ウィンダム・ヒルの掲示板

HYMN, CAROLS AND SONGS ABOUT SNOW
/ Tuck Andress

 

1991 Windham Hill Records


01.Winter Wonderland
02.Silent Night
03.Coventry Carol/What Child Is This
04.Jingle Bells
05.Ave Maria
06.Little Drummer Boy
07.Santa Claus Is Coming to Town
08.It Came upon a Midnight Clear
09.God Rest Ye Merry Gentlemen
10.Deck the Halls
11.O Little Town of Bethlehem
12.Rudolph the Red-Nosed Reindeer
13.Angels We Have Heard on High

Tuck Andress: Guitars



 タック・アンドレスのウィンダム・ヒル・デビューは、1987年に新しく立ち上げられたウィンダム・ヒル・ジャズから、奥様でもあるパティ・キャスカードとのデュオアルバム『TEARS OF JOY』です。 あまり話題にならなかったのは、本レーベルからではなく、ウィンダム・ヒル・ジャズからリリースされたためでしょうか?  当時のウィンダム・ヒルはまだアコースティック・インストゥルメンタルが主流で、マイケル・ヘッジスのヴォーカルアルバムも、レーベル本家の傘下オープン・エアーからリリースされていたぐらいです。

 しかし、タック&パティのデビューはもっと古く、モントルー・ジャズ・フェスティバルなどに出演していたので、レコード・デビューする前からジャズ畑では「すごいアーティストがいる!」と話題になっていました。
  ジャズ・ギタリストにはすんごいバカテクをもったギタリストは星の数ほどいる(らしい)のですが、その中でもタックのユニークさは目を見張るものがあります。たった1本のギターだけなのに、ボリュームのあるパティのヴォーカルがシンプルさを感じさせないからです。そしてそれがワン・アンド・オンリーの魅力をたたえています。


 さて、そんなおしどりデュオ、タック&パティのギタリスト、タック・アンドレスがたった一人でレコーディングしたクリスマス・キャロル集。誰もが知っているクリスマス・ソングを、彼は愛器1958年製のレスポール1本で紡いぎ、実に心温まるクリスマスキャロル集を作ってくれました。

 ここで疑問が生じませんか? 「なぜ奥様とやらなかったのか」と。ディープなパティの声質はクリスマス・キャロルのような敬虔な気持ちにさせるような歌にはもってこいの雰囲気を持っているのに、なぞです。まぁ、あまり詮索するな、ってことなんでしょうけど。

 生ギターが奏でる優しい音色が暖炉の暖かい炎を感じさせるなら、エレキ・ギターはオイルランプのような温もりを感じさはしないでしょうか。私はこのアルバムを聴く今頃のシーズンになると、ふとそんな想像にかられます。かつて自分が体験してきたワン・シーンに流れていたような。

 彼のコメントには失敗(弾き損じ)もそのままの状態で録音したので気になさらないで欲しい、といったたぐいのメッセージが寄せられています。完璧なまでのエモーションで弾かれているので、そんなことはいっさい気にならないし、私のような素人が聴いたところで、まったくわかりません。もしかすると、逆に失敗を見つけられるなら探してごらん、とでも言っているかのようです。 タック・アンドレスのギターは同朋のマイケル・ヘッジスとはまた違うテクニックを持っていて、タックが紹介されたときはウィンダム・ヒルのレーベルの深さを感じたものです。ただ、彼らはウィンダム・ヒル傘下のジャズ・レーベルに所属していたために、レコード上の交流がなかったのが残念でなりません。
 そんな中でも1991年に制作された『THE CAROLS OF CHRISTMAS II』では、たぶん同じセッションでレコーディングされたであろうTuckのソロによる“Coventry Carol/What Child Is This”が収録され、『A WINTER SOLSTICE REUNION』ではタック&パティとして“Christmas With”を提供してレーベルに存在感をアピールしてくれました(2枚ともウィンダム・ヒル・レーベルから)。

 ウィンダム・ヒルがレーベルとしてレコードの製作をやめてしまってから、アーティストたちはそれぞれ自主レーベルを立ち上げたり、大手のレーベルに移籍したりと様々でしたが、タック・アンド・パティはそのユニークな音楽性から大手レーベルへと移籍し、コンスタントにアルバムをリリースしてくれています。日本にもたびたびブルー・ノートなどでライヴを行っていますから、一度は生で見てみたいと思うギタリストです。


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