Photo by Toshiharu Minagawa. |
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01. Voyager IV(Paul Horn)
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若かりし頃はアーマンド・アサンテに良く似た(似てない?)風貌のポール・ホーン。もっと早くレビューを書きたかったと思っています。というのも、昨年(2014年)に故人となられてしまったので。ジョージ・ハリスンやジョン・レノンとセッションをしているのかな、と思いつつ… ウィンダム・ヒルからは、このアルバム一枚のみのリリースで、それもレーベルのためにレコーディングされた作品ではなく、1984〜1988までの間に、別のレーベルでレコーディングされた楽曲を集めたもの、という変わった作品集です。 私が彼を知ったのは、カタログに新作としてクレジットされたときから。しかし、なかなか聴く機会が無く、やっとの思いで手にしてみると、なんとこのジャンルでは大物ではないですか! しかも、1967〜1968に掛けてはビートルズと共にインドへ出向き、マハリシ・マヘギ・ヨギのもとで瞑想を学び、その経験が後々の彼の音楽の方向を変えていたとは(インドではジョン・レノンと一緒に写ってるし! 知らなかった!)。 最近(といっても2009年)、こんなこともありました。ポール・マッカートニーとリンゴ・スターは、超越瞑想を学生たちに普及させるために、映画監督のデビッド・リンチが主催する「100万人の子供達に超越瞑想を教えるための支援コンサート(CHANGE BEGINS WITHIN)」と銘打った慈善コンサートに出演しました。賛同したアーティストの中に、共にインドで学んだポール・ホーンの名前もあります(他にシェリル・クロウ、ドノヴァン、ベン・ハーパー、モービー、マイク・ラヴ、エディ・ベダー)。そしてYoutubeには、ポール・マッカートニー、リンゴ・スター、ドノヴァンと共に記者会見に臨むポール・ホーンの姿を見ることができます。 と、アルバムレビューとは関係ない方向に行ってしまいましたが… このアルバム『SKETCHES: A COLLECTION』がリリースされた時点で、ポールの存在すら知りませんでした。ただ、アルバム・ジャケットがレーベル当初のコンセプト(白地に風景写真)だったから、また新しいアーティストだとばかり思っていたのです。名前も、リード楽器も良く似ているポール・マッキャンドレスもいたし。 その割には、最初のフルートの音色が、あまりにもどっしりと足が地についていて、慌ててバイオグラフィを調べてみたら、なんと大ベテラン、しかもポール・ウィンターの先輩格になると知って驚きました(その驚きの中には、先のビートルズとのインド旅行も含まれます)。 彼を紹介する際に「ニュー・エイジ・ミュージックの父」などという形容も良く見かけます。まさか、そんなアーティストだったとは! その大物をウィンダム・ヒルへ招いたのは当然の成り行きかもしれません。ただ、このアルバムに収められているのは、ウィンダム・ヒルがムーブメントとして全米を駆け巡っていた時期、1984〜86年に掛けてレコーディングされていたもので、レーベルを超えての再発扱いとなるのでしょうか。 確かにこの頃のウィンダム・ヒルはLost Arkというレーベルを傘下に置き、過去の作品をリ・イシューさせていました。その中にはジョージ・ウィンストンの『PIANO SOLO(1972)』や、スコット・コッスの『STILL MOMENTS(1980)』、シャドウファクスの『Watercourse Way(1976)』などが含まれています。であれば、ポールのアルバムもこちらのレーベルからという気もしますが、時期がそんなに古い音源でもないし、インテリアズも過去の作品をタイトルだけ変更してデビューさせている経緯もあるので、なかなか複雑です。ただ、残念なのは、これだけのサウンドクリエイターながら、この後のアルバムがウィンダム・ヒルからリリースされなかったことです。 収録曲は、当時の音楽が彼のサウンドにも反映されているのか、フルート+シンセサイザーという彼のトレードマークにしても、「おっ、このシンセベースはマイケル・ジャクソンの♪Smooth Criminalだなぁ」とか、「このチープなシンセリズムはミスター・ミスターの♪kyrieじゃん」などと、結構ポピュラーに近いサウンドを楽しむことができます。その他、リムスキー・コルサコフの『シェエラザード』のテーマがチラっと奏でられたりして、いろいろなジャンルの音楽がなんら違和感なく収まっているという感じです。 |