ウィリアム・アッカーマンを囲んで(ファンの集い)

2016年9月22日(木)ホテル・オークラ

 「How are you doing ?」ウィルはそう言って私の方に近づいてきてくれました。

 雨脚の強い朝9時。ウィンダム・ヒルズの呼びかけに集まった12名も、ウィルとの再会、そしてそれぞれの再会に花を咲かせていました。まるで同窓会!
 ウィルの日本での演奏は27年ぶり。私に至っては1985年に昭和女子大での『ウィンター・コンサート』以来の再会。その時は若かりし頃のフィリップ・アーバーグ、マイケル・ヘッジスもいました。

 当初の予定では1時間のはずが3時間に及ぶセッション(笑)。ウィルは今回、日本に戻ってこれたこと、「林檎の庭奉納特別演奏」という特別な演奏会ができたことを非常に光栄に思うし、とても嬉しいと述べてくれました。
 そして「この言葉には社交辞令という表向きのものではなく、心の奥から感じていることだ」と、通訳をしてくれた堅田さんへ、その事を特に強く伝えて欲しいと語ったそうです。その表情からも、ウィルの言葉には心から日本に来れたことの感謝の気持ちが伺えて、私たちもウィルに感謝しました。

 ウィルは挨拶を述べると「さあ、なんでも聞いて欲しい。今回のこと、今までのこと、これからのこと」と集まったファンの心を読んだかのようにニッコリと合図を出してくれました。

 今回来日は短時間で、しかも特別演奏会という、たった1回のパフォーマンスで終わってしまいましたが、ウィルが来日した意図は、この演奏以外にもウィルの手がける音楽の流通ルートの開拓もありました。ウィンダム・ヒルや、現在ウィルが手掛けている音楽を、過去のブームだけで終わらせるのはもったいないし、本国アメリカだけで聞かれるべきではない、老若男女を問わず多くの人たちに必要とされるジャンルなので、もっと多くの人に聞いてもらいたいという思いで。

 しかし今回のパフォーマンスに合わせて『THE GATHERING』といったコンピレーション物やウィルの音源をiTunesはじめとする媒体での配信が間に合わなかったのが残念でした、とはウィルを呼んでくれ、このセッションを企画してくれた堅田さん。

 今はCDといった媒体よりも、気軽に音楽をダウンロードして、複雑な生活環境の中にあっても、簡単に音楽と接することができる媒体をもっと活用したい、そして多くの人に彼らの音楽を聴いてもらいたい、というウィルの思いを堅田さんも力説します。

 今回の滞在中の間にも、複数の紙媒体へのインタビュー(読売新聞、日本経済新聞(10/17夕刊)、アコースティック・ギター・マガジンetc.)、ラジオの出演(J-Wave、TOKYO-FM)もありました。その忙しい合間を縫ってファン・ミーティング!

私は「演奏活動が減ってさみしい限りです」とウィルに言いました。

 実は続けて 「演奏が減った分、Imaginary Road Studioでの若手の作品をプロデュースし、年間10枚以上も手掛けてくれているので、そのたびにウィルの新作を聴く思いがします。今まで以上にウィルの音楽に触れて嬉しい」そして 「新しいバンド、FLOWについて教えて下さい」と質問しようとしたのですが、最初に通訳してもらった私の言葉から、実に長々とした答えが帰って来たのです。そしてその中に私の聞きたかった内容も含まれていました。

 今までは若手のアルバム制作に手を貸してプロデュース業に専念していました(ウィルは現在、Imaginary Road Studioで年間10~12作品のプロデュースを行っています)。そして彼らを紹介するコンピレーション作品の『THE GATERING』も4作目まで作る計画があること、そこには1、2合わせると総勢90組が紹介されることになるそうです!

 そうした仕事や、自らの大病を患ったことなども影響、そして現在の奥様との出会い(Noah Wilding)、広大な敷地で無農薬野菜を作りながら自然と向き合ったことで、作曲、そして演奏する喜びを再認識することができたそうです。
 ウィルは奥様と出会うことで、短期間に、なんと19曲も書き上げたそうです(日本経済新聞のインタビューには、2017年にニュー・アルバムをリリース、しかも「グラミー取るよ」とまでコメントしています)。これらをレコーディングしてくれることは間違いないのですが、ソロ用なのか、それとも新しいグループFLOWに提供するのか、どちらにしても楽しみです。


 ウィルはまた、新しいバンドFLOWに関しても話をしてくれました。私がFLOWの意味を尋ねると、
「FはピアノのFiona Joy、LはギターのLawrence Blatt、OはホルンのJeff Oster、そしてWは(自分を指さして)Me」と説明してくれました。つまりWはWill Ackermanということです。

 そしてウィルにFLOWのセッション・フォトや公式HPを見せると

「なんで私が見たこともないページを知っているんだ!? 君はスタッフか!?」
 なんておどけていましたが、私は他のメンバーの作品も良く聴いているので、このグループの活動を、今か今かと、首を長くして待っています(意外だったのはEugenやJillが入ってないことかな)。

 現在、ウィルのHPでは「日本」と書かれ、2017年にツアーをするための準備をしている旨のクレジットが掲載されています。来年、ウィルが日本のマーケットに照準を合わせてくれていることは間違いありません。それに応えるためにも、多くの人々にウィンダム・ヒルや、ウィルのプロデュースしている作品群に耳を傾けてもらえるような宣伝が必要でしょう。FacebookとかTwitterとかのツールが手っ取り早いでしょうか。そうしたファンの行動が、日本の音楽業界に浸透してくれれば、来日はさほど難しいことではないはずです(だってあのウィンダム・ヒルのウィルですよ!

彼らが来日しやすくなるような土壌を耕しておくのが、ファンの役割なのは言うまでもありません。

 

~こぼればなし~

 今回の来日で同行していたTodd Boston。実は彼に合うのも楽しみにしていたのですが(サインをもらおうとアルバムまで持ってきた)、レストランに入る直前に「あれ、トッドは?」と聞くと、「実は昨日、彼の帰国のために同行していたんですよ」とウィンダム・ヒルズの大西さん。

「え~、彼と合うのも楽しみにしていたのに!」

 今回の来日で、日本の音楽業界はトッドのことを全くまったく取り上げず。今冬のウィンダム・ヒルによる冬のコンサート(Windham Hill Winter Solstice Concerts)に、唯一ウィンダム・ヒルのレーベル・メイト以外で参加しているのにもかかわらず!

というわけで、彼抜きのミーティングでしたが、ウィルがトッドのことに触れたので「彼のアルバムも持ってきましたよ」と、ウィルに差し出すと喜んで手にして「彼のような若手の手助けをしたい」としみじみ語ってくれました。

そして、一緒に持って来ていた『THE GATHERING』のアルバムを貸してくれと手招きするので、アルバムを手渡すと「ウィンダム・ヒル・サンプラーのような感じかな。第4弾まで決まっていて、総勢90組近いアーティストを紹介できるんだ」と教えてくれました。

 

~こぼればなし2~
 ミーティングも終わってフォトセッション後、ウィルがフロアの端っこでとある男性と談笑している姿が目に止まりました。ちょっと見るとマネージャー的な貫禄(普通じゃないオーラ)が漂っていて、我々ファンとは違う雰囲気の方と立ち話をしています。
のちのち調べてみると、なんとうかつにも気づかなかったのですが、ウィンダム・ヒルからリリースされた唯一の日本人アーティスト(グループ)、インテリアズ野中英紀さんだったのです。

 わかっていたらいろいろお話を伺いたかったのに!(facebookで連絡を取ることができました)
 

~こぼればなし3~
 1時間予定のミーティングも気がつけば3時間…

 そろそろお開きにしましょうかというときになって
 「ここは私のおごりだ」と
 伝票にサラサラっとウィルがサインをしてくれました

 「ご馳走様でした!ウィル!」

左は伝票にサイン、右はアルバムへの正真正銘のサイン(笑)