tupichan's billboard hot 100



 U2を聴き始めたのは『WAR』から。1983年ごろでしょうか。ちょうど洋楽を聴きはじめ、特にその頃は多感な高校時代を送ったこともあり、「先生の言うことは聞かないけど、アーティスト(特に洋楽)の言うことなら聞く」みたいな。勉強はしなかったけれど、「すべては3分間の音楽から学んだ(by ブルース・スプリングスティーン)」の影響が大きく、そんな反骨のあるアーティストとして、U2というバンドを選んだのでした。

  特に♪New Years Dayや♪Sunday Bloody Sundayのサウンドと、雪原を行く彼等のビデオクリップは衝撃的と思えるほどでした。
  彼らは玄人受けするバンドではありポップとは無縁な存在。それもそのはず、歌の内容が政治色の強い歌を前面に掲げるバンドでした。
 当時はバンドエイドやアパルトヘイトなど、「音楽で世界を救う」といった風潮が高く、ヒットチャートでもピーター・ガブリエルの“Biko”などに代表される黒人指導者を称えた歌を歌っていました(U2の場合は『THE UNFOGETTABLE FIRE』の“MLK”)。特に『WAR』では、自国アイルランドの紛争をテーマにした内容で、そのサウンド(プロデューサーのスティーブ・リリーホワイトとの相性が良かった)でも私は魅了されました。

THE JOSHUA TREE(1987)

 そんな彼らの1987年にリリースした『THE JOSHUA TREE』は、同年のグラミー賞でアルバム賞を受賞してしまったおかげで、ほとんど耳を傾けなかったポップスリスナー(シングルカットがビルボードで1位にもなったため)さえも巻き込み、一般大衆化へと変貌してゆきます。
 前作『THE UNFORGETTABLE FIRE(焔)』のMLKのエンディングが、そのまま引き継がれた形でオープニングを飾ります。それを聴いたときは、正直、身震いがしたものです。

 2007年はリリース20周年に当たり、それまでシングルのB面にしか収められなかった曲や、同じ時期にレコーディングされながら収録されなかった音源などをパッケージ化してスペシャルエディションがリリースされました。

 今では評価も高く、U2を代表し、時代をする一枚になっていますが、発売当時の“日本での”評価は低く、AC/DCやZZ Topと同じく「また同じ音楽」とコケにされました。それがどうでしょうか?グラミー賞を受賞し、1stシングル “With Or Without You”がビルボードのHot100で1位になると、手のひらを返したかのように評判が鰻上りになったのです。「ホントにオマエらわかってんのか?」というのが正直な気持ちで、少なくとも私の周囲や、同じように悪態をつく輩の多かったこと(笑)。

※2017年に30周年記念盤としてライヴ音源を加え、ジャケットも正反対の白にお色直ししてリリースされました(割愛します)。


01.Where The Streets Have No Name*
02.I Still Haven't Found What I'm Looking For
03.With Or Without You*
04.Bullet The Blue Sky*
05.Running To Stand Still
06.Red Hill Mining Town*
07.In God's Country
08.Trip Through Your Wires
09.One Tree Hill
10.Exit
11.Mothers Of The Disappeared

PRODUCED BY DANIEL LANOIS & BRIAN ENO.
Mixed* by Steve Lillywhite.
All songs written by U2.

Release Date ; Sep,20,1987
<Billboard Chart Date>
♪TOP 100 : NO.1
♪TOP ALBUMS : NO.6 at 1987
♪TOP 40 SINGLES : With Or Without You (No.1)
I Still Haven't Found What I'm Looking For (No.1)
Where The Streets Have No Name (No.11)
In God's Country
<The 30th Grammy Awards(1987)>
♪ ALBUM OF THE YEAR
♪ BEST ROCK VOCAL PERFORMANCE,BY A DUO OR GROUP WITH VOCAL
 当時はまだアナログ盤も健在で、私はまずアナログ盤を手にしました。見開きのジャケットのメンバー写真がイカシテます。フォトグラファーは、デビューからとり続けているアントン・コービン。やはり、これぐらいの大きさだと飾っておけるし、好きなアルバムがジャケットも良いと、部屋のインテリアにもなるという、いい時代でした。のちにこのアルバムのレコーディング秘話を伝えるビデオが発売され、サウンド・プロダクションを興味深く見ることができます。裏方が好きな人は過去の名盤もシリーズ化されているので必見です。




THE JOSHUA TREE

 ほぼ、同時期にCDもリリースされましたが、ジャケットはご覧の通り変倍が掛けられていて、トリミングも違います。よく見ればアナログと別角度から撮影したショットで、若干、メンバーの表情も緩んでいるようです。インナーの体裁はアナログと同じですが、迫力にかけます。

 ちなみに、当時は防犯目的に、縦長の箱に入れられて店頭に並んでいましたが、その箱に使われた写真も別のカットが使われています。アナログと同じレイアウトですが、メンバーの目線角度ではなく、若干上から撮られています。ラリーがちょっと目をつぶってしまった表情で写ってますが、NGにはしなかったようです。
THE JOSHUA TREE

 ジャケットの黒い部分の幅が異なり、アルバムタイトルの位置などの変更が掛けられました。また、メンバーが手前にトリミングされ、風景とほぼ半々状態。ジャケットが違うだけで内容は同じ。

THE JOSHUA TREE 20thAniversary Edition

Disk 1の曲目は上記を参照。

Disk 2
01. Luminous Times (Hold On To Love)
02. Walk To The Water
03. Spanish Eyes
04. Deep In The Heart
05. Silver And Gold
06. Sweetest Thing
07. Race Against Time
08. Where The Streets Have No Name (Single)
09. Silver And Gold
(Bono with Keith Richards & Ron Wood)
10. Beautiful Ghost/Introduction To Songs Of Experience
11. Wave Of Sorrow (Birdland)
12. Desert Of Our Love
13. Rise Up
14. Drunk Chicken/America


 アルバムリリース20周年を記念して、アルバムにリマスターが施され、シングルのみでしか聴くことができなかった音源や、未発表曲が収録されたデラックスエディションがリリースされました。特に『SUN CITY』でしか手に入らなかったローリングストーンズのキース・リチャーズ、ロン・ウッドを従えた“Silver And Gold”は圧巻で、Live Aidでボブ・ディランが2人を従え、アコギのみで演ったステージを思い出させてくれます。ボノのヴォーカルも鬼気迫り必聴の1曲です。(その『SUN CITY』も凄い政治色の強い内容で、錚々たる顔ぶれが揃っていました)
 個人的には、シングルヴァージョンや、B面のみの収録曲などは、リリースの度に輸入屋を駆けめぐっていたので、「くっ、苦労して手に入れたアイテムがこうも簡単に~」と苦虫を潰しております。とはいえ、それらにも収録されなかった未発表曲の収録は、やはり嬉しい。  

なお、2009年は、同じ体裁で『THE UNFORGETTABLE FIRE(焔)』のスペシャルエディションがリリースされました。

Album
Bonus Disk
DVD




U2といったらモノクロ、モノクロといったらU2と言えるほど、彼らはモノクロのポートレイトが代名詞となっていますが、デビュー以来アントン・コービンというカメラマンが彼らを追い続けています。『THE JOSHUA TREE』に始まったわけではなく、このアルバムで開花したと言えるかもしれません。それを裏付けるかのように、U2以外のアーティストのポートレイトが、このあと増えました。どれもこれも「カッコイイ」と思えるものばかりで、『』といったスターばかりを集めたアナログジャケットサイズの写真集も出版されています。ここではU2のみを集めた写真集を紹介します。じつは、この写真集に収められていないテイクが、シングル盤に使われていて、音源に、写真にと探し回りました。
U2 & I: The Photographs 1982-2004

 U2の『THE JOSHUA TREE』のアートに惹かれた方は、ぜひ、このアントン・コービンとU2のコラボレート写真集を手にとって下さい。彼らはデビュー当時からのつき合いで、ほぼ、U2の専属フォトグラファーと言うことになるのではないでしょうか。この写真集は、そんな彼を追い求めた集大成と言えるもので、デビューから2004年までの軌跡を辿ることができます。ともかく、カッコイイです。





THE JOSHUA TREE(1987)が気に入った人へのダニエル・ラノワ プロデュースのお勧めアルバム!
ROBBIE ROBERTSON

01. Fallen Angel(with Peter Gabriel)
02. Showdown at Big Sky
03. Broken Arrow
04. Sweet Fire of Love (with U2)
05. American Roulette
06. Somewhere Down the Crazy Rive
07. Hell's Half Acre
08. Sonny Got Caught in the Moonlight
09. Testimony(with U2)


PRODUCED BY DANIEL LANOIS & ROBBIE ROBERTSON.
Engineered by Jim Scott.
Mixed by Bob Clearmountain.


Release Date ; Jan,1,1987
♪Billboard TOP 100 peak posision : NO.38


発売当初(本人曰く)「彼らを利用した」と思われたくなかったからと発売を遅らせたという元ザ・バンドのロビー・ロバートソンの初ソロアルバム。プロデュースには同じインディアンの血を引くダニエル・ラノワ。MFSL化もされているぐらいの玄人ウケするサウンドにどれだけ陶酔できるでしょうか? 豪華なゲスト陣にも注目したいところ。(いわゆるラノワ・ファミリーが多く参加しています)

DANIEL LANOIS/Acadie

01. Still Water
02. The Maker
03. O Marie
04. Jolie Louise
05. Fisherman's Daughter
06. White Mustang II
07. Under A Stormy Sky
08. Where The Hawkwind Kills
09. Silium's Hill
10. Ice
11. St. Ann's Gold
12. Amazing Grace

PRODUCED BY DANIEL LANOIS.
Engineered by Jim Scott.
Mixed by Bob Clearmountain.

Release Date ; Sep,20,1989
♪Billboard TOP 100 peak posision : NO.166


 U2やピーター・ガブリエル(この頃は、ボブ・ディランの『Oh,Mercy』の制作も)のアルバムプロデューサーとして名が知られてきた男が、初めてミュージシャンとしてデビューした1989年リリースの名作。派手さは無く玄人好み。(あのピーター・バラカンが絶賛してましたっけ)「昔から」U2を聞いていたファンの耳には、すんなりと溶け込むサウンドです。デビューアルバムということもあって、脇を固めるミュージシャンも名うてのアーティストが揃っていて、出しゃばることなく、地味~に主役を盛り立てています。これだけのアーティストをなんと贅沢な起用の仕方か!

 U2のヒットを受けてファミリー・ツリーで聴くと、あまりにも地味なアルバムに聞こえるでしょうが、ラノワのアーティスティックな面が開花し、U2周辺の関連アルバムとして、あるいは、それ以上に聴かれるべき名作だと思います。

 ちなみに先に紹介したロビー・ロバートソンとは同じネイティブ・アメリカン(アケイディア・インディアン)の血を引くからなのか、両者のヴォーカルスタイルが似ているような気がします。




THE UNFORGETTABLE FIRE(焔)もどる

home(一番星のなる木)