します。
 何よりもチロアルバムから、多くの愛らしい写真が掲載されていて、チロがエッセイだけの主人公ではなく、実際に星空の下、私たちと一緒に星を眺めていたんだなと言うことを気づかせてくれます。
 現在は新装版として2002年に出版された文庫本を手にすることができます。

【星空日記】1044-068401-0961
河出書房新社(1984年5月30日発行)

 聖教新聞に連載していたエッセイをまとめたもの。連載元が宗教であっても、内容は身近な星のお話。森田のおばちゃんがいい味をだしています。『星の手帖』にて出版の告知があり、先着順にサインをしてもらえっるということで電話応募しました。

【チロ天文台の星仲間たち】ISBN4-408-36070-8 C8044
実業之日本社(1986年3月19日発行)

 観測所に訪れた小学生たちとのやり取りの中で、慣れ親しんだエッセイがかいつまんで紹介される異色作。

【チロと星空】ISBN4-591-02419-9 C8095
誠文堂新光社(1987年4月発行)

 1984年に出版された『星になったチロ』の続編とも言うべきエッセイ集で、あちこちの天文書に寄せられた藤井さんの優しい語り口によるチロ物語。こちらは一般の読者を対象としているために、オリジナルとは異なる口調でチロの活躍を描いています。





 1983年に立風書房より創刊された『スカイウォッチャー』。どういうわけか、私のところに、それを伝える広告とサンプルが届き(天文ガイドとか星の手帖に投稿していたからでしょうかね)創刊号からしばらくは購入していました。内容的には天文ガイドよりも素人向けの内容でしたが、私にとっての目玉となったのは、藤井さんのエッセイ『チロ物語』が連載されていたことでしょう。 今まで文章になっていなかったエッセイなどが満載でした。連載終了と共に、『スカイウォッチャー』の購入もやめてしまいましたが、藤井さんの文体も、この頃から一般向けの語り口になっていったようです。