星と天界の音楽と(星のソムリエのブログ)

ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)
作曲:1788頃
初演:不明(ただし生前に演奏された形跡あり)

 星を眺めるときに聞く音楽として、手始めにその対象となるのは曲名です。だからホルストと出会ったあとにも、この類いの音楽はたくさんあるのだろうと期待していましたが、なかなか巡り会うことなく、FMラジオの番組表を眺めては、星や天文に関わりのあるタイトルばかりに目を向けていました。

 そんな中、比較的すぐに見つかるのがモーツァルト(1756-1791)の最後の交響曲となった41番目の作品についた名前の『ジュピター』ではないでしょうか? 親友であるハイドン(1732-1809)を英国に招いたことで知られるヨハン・ペーター・ザロモン(1745-1815)が命名したと伝えられていますが、モーツァルト自身が命名したタイトルでないので「星と関わりのある曲」としてお勧めしづらいのですが、オープニングの雄大なメロディは、まさにジュピター(ギリシア神話の最高神ゼウスと同一神)と言うニックネームにふさわしい滑り出しです。そしてエンディングに至るまでも(当時はまだ知りませんでしたが)モーツァルトの最後の交響曲としての貫禄も備わっていたように感じました。

 ちょうど私が星の音楽を探していた頃、新譜としてリリースされたのが、私のお気に入りの指揮者になりつつあった一人、イタリアの若き俊英リッカルド・ムーティが、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団を振ったレコードが広告に掲載されました。 この頃はまだピリオド・アプローチなど、ごく一部の文献的な演奏ぐらいしか知られていないような時代だったから、この演奏はいかにもムーティらしくメリハリがあり、かつ重厚な響きを聴かせたこのレコードがまもなく私のお気に入りの演奏となったのは言うまでもありません。
  ここで紹介しているムーティ/ベルリン・フィルは1985年の録音。このころはもう一枚は6年後にウィーン・フィルを振ったもの。1985年当時は、まだ帝王カラヤンが存命中だった頃なので、カラヤン以外の指揮者がベルリン・フィルとクレジットされること自体が珍しく、私の好きな指揮者がクレジットされたことで、なんだかとても嬉しかったのを思い出します。ムーティは他にもモツレク、ベルディの「聖歌四篇」、ヴィヴァルディの「四季」、ハイドンの「十字架上のキリスト」、リヒャルト・シュトラウスの「イタリア」をレコーディングしてくれました。恐らくムーティがベルリン・フィルとレコーディングを(指揮台に経つことはあっても)したレコードは、この短期間以外には無いかもしれません。
 ベルリン・フィルとウィーン・フィルの両方で同一の曲を録音してくれると、クラシックファンとしては、いろいろな楽しみが出てくるのですが、聴く以外にも、なんとなく両者が並んでいるのを視覚的に眺めるだけの楽しみも、いろいろと想像できて楽しいのです。

♪リッカルド・ムーティ指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1985)
♪リッカルド・ムーティ指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1991)

てな感じで(笑)

「ジュピターという名前は本人がつけたタイトルじゃないし、ギリシア・ローマ神話とも何の関わりもない」と主張したところで、世間(日本)では習慣になってしまい、レコードでも本でも、コンサートのプログラムでも「ジュピター」という名前がついて回ります。

  まぁ、それはそれで良いのですが、超有名曲なので、様々な指揮者が取り上げています。そんな中、星空を眺めるときのお供としてお勧めしたいのがピリオド・アプローチによる演奏と、ニックネームをつけたフンメルの編曲による弦楽四重奏曲版があります。

こうした演奏は、たとえば今なら当たり前のように、食事の時に音楽を掛ける、つまりディスクをセットしてスイッチポンでCDなんか掛けたりすることは簡単ですが、当時の王宮では主人が食事の際、傍らに本物の音楽、つまり弦楽四重奏団などを席に座らせて演奏させているスタイルだったかも知れません。そんなことを考えてみると、星を眺めている時に傍らでなっていて欲しいのは、少人数編成。うるさくないし(曲によってはうるさい演奏もあるかも…)。

フランス・ブリュッヘン/18世紀オーケストラ


 初めてこのモーツァルトの交響曲を生で聴いたのは、2013年に最後の来日となってしまったブリュッヘンでした。そしてピリオドオケで聴いたのもブリュッヘンが初めて。星を眺めるときの音楽として探していた曲としても、ホルストの惑星についで、すぐに捕まえたのがこの曲(笑)。カール・ベームのレコードです。

リッカルド・ムーティ/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

 上の写真でカップルとして並べたように、ムーティはカラヤンが存命中の1985年にベルリン・フィルと、そして6年後にはウィーン・フィルを振ってレコーディングしてくれました。どちらもそれまでのどっしりとした重々しい運びではなく、女たらしのゼウス(ローマ神話のジュピター)を思わせるようなリズミカルな感じ(決して軽いというのではなく)です。まぁ、ベルリンの方がやや深刻ぶっているような気もしたり…
ジェームズ・レヴァイン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

 モーツァルト没後200年を記念して企画された、ウィーンフィル唯一のモーツァルト交響曲全集。後にも先にもこの楽団のモーツァルト交響曲全集は企画されていません。その大役を受けたのがピアニストでもあるジェームズ・レヴァイン(1943-2021)。
 フンメルが編曲したモーツァルトの交響曲は36番〜41番までの6曲。いわゆる後期交響曲群。壮大さを売り出すことを目的に出版社はタイトルを付けたのに… と思いつつも、ポケットに入れて星空を眺めに行きたい時には、このこじんまりとした演奏を連れて行きます。たった4人の演奏(フルート、ヴァイオリン、チェロ、ピアノ)ですが、もともとが大シンフォニーなので四重奏でも雄大さは変わりません。そういう意味では、出版社の思惑通り。フンメル以外にもクレメンティが同じ編成で編曲しています。

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