ウィンダム・ヒルの掲示板

Photo by Toshiharu Minagawa.


WH-1067
DESIGN / Interiors
Produced by Interiors.
*Co-Produced by William Ackerman.


 

Windham Hill Records, 1987


01. Gaia (Eiki Nonaka)
Eiki Nonaka; MIDI Guitar, Sequence Programming
Daisuke Hinata; MIDI Keyborad, Sequence Programming

02. N.Y. 1908 (Daisuke Hinata)
Daisuke Hinata; Steinway Grand Piano, Sequence Programming

03. Spring Walk* (Eiki Nonaka)
Eiki Nonaka; Guitar, Drums, Sequence Programming
Daisuke Hinata; MIDI Keyborad

04. Shadows Of You (Eiki Nonaka)
Eiki Nonaka; Electric Guitar, Drums, Sequence Programming
Daisuke Hinata; Steinway Grand Piano, MIDI Keyborad
Michael Manring; Fretless Bass

05. River (Eiki Nonaka)
Eiki Nonaka; MIDI Guitar, Electric Bass, Sequence Programming
Daisuke Hinata; Sampled Saxophone

06. Out Of Tokyo (Daisuke Hinata)
Daisuke Hinata; MIDI Keyborad, Sequence Programming



 アッカーマンは兼ねてからレーベルに新風を吹き込む要素としてエレクトロニクスと、ヴォーカルを積極的に取り入れようとしていました。特にエレクトロニクスへの興味は早くからあって、いくつかのインタビューの中で語っています。

そんな中、日向大介野中英紀(野中丈太郎)の日本人のユニットがアッカーマンの目に止まり、まず1984年に『INTERIORS』(WH1047)がリリースされました。このアルバムは1982年に細野晴臣と高橋幸宏(あのイエロー・マジック・オーケストラのお二人です)YENレーベルから発表されていたため、米国市場に似合うようにリ・ミックスが行われて紹介されました(一部曲目も変更されています)。
 そんな経緯を持っているので、事実上のレーベルデビューは、彼らにとって2ndとなるこちらの『DESIGN』の方が、より「デビュー」に近い心境で製作されたのではないでしょうか。もっともベテランアーティストなので、そんなことを考えてはいないでしょうが。

 ジャケットからして、それまでのウィンダム・ヒルとは違う印象を与えてくれますが、とにもかくにも、アコースティック・サウンドを離れ、アルバム・クレジットにも詳細が書かれているとおり、デジタル機器をふんだんに駆使(使用ケーブルなども書かれています)し、究極の音質を追求して作られたサウンドが紹介されています(そういえば、私の好きなアーティストのYesも1994年にリリースした『TALK』では、アナログ部分をいっさい排除したデジタル・サウンドを創り上げていましたが、そんなことを思い出してしまいました)。

 デジタルを追求したサウンドだからといって決して冷たくはない、このレコードに針を降ろしたときに聞こえてきた音を最初に聞いたときの印象でした。特に個人的に興味をひかれたのが、ベースやバスドラを強調したエレクトリックな曲に挟まれた2曲目の“N.Y. 1908”。
1908年製のピアノSteinwayからインスピレーションを受けたという曲。果たしてデジタルサウンドとして編まれたこの曲が「1908年製のピアノSteinway」を弾いてレコーディングされたのか、あるいはサンプリングとして音をコンピューターに取り込んで打ち込まれたのか、古楽ファンである私には興味のあるところです。 確かに、このくすんだ音色は「今」のスタインウェイとはほど遠く、セピア調のマイルドな音がいかにも時代を感じさせます。グールドのバッハやセロニアス・モンクのような流れるメロディラインが、なんとも言えない趣を感じさせてくれます。

 レコードのB面の1曲目に収録されている“Shadows Of You”は、最初にギター、ベース(Michael Manring !)、ヴォーカルが繰り返すモチーフが続くと思いきや、突然終止符を打ち、そのあと曲調が変わり幻想的な音のコラージュが現れます。野中氏の中学時代の音楽体験の残像が表現されているようで、様々な楽器によるアンサンブルで組曲風に仕上げられていますが、基調は流れるようなギターでしょうか。アルバムの中では10分を越える大作。他にも“River”のリズミカルなサウンドはアマゾン川をイメージしたと言うだけあって、その土地の雰囲気が伝わってくるような音絵巻。そしてラストの“Out Of Tokyo”いかにもシンセサイザーのストリングセクションというスペイシーな音(私には冨田勲の自作のように聞こえる)で締めくくられます。

 現在はインテリアズも解散し、ウィンダム・ヒルのレーベルもない状況ですが、日本から世界へ向けて作られた当時の音は、古くさくも何ともなく、時間を超えどんな映像にも似合いそうな音サウンドとして紹介されました。まさにレーベルが求めていた行く先にいたアーティストだったのです。


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