星と天界の音楽と(星のソムリエのブログ)

燃える炭火に照らされた夕べ
(Les soirs illuminés par l'ardeur du charbon)
 ドビュッシー最晩年の1917年の作品として、2001年に発見された曲。ポツリポツリとレコーディングされて、聴く機会も多くなりました。

  タイトルの「燃える炭火に照らされた夕べ」は、詩的でドビュッシーらしいです。これはシャルル・ボードレール(Charles-Pierre Baudelaire, 1821-1867)の「悪の華」に収められた「露台(Le Balcon)」からの一節によっています。



ドビュッシー:ピアノ曲全集 Vol.4/小川典子 (2007)
1. 12の練習曲(1915)
2. 新発見の練習曲(「組み合わされたアルペジオのための練習曲」の初稿)(1915)
3. 間奏曲(ピアノ三重奏曲からの編曲(1880/1882)
4. 6つの古代の墓碑銘〔独奏版〕(1914/15)
5. 燃える炭火に照らされた夕べ(1917)
 2001年から始まった全集セッションは、2012年に完成。それまでにリリースされた5枚をボックスにしてくれ、ボーナスディスクとして「ピアノと管弦楽のための幻想曲」や学生時代に課題として書いた小品をレコーディングしてくれています。その開始の年に発見された「燃える炭火に照らされた夕べ」は2003年に出版されたので、このセッションに余裕で間に合ったのです。




ドビュッシー:ピアノ曲全集 Vol.4/アラン・プラネス (2007)
忘れられた映像/ボヘミア舞曲/夢想/マズルカ/ロマンティックなワルツ/
バラード/舞曲/夜想曲/ピアノのために/版画/コンクール用小品/
ハイドンを讃えて/小さい黒人/レントより遅く/6つの古代のエピグラフ(独奏版)
英雄的子守歌/慈善団体「負傷兵の衣類」のための小品/エレジー
燃える炭火に照らされた夕べ/リア王の眠り(ロジェ=デュカス編曲)
 1997年から始まった二度目の全集の4集目(2枚組)に収録されています。リリースされた当初は「大物による初レコーディング」という紹介文がありましたが。う〜ん。残念だったのは、第2集がベヒシュタイン、第3集がブリュトナーとピリオド楽器を奏していたのに、ここにきてモダン楽器(スタインウェイ)に戻ってしまったことでしょうか。これが全集となるとは思ってみませんでしたが、シリーズ第1集(と考えてよいのか)、ずいぶん時期が隔たっていますが1997年の「練習曲集」もスタインウェイです。
 このセッションも時間を掛けていたおかげで、新発見の「燃える炭火に照らされた夕べ」のレコーディングに間に合いました。ドビュッシー弾きにとっては、まだまだ自分のものにするまで時間はかかるのでしょうが、プラネスはブーレーズに見出されただけあって、あまり感情移入するピアニストではなく、ドビュッシーの素を聴くような演奏になっています。




知られざるドビュッシー/中井正子 (2009)
1. 「忘れられた映像」より ゆっくりと/サラバンド風に/「もう森にはいかない」によるいくつかの様相
2. 月の光の降りそそぐ謁見のテラス(自筆稿)
3. 6つの古代碑銘(ピアノ独奏版)
4. 組み合わされたアルペジオのために(異稿)
5. 炭火の暖かさに照らし出された夕べ
6. 「おもちゃ箱」(アンドレ・エレによる子供のためのバレエ/語りつき)語り
 これまでに三集のピアノ作品集をレコーディングしてきた中井正子さんは、このアルバムでソロ作品集を一通り録音を完了しています。この曲は「知らざれるドビュッシー」の中に収録されていて、「おもちゃ箱」などはナレーション入りです。ポピュラーなドビュッシーもよいのですが、こうしたなかなか聴く機会の少ない曲目だと、慣れていない分「初めて聴く」感覚になれるので楽しいです。




ピアノ作品全集/フィリップ・カッサール (2012)
「19世紀に製造されたベヒシュタインによるドビュッシー・ピアノ・ソロ作品全集」

新録: 炭火の暖かさに照らし出された夕べ
新録: 負傷者の服のための小品
(2012)
 廃盤になっていただけに、再発は嬉しい限りなのですが、お目当ての新録である「炭火の暖かさに照らし出された夕べ」がモダンピアノによる演奏というのが悔やまれます。調律が間に合わなかったのか、納得のいくピアノと巡り会わなかったのかわかりませんが、コンサート同様モダン楽器でのレコーディング。このアルバムを通して聴くと、大人しい曲なので響きが純白できらびやかなぶん、なんだか異質な作品に感じてしまいます。



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