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1987年、『GLASS GREEN』に続いて『SOUL OF THE MACHINE - The Windham Hill Sampler of New Electronic Music』と題されたオムニバスのアルバムがリリースされました。副題にあるように「エレクトロニクス・ミュージック」のアーティストを集めたコンピレーションで、その中には今回紹介するTim Storyも含まれていました。収録曲は、このアルバムからセレクトされています(Lure of Silence)。まさにサンプラーを意味していました。
さて、ティムはウィンダム・ヒルのコンピレーション物にはほとんど顔を出してくれていたので、レーベルからリリースされたアルバムが、この一枚だけだったというのは驚きです。 だいたいが、アルバムタイトルから、そのアーティストの音楽性やサウンドを想像、あるいは連想してしまいますが、ティムのこのアルバムも良くタイトルが練られていて、最初に聞こえてくるクリスタルなサウンドは、儚く透明感のある瑞々しい情景が目の前に現れてきそうです。それも自分の過去の映像として。 これはティムにとって6枚目のアルバムで、ウィンダム・ヒルのコンピレーションに多々楽曲を提供してくれていますが、レーベルからはこの一枚のみのリリースというのが、ちょっと意外な気がしました。また、このアルバムでは、全てのサウンドを作り出していますが、楽曲を提供しているコンピ物では、ティムのシンセ+ピアノにチェロやフルートといった生楽器が絡むクラシカルなサウンドを作り出す、という作りわけをしているかのようです。 このアルバムはカタログナンバーがWH1061で、続くWH1062が『SOUL OF THE MACHINE』と題されたサンプラーアルバム、エレクトロニクスアーティストによるオムニバス(邦題『麗』)でした。その中でティムは10曲目に紹介され、その曲はここでも7曲目に収録されています。 シンセサイザーは、よく「音の万華鏡」などと言った表現をされることがありますが、それでもアーティストをイメージ付けるような個性的なサウンドがあるように思います。つまり、全く聴いたことがない曲(新曲)だったとしても、「この音は誰かみたいだな」という、そのアーティストの代名詞となりうるサウンドというのがあるのではないでしょうか。それはティムにも言えることです。 ティムのアルバムでも、万華鏡のような華やかさがありますが、基本的に使われている音色は少なく、アルバム全体のトーンが均一に仕上がっています。そのお陰で、アルバムの表情が崩れないし、ひとつのパノラマとして見渡すことができるようです。生のピアノを弾き、そこにシンセサイザーで色を付けていく。特に多用しているのがパンフルートのような音色でしょうか。 どの曲にも言えるのが、短いフレーズを繰り返す「ミニマルミュージック」という骨組み。この繰り返しには聞き手を覚醒させる作用があって、この手の音楽が好きな人には、透明感のあるサウンドと相俟って、その切符を手にしたならば、どこか空想の世界に入り込めるかも知れません。 |
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