星と天界の音楽と(星のソムリエのブログ)

 突然ですが、私にとってバロック音楽は星を見るときに傍らで流しておくには究極のB.G.M.になってくれています。バロックという言葉は、ポルトガル語の「ゆがんだ真珠」に由来されているとされ、それまでシンプルだった建造物に、ゴテゴテとした装飾をつけるようなものに対して、軽蔑的に「バロック」と言う言葉を使ったのが始まりだとか… 

 古来、神を象徴する形の一つとして正円が考えられていた時代に、占星術師であり理論天文学者のヨハネス・ケプラー(Johannes Kepler, 1571-1630)による楕円軌道の発見(1609年に発表された)は、まさにバロック様式の発展と呼応するのかもしれません。こうした出来事を重ねて考えてみると、世の中の色々なものは、実はすべてが深く結びついている言えるのかもしれません(私には洞察力がないので、これ以上の深追いは出来ませんが…)。

 そんなわけで、音楽と天文をくっつけて考えてしまう私の嗜好にうまく融合してくれるのがバロック音楽なのです。
  B.G.M.というと安っぽいイメージを植え付けてしまいそうですが、作曲家は主人の好みに合わせた音楽を演奏、作曲して生計を立てていました(モーツァルトの頃まで)。たとえばテレマンの『食卓の音楽』という組曲がありますが、まさに「食事にふさわしい音楽」として作曲されたものです。

 私が星を見ながら音楽を聴くという行為の直接の原因は、石田五郎さんの深夜喫茶にあるのですが、今では星空のお供にかかわらず、いつでも何かしら音楽を流してしまっています(笑)。特にバロック音楽は感情移入することもなく(笑)、聴いていて疲れない、癒しの気分を誘ってくれる音楽とでもいえばいいでしょうか。
 それから、バロック時代の宇宙観は、天界に新しい星座たちを装飾していた時代で、キラキラと輝く星が、満天の夜空の中で生きていた時代です。星々がそんなにも身近な生活の中に存在していたというあたりに、私は憧れるのでした。

  すでに時代は太陽中心説(地動説)となり、大型の発明された天体望遠鏡によって新しい惑星が発見され、ニュートンの力学が宇宙を説く時代でした。そういった激動の時代(あくまでも人々の考え方)に生まれ、空気を吸って演奏されていた音楽バロック。 テレマンやヴィヴァルディ、バッハなど、特に室内楽作品は、あたかも天体観測をしている傍らで、王族たちお抱えの奏者が静かに奏でてくれていたかのよう(まー、私は貧乏暇なしなので、そういった贅沢はできませんがー それはともかく)に流れてくる音楽と考えるのはもったいない崇高な作品たち。ここでは私が星空を眺める際に掛けておきたいバロック音楽を紹介します。

(2022/01/23 更新)
1668 - 1733 François Couperin
1672 - 1737 Francesco Mancini
1674 - 1763 Jacques-Martin Hotteterre
1681 - 1767 Georg Philipp Telemann
1685 - 1750 Johann Sebastian Bach
1689 - 1750 Joseph Bodin de Boismortier


Photo by tupichan 2016

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François Couperin
-1668 - 1733-
(フランシス・クープラン)

 クープラン一族は音楽家の家系であるため、フランシスをとくに「大クープラン」と呼んで区別することが多いようです。パリのサン・ジェルヴェ教会、宮廷礼拝堂のオルガニストを務め、多くの教会音楽を作曲。また器楽合奏およびクラブサンの小品に、ロココ趣味の典型とされる優美繊細な作風を確立した。三省堂から出版されている『クラシック音楽作品名事典』には7ページにわたり作品が紹介されています。

 このクープランという名を私が初めて知ったのは、モーリス・ラヴェル(Maurice Ravel, 1875-1937) のピアノ組曲『クープランの墓』でした。こちらも星空のお供に携帯している曲集です。





バルトルド・クイケン(フラウト・トラヴェルソ)
フランス・ブリュッヘン(フラウト・トラヴェルソ)
ユルク・シェフトライン(オーボエ)
ミラン・トゥルコヴィチ(ファゴット)
シギスヴァルト・クイケン(ヴァイオリン、バス・ヴィオール)
ジャニーヌ・ルービンリヒト(ヴァイオリン)
ヴィーラント・クイケン(バス・ヴィオール)
ロベール・コーネン(チェンバロ)

 クープランの名は、直接本人を知る以前に、私の好きな作曲家の一人であるモーリス・ラヴェルのピアノ曲集「クープランの墓」で知りました。

  そんなクープランの作品のお気に入りは、辞典の説明にあるように小編成による器楽合奏です。まずはじめに取り上げたのは「王宮のコンセール」。太陽王と言われたルイ14世(在位1643-1715)の為に書かれた「お昼の音楽会」ですが、室内楽を中心とした楽器構成で、ヴァイオリン、フルートの主役たちと、オーボエ、ファゴット、ダ・ガンバそしてチェンバロのきらめくような音色が、当時の雰囲気を誘います。当時の音楽会がどれだけ人気を博したのかうかがい知ることができるようです。
  愛聴盤は、今でこそ、それぞれが古楽界の重鎮として君臨し、レコーディングされた音源は、今も名盤として紹介され、音質が改善されたり様々なフォーマットで再販されるアルバム。1970年代頃まではブリュッヘン、クイケン兄弟らベルギー、オランダの古楽奏者が集まって数多くのバロック作品を残してくれていたことは、音楽ファンにとって非常に嬉しいことです。特にブリュッヘン&B.クイケンがクレジットされているあたり、ジャンルは違いますが、あたかもビートルズのレノン・マッカートニー、あるいはストーンズのジャガー・リチャーズを髣髴とさせます。あくまで個人の見解です(笑)。

  私は遅れて聞き始めたクチですので、名盤カタログを眺めながら曲を漁っているときに、こういったレコードに出会うと思わず何でも手を出てしまいます(単に評論家たちに操られているのかもしれません)。で、この廉価盤は価格が安くて大変嬉しいのですが、情報が端折られたりするので、誰がどこで演奏しているかなど、初心者には不親切です。のちのちわかったことですが、せっかくブリュッヘン&B.クイケンも共演はありませんでした(そもそもこの曲集には、楽器の組み合わせに関して指定がなく、演奏者たちに一任されているそうです)。





ブルース・ヘインズ(オーボエ)
ヤニーネ・ルービンリヒト(ヴァイオリン)
シギスヴァルト・クイケン(ヴァイオリン、バス・ヴィオール)
ヴィーラント・クイケン(バス・ヴィオール)
ロベール・コーネン(チェンバロ)
「王宮のコンセール集」の続編。そして「新しい」方はルイ14世死後に一般の音楽愛好家に向けて作曲された組曲。「王宮」は第1番から第4番まで、「新しい」コンセールは、続きの第5番から第14番まで。録音はアナログならではの柔らかい音で、楽器の生々しさを体感できます。そもそもセオンは、少人数の録音がとても良いと思います。








Photo by tupichan 2015


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Francesco Mancini
-1672 - 1737-
(フランチェスコ・マンチーニ)

 イタリア人作曲家、フランチェスコ・マンチーニ。リコーダーのLorenzo Cavasantiは、曲毎にリコーダーを持ち替えて演奏しています。微妙な音色の違いなど聞き分けています。。三省堂から出版されている『クラシック音楽作品名事典』には掲載されていない作曲家です。





アンサンブル・トリプラ・コンコーディア
ロレンツォ・カヴァサンティ(リコーダー)
キャロライン・ボースマ(チェロ)
セルジオ・チオメイ(チェンバロ)

 イタリア人作曲家、フランチェスコ・マンチーニ。私はこの曲集以外にも「ヴァイオリンとチェロのためのソナタ」を愛聴しています。リコーダーのLorenzo Cavasantiは、曲毎にリコーダーを持ち替えて演奏しています。微妙な音色の違いなど聞き分けています。










Photo by tupichan 2000

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Jacques-Martin Hotteterre
-1674 - 1763-
(ジャック=マルタン・オトテール)




Photo by tupichan 2021

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Georg Philipp Telemann
-1681 - 1767-
(ゲオルグ・フィリップ・テレマン)

「2本のリコーダー」といったら真っ先に思い浮かぶのが「リコーダーの妖精」と言われたミカラ・ペトリの来日記念盤としてリリースされたテレマンの「ソナタ」です。私が二挺のための作品集をあさるようになったのも、このアルバムがきっかけといっても過言ではありません。素朴な2本の笛から聞こえてくるのは牧神パンの奏でる笛か、ミューズたちの語らいか。アルバム全体に山岡 & 向江で取り上げたブラヴェの「女神たちの対話」というタイトルを付けてもいいぐらい。リコーダーは吹いても聴いても楽しい楽器、ということを教えてくれる一枚です。




「王宮のコンセール集」としてクイケン兄弟を中心としてレコーディングされたシリーズの続編に当たるレコーディングです。




 ブリュッヘンが監修となって様々な楽器の組み合わせによるソナタ集。特に新鮮だったのはボストン・ミュージアム・トリオによる演奏。主役はヴァイオリン。このテレマンの曲集は、様々な楽器による組み合わせが可能で、ブリュッヘン監修の下、そうした楽器の組み合わせによる違いを楽しむことができます。




 ブリュッヘンが監修となって様々な楽器の組み合わせによるソナタ集。特に新鮮だったのはボストン・ミュージアム・トリオによる演奏。主役はヴァイオリン。このテレマンの曲集は、様々な楽器による組み合わせが可能で、ブリュッヘン監修の下、そうした楽器の組み合わせによる違いを楽しむことができます。

さらにテレマン!




Photo by tupichan 2015

☆ ☆ ☆

Johann Sebastian Bach
-1685 - 1750-
(ヨハン・セバスティアン・バッハ)

 中学生の頃、第5番の第一楽章がラジオから流れてきてから、星空を眺めるとき、この曲を傍らに流していました。しかし、演奏者が分からずテープも何処かに行ってしまい、いつのまにか曲名まで失念してしまいました。それが、何かの拍子に同じ演奏者を捜し当て、以来、ずっと星空のお供をしてくれています。そうした個人的な感情を抜きにしても、このアルバムは素晴らしいひとときを作り出してくれるに違いありません。当時を忍ばせる音楽、演奏、そして天界の表情。そんな時代に星空を眺めて見たかった。

さらにバッハ!


Photo by tupichan 2011

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Joseph Bodin de Boismortier
-1689 - 1755-
(ジョゼフ・ボダン・ド・ボワモルティエ)
 1689年生まれのボワモルティエは、フランス盛期バロック音楽の作曲家。器楽曲、カンタータ、オペラ・バレ、声楽曲と幅広いジャンルを手懸けただけでなく、庇護者なしで、新作の創作とその出版のみによって生計を立てることのできた、最初のフリーランスの作曲家でした。ジャン=フィリップ・ラモーと並んで、ロココ時代の音楽趣味を担った一人。(ウィキペディアより)


 イリジウム・アンサンブル(Elysium Ensemble)のメンバーによるフルートとヴァイオリンだけで演奏したデュオ・アルバム。相性の良い二つの楽器による絡みが、星空を想わせるというよりも、日がな一日のお昼寝にピッタリ(笑)。




Photo by tupichan 2020

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 ブリュッヘンが監修となって様々な楽器の組み合わせによるソナタ集。特に新鮮だったのはボストン・ミュージアム・トリオによる演奏。主役はヴァイオリン。このテレマンの曲集は、様々な楽器による組み合わせが可能で、ブリュッヘン監修の下、そうした楽器の組み合わせによる違いを楽しむことができます。




 ブリュッヘンが監修となって様々な楽器の組み合わせによるソナタ集。特に新鮮だったのはボストン・ミュージアム・トリオによる演奏。主役はヴァイオリン。このテレマンの曲集は、様々な楽器による組み合わせが可能で、ブリュッヘン監修の下、そうした楽器の組み合わせによる違いを楽しむことができます。




 ブリュッヘンが監修となって様々な楽器の組み合わせによるソナタ集。特に新鮮だったのはボストン・ミュージアム・トリオによる演奏。主役はヴァイオリン。このテレマンの曲集は、様々な楽器による組み合わせが可能で、ブリュッヘン監修の下、そうした楽器の組み合わせによる違いを楽しむことができます。




 「2本のリコーダーのための作品集」と題されたアルバムで、テレマン、オトテール、ブラヴェの作品を演奏しています。テレマンは既にペトリ、ラウリン盤で親しんでいたので、ここではブラヴェの作品が新鮮に響きました。
 個人的にギリシア神話を連想させるタイトルの「女神たちの対話」に興味があり手を出した一枚です。オリジナルはラモーのクラブサンをブラヴェが2本のトラヴェルゾに編曲したものを移調してリコーダーで演奏しているもの。(オリジナルじゃないのかー)
 どの演奏からもリコーダーという素朴でシンプルな楽器の音色を存分に楽しむことができます。使用楽器はフレンチピッチ(a=392)のF管アルト、D管テナー、D管ソプラノリコーダーを奏でています。素朴ってすばらしい!


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