星と天界の音楽と(星のソムリエのブログ)

 大好きな作曲家(一番!)だけあって、ピアノ作品全集と呼ばれるはかなりの数、手元にあります。クラシックの世界だけに見られる現象でしょうね(クラシックに馴染みのない人から見れば「なんでそんなに同じ曲ばっかり集めて」なんて思われているようです)。


Michel Beroff(1950 - )

  

  1970年にレコーディングされた『前奏曲集』から足掛け10年かけて完成した全集で、EMI CLASSICSから3枚組としてまとめられた廉価盤。この当時は、他に同郷の先輩、ジャン・フィリップ・コラールのラヴェル全集とあわせて、個人的にはホクホクな気持ちに浸れました(笑)。

 さて廉価盤となると、クラシックの場合気になるのがジャケットとかの問題。今でならタワー・レコードの企画とかで、オリジナルジャケットの復刻(あるいは封入みたいな)を施してくれることもありますが、とかく海外は、そうしたことには無頓着なのか、安易な風景ジャケットでリリースするので興ざめすることがあります。

 このベロフの全集は、同じ頃に『GREAT RECORDINGS OF THE CENTURY』と銘打ったARTシリーズというリマスター盤がリリースされていました。これは「あの」アビー・ロード・スタジオでリマスターを施したシリーズがありましたが、少なくともジャケットにオリジナル・ジャケット(小さくしてたけど)が使われていて、まだ「大事にされてるな」感が漂っていました。できることなら、そのカタログに加えて欲しかったと思います。もしかしたら、音は変わらないかもしれませんが、やはりレコードで育った世代ともなれば、ジャケットを眺めながら聴くというクセが残っているので、小さくなったジャケットでも、ずいぶん雰囲気が異なったんじゃないかと思います。

 さて、この3枚組は、あくまでもソロ作品全集という位置づけなので、1978年にコラールとレコーディングした連弾のための作品が丸々入っていません。それとバーバラ・ヘンドリックスとの歌曲集も。今後、もしかしたらレーベルも変わったことだし、まとめてボックス化も考えられなくもありません。

 


Aldo Ciccolini(1925-2015)

  

 1991年に、なんと9日間でレコーディングを完了させてしまったという全集。この辺りからレコードでのリリースがなくなり、CDのみの発売が多くなって来ましたが、このチッコリーニの全集もCDのみで、しかもいきなりの5枚組として発売されました(ちょっとびっくり。というのも「え〜、いきなり高いんですけど…という戸惑いが)。そして個人的には、今までにない体裁のボックスで、「なんですか、これ?」という戸惑いの方が大きかったかもしれません。それまではプラケースでの販売が多かったのに、ボール紙のケース。まぁ、別にボール紙だからどうのこうのというのではなく、たんなる個人的な問題で、他のCDと並べた時に奇麗に並ばない、という、単なる見た目の問題です(笑)。

 まぁ、そんなことはどうでも良いのですが、一番マイッタのが音の問題。またまた出ました、薄っぺらな音。これは頂けない。1970年代のベロフの「前奏曲集」が非常に良かっただけに(アンプのアナログメーターの針を見つめるのが好きでした)、この遠く薄っぺらで、立体感のない音は何?という感じで、見た目も音も、私にとっては不評でした。そのおかげで、聴く機会を得ないまま手放してしまいました。

 このリマスター盤(2015年に亡くなられたあと「チッコリーニの至芸」という名前でリリースされ、彼のレコーディング全集の中に含まれていたものの分売)が2019年に出たときも、当時の記憶や感触が残っているので、大した魅力を感じることなくスルーしていました。それが、チッコリーニ自身が立ち会ってのリマスターということと、その音に非常に満足したということ。6枚組なのに1500円というウソのような価格に惹かれ、再び手に取ってみることにしたのでした。
 メーカーによれば「録音会場として名高い、ラ・ショー・ド・フォンと、ミュジク・ド・ラ・サルでおこなわれた録音も大変美しい」とあり、「はぁあぁ?」と思ってしまいました。とかくEMIの音は酷いという印象しか持ってないです。

 残念なのは、廉価盤とはいえ、アーティストのポートレイトが皆無ということでしょうか。EMIの初版にもチッコリーニの写真はなかったような気もします。今回はレーベルが変わった(EMIからERARTへ)から著作権とか、そんな版権の問題もあるのでしょうが、クラシックの世界は結構ありますね。だから安いのは嬉しいのですが、パッケージに手をかけなくなる、メーカーの悪いクセではないでしょうか?
 ビジュアル的にビックリなのは、ジャケットのドビュッシー。没後100年のイベントなどで、さんざん出回ったポートレイトですが、いくら技術が発達したとはいえ、100年以上前の写真を修整して、こんなにも今風(生々しい)の姿が浮かび上がってくるもんなんでしょうか? そういえば江戸時代の写真、とかもありますし… 凄い時代だ。 それが音にも反映してくれることを祈って手にしたと言っても過言ではありません。




Christopher Devine(1982-)


DISC 1(76'36")
ベルガマスク組曲(Suite bergamasque)
ボヘミア舞曲(Danse bohemienne)
2つのアラベスク(2 Arabesques)
マズルカ(Mazurka)
夢(Rêverie)
スティリー風タランテラ(Danse, "Tarentelle styrienne")
バラード(Ballade)
ロマンティックなワルツ(Valse romantique)
夜想曲(Nocturne)
ピアノのために(Pour le piano)
版画(Estampes)

DISC 2(75'06")
映像第1集、第2集(Images, Book 1 & Book 2)
忘れられた「映像」(Images oubliées)
子どもの領分(Children's Corner)
小さな黒人(Le petit negre)
ハイドンを讃えて(Hommage a Haydn)
レントより遅く(La plus que lente)
コンクールの小品(Morceau de concours)
仮面(Masques)
スケッチブックから(D'un cahier d'esquisses)
喜びの島( L'isle joyeuse)

DISC 3(79'04")
前奏曲集 第1集、第2集(Préludes, Book 1 & Book 2)

DISC 4(73'40")Ballets and other Arrangements
カンマ -ピアノ編- (Khamma -version for piano)
選ばれた乙女 - 前奏曲-ピアノ版- (La damoiselle élue: Prelude -version for piano)
遊戯 -ピアノ編- (Jeux -version for piano)
間奏曲(ピアノ三重奏曲 - 第2楽章 スケルツォ-インテルメッツォによる)
    Intermede (rrangements of Piano Trio No. 1: II. Scherzo-Intermezzo)
おもちゃ箱 -ピアノ編-(La boîte à joujoux (version for piano)

DISC 5(79'07")
12の練習曲 第1集、第2集(Douze Études, Livre I & Livre II)
新発見の練習曲(Etude retrouvée)
6つの古代の墓碑銘(Six épigraphes antiques)
英雄的子守歌(Berceuse héroïque)
アルバムのページ-負傷者の服のための小品
(Page d'album, pour l'œuvre du 'Vêtement du Blessé')
エレジー(Élégie)
燃える炭火に照らされた夕べ(Les soirs illuminés par l'ardeur du charbon)

 PIANO CLASSICSというレーベルからリリースされたクリストファー・ディヴァイン(Christopher Devine)のソロ全集。随分ドビュッシーのピアノ作品は聴いてきているので… とスルーしていましたが、最近の、というより今時のレコーディングや、リリースの理由としての付加価値は、新発見の曲が含まれているかどうかに掛かっているような気もします。ただ、それがレコード会社の方針だとすると、今後、新人の活動に影響が出てしまうのではないかと思ったり。
  このアルバムの主役も1982年生まれというピアニスト。私も含めた昔からのリスナーは、まだ巨匠とかの演奏が「最高」という基準で判断して、お気に入りに固辞してしまう(聴かず嫌い)ため、なかなか新人アーティストに耳を向けることが無くなってしまっています(反省)。

 ちなみに私の選択基準となっているのは、ピリオド楽器で演奏されていることに注目して聴いています。あと、このアルバムのように未聴の曲が数多く含まれている、とか。

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